ある日突然に0006
宙に浮かぶ亀裂。
いや、切り込み?
下から見ると点だな。
東西南北…いや、360度の周囲から確認しても同様の姿を見せる切り込み線。
向こうを伺う事は出来ないが…
この様な現象を見付けたのは初めて。
浮遊霊に地縛霊、怨霊に悪霊。
あらゆる霊と相対し、彼らが成仏して行った。
だから成仏できるのは間違い無い。
いやね。
感謝の言葉は良いんだよ。
だから、俺も成仏したいんですがねぇ。
でぇ。
この世と異なる世界へ至るルート…
そんな可能性がある存在は初めてだったりします。
そう。
それが正に目の前の亀裂やね。
霊界へ至るのか、それとも神と合間見える白い空間へと至るのか…
えっ?
まだ携帯小説定番の白い空間での神との邂逅を諦めて無いのかって?
アータ、何言っとんのっ?
死んで霊体になっとんのよ、俺。
有り得ない事があり得てんのっ!
ならばっ!
白い空間にて神様に出会い、神様よりチートを受け取りヒャッハァーが有っても良い筈ですよね?
いや、正しく有っても良い筈です。
そんなワクワクを秘めた視線を送りながら亀裂を観察。
まぁ…
幾ら眺めても変わりませんがね。
霊体手荷物を確認。
移動中に増えたあれこれを入れた鞄をポケットへと。
んっ?
一寸待てって?
何を?
ああ。
鞄をポケットへ突っ込んだ事ぉ?
細かい事は気にしなさんな。
禿げるよ。
いや。
そがぁに怒るなよ。
分かったって。
だからな。
霊体は物質じゃないの。
自由に形を変えられるのさ。
電子データみたいな物とでも言えば良いのかねぇ。
霊子で構成された霊体は幾らでも圧縮可能なのさ。
故に、俺の持つ霊体資産は北海道クラスの面積を軽く埋め尽くす程度と言えば良いのかな。
本などの霊体も抜いて来たからさぁ、正確な分量は知らんさ。
俺の感覚に過ぎませんが…何か?
この物質の霊体化なのだがな。
俺以外の霊には行えて無いらしい。
随分と羨ましがられたりしたものだ。
狡いって…
知らんがなぁ。
まぁ…
嵩張ら無い様にポケットへと突っ込んでんだが…
一度整理した方が良かんべか?
そんな事を夢想しながら亀裂へと。
自分の霊体を亀裂に合わす様に意識し、手を亀裂の先へ。
うむ。
向こうに空間は有るな。
亀裂から先に俺の手は見えない。
つまり、此方の空間には存在しないってこったな。
手を引き抜く。
良し、異常なし!
では…
デジカメ霊体を持って、手を向こう側へと。
パシャリとな。
何が写ってかなぁ~
んっ?
密林!!
なんじゃぁ、こりゃぁっ!?
明らかに別世界やね。
霊界って…
こんな世界訳?
白い空間で神様邂逅ヒャッハァーじゃ無いのね。
グスン。
でもな。
霊界?らしき場所へは行けそうだ。
これで漸く成仏できそうだな。
長かったぜっ!
亀裂の向こうに別世界が在る事は判明したんだ。
いざ、逝くべさ。
俺、今日、成仏します。
では…逝きまぁ~すぅ!
いざ、亀裂へとダイブっ!
!!
位置がズレました。
一寸したミスやんねっ!
恥ずぅ。
って!
誰も見ている筈も無いのに、何で俺は恥ずかしがって言い訳しとんのっ?
漸く成仏できるからテンション上がったんだべさ。
一寸したお茶目なミスだぁ~よぉっ。
何とか自分を誤魔化し取り繕い…
髪を撫で付け気合いを入れ…
今度こそ…
逝きまぁ~すぅ!
気合いを入れ亀裂へと…
キチンとダイブしやしたぜっ、旦那ぁっ!
俺、偉い!
エッヘン!
ってな。
アッと言う間に亀裂を潜り抜け、亀裂の向こう側の世界へと。
此処が霊界かぁ~
ジャングルですね。
分かります。
巨大な羊歯の様な植物、椰子の木?、バナナの木?、針葉樹らしき樹木に広葉樹らしき木も…
生える地域が違いませんか?
節操が無い生え方やね。
んっ?
全身が真っ赤な鳥に真っ青な鳥…
他にも原色の鳥達がな。
カラフルやねぇ。
ウッホなゴリさんも。
いやね。
黄色と黒の虎縞で、腕が甲殻に被われて無ければ…
黄色っうか…金色?
綺麗やねぇ。
パチパチと放電して無ければ…ねぇ。
ねぇ、ゴリさん。
あんた聖霊獣だっりすんのかねぇ。
こんな聖霊獣…ヤダ。
向こうには蜥蜴さんがね。
蜥蜴っうか…
二足歩行の恐竜さん?
何かを追い掛けてらっしゃる。
う~ん。
野生の王国やねぇ。
母さん。
霊界は意外と野性味溢れる世界でした。
そんな事を考えながら移動をな。
取り敢えずはだ。
此処にビーコンを設置。
太陽電池にて自動充電するタイプだな。
発信距離が限られる為、境界地へ新たなビーコンを設置して移動する事になるだろう。
霊体だから破損も劣化もしない優れ物。
俺しか使えないと言う欠点はあるが…
俺には関係ねぇ。
俺には関係ねぇ。
はい、ラッキーぃ。
ってか。
んで移動を開始したんだが…
何せジャングルな訳で…
視界が全く利きません。
こっちで合ってんのかねぇ~
神様、おせぇ~てぇ。
プリィ~ズゥ。