ある日突然に0008
よろしい。
我が方の体制は整った。
整いましたよね?
目標は遥か彼方ではあるが、視認できる山脈である。
飛行訓練も習熟だ。
無論、此方は霊体。
衝突などのトラブルに見舞われる恐れも御座いませんな。
よろしい。
では、出発である。
そう思い、フワリと浮上。
体制を整えつつ後方を眺める。
辿って来た道。
その道程を思い、つい、感傷的に…
って…
んっ?
後方から発せられるビーコンの位置…
おかしくねっ?
真後ろだけじゃ無く、右斜め後ろ、左斜め後ろ…
いや、扇状に発信位置が広がって…い、たっ。
へっ?
何事ぉぉっ!?
富士の樹海の様に乱されているのかぁっ!
いや、落ち着けぇっ!
アレは磁場だっ!
方位磁石が磁場の乱れで使えなくなるが、ビーコンが発する信号が影響される事は無い筈だ。
では、何故にビーコンの信号が乱れて乱反射している?
いや…これ…乱反射なのか?
乱反射にしては、シッカリと信号が届いている。
……… ……… ………
イカンっ!
これは事案だっ!
確かめないとイケないでしょう。
直ちに確認すべきだっ!
何よりも優先させるべきでしょう。
俺は出発を見合わせて、先ずは発信がおかしくなったビーコンについての調査を行う事にする。
しかし…
誰だっ!
準備が整ったなどと曰っていたヤツはぁっ!!
はい、俺ですね。
すんまそぉ~ん。
んでな。
信号を辿って近場に設置したビーコンへ行ってみた訳よ。
したら、キチンと設置されてやした。
ふむふむ。
此処は正常な訳ね。
んでな。
近場の別のビーコンへな。
………
問題ないな。
次も、次も、その次も…
全て問題なしってな。
あんるぅえ~っ?
っかしいなぁ~
設置したビーコンを持った侭で上空へと。
いったい…
どゆ事?
ビーコン発生装置を手の平にて弄り倒しながら考える。
それが悪かったんだろうな。
ツルッと…
手が滑って…な。
ビーコン発生装置が手の平から逸れて地上へと落下…落下し…しなかった。
って、落下しないのかよっ!
宙にフワフワと…いや違う!
設置されたが如く、宙に固定されとる。
なんぞ、これ?
ハッ!
せやっ!!
コレって霊体やん!
霊体なら物理の法則の影響など受けんやんねっ!
せやせや。
ほやから宙に浮いちょんやなっ!
大発見です!
興奮して来ましたよ。
ヒャッハァーな事案です。
早速、設置してあるビーコン発生装置を空中設置に変えましょう。
そうしましょう。
無論、移動は飛行です。
ビーコンが発せられる位置へと直線的に飛行するから速いのです。
辿り着くと、直ぐにビーコン発生装置を持って上空へと。
霊体故に落下しないし風雨に曝されても劣化しない。
いや。
そもそも霊体だから風雨によるダメージ自体を受けないんだけどな。
故に永遠に劣化せずに宙に止まる訳で…
ビバ、霊体っ!
んな訳で、ビーコン発生装置を回収しては空中へと設置。
空間の亀裂へと至った訳だ。
最初に設置したビーコン発生装置を空中へと設置し終えた。
ふぅ。
遣り切ったぜぇっ。
なんとも言えない満足感っうヤツだな。
ウムウムと、思わず頷いてしまうではないか。
達成感っうヤツだよ、チミィ。
ワッハハァッっう満ち足りた気分にて、ふと、後ろを振り向いて見る。
宙に浮かぶビーコン発生装置群。
宙に…散在して…ねっ?
してるよね。
何事ぉぉっ!?
慌てて、更に上空へと。
上空から確認すると…
ウネウネと蛇行する線とも見える配置で配されたビーコン発生装置が。
いや…これって…
俺が移動した跡やんっ!
C字やS字などは生温い。
酷いのになるとだっ!
U字ですよ、U字っ!
戻っとるやん!
途中でL字にて、元々目指した方向へと方向転換している箇所があるが…
アレは何でだろう?
俺が遣ったんやんね。
自分でも理屈が分からんとは…どゆ事ぉっ?
ま、まぁ…良い。
良いのか?
良いのです。
終わった事なのです。
過去に捕らわれる必要は無いのです。
決して、決して誤魔化している訳では…無いのですよぉっ。
取り敢えず、最後に設置したビーコンと最初に設置したビーコンとの直線上に存在するビーコン以外を回収。
その後に等間隔になる様に設置し直した。
要らぬ手間を取ってしまった。
ふぃっ。
取り敢えずは休憩やね。
休息は必要なのです、何事にも。
故に宙に浮かびつつ、懐から携帯電話をば。
携帯を開きWebへと。
無論、携帯小説ですが…何か?
え~っとぉ~
接続できません。
何事ぉぉっ!?
コレは事案でふ。
大事案!
携帯小説が読めんなんて、有り得んやんねっ!
何時からだ?
……… ……… ………!?
コッチに来てから携帯小説を読んで無い!
って、バナナっ!
いや、バカなっ!
俺が携帯小説を読むのを忘れる…だっ…とぉっ!?
いや…確かに…この世界が珍しく興奮していた気が…
それで忘れるとは…
不覚だ…
しかし…
これは此方が霊界だから電波が届かないからだろう。
基地局などやアンテナなどは無い筈だし…
アンテナが有っても、世界を越えて霊界へ電波を届かせる事が…
んっ?
んんっ?
待てよ、待て。
空間の亀裂にて、俺は此方へと来た訳だ。
ならばだっ!
空間の亀裂を利用して電波を通せば…
アンテナはビーコン発生装置と同様に、空間へと設置すれば良い。
何せ霊体ですからね。
可能なのです。
ただ…
アンテナ自体がありません。
コレは一度、元の世界へと戻りましかね。
携帯電話の電波中継アンテナより大量の霊体を確保せねばなりません。
それを使用して、元の世界にて亀裂まで電波が届く用に携帯電話用電波中継アンテナ霊体を設置せねばならないでしょう。
そして、霊界へもだ。
これは行うべき事案でしょう。
早速、行いますよ。
良いですか?