ある日突然に0005
それから数日…
ウザいマスコミに疲れた両親は会社からの示談に応じる事に。
まぁ、結構な額が提示された様だが…
それよりも、マスコミの対応に疲れ果てたと言うのが正解だろう。
行政指導も入り社会的な制裁も会社は受ける模様。
これ以上関わりたく無い様だな。
両親も年だ。
いや…
俺が死んで、更に老け込んだようだ。
気力が持たなかったとも言える。
俺の簡易葬が行われ荼毘される。
俺の肉体…
まさしく…
真っ白だ、真っ白に燃え尽きちまったぜ。
何とかのジョーじゃ無いが…
うん。
真っ白なお骨ですね。
自分のお骨を眺める羽目になるとは…
骨壷を持って俺の自宅へと。
荷物の梱包と発送が行われる。
会社持ちだとさ。
物件諸々の解約も済み、親も地元へと帰る様だ。
お袋が一気に老け込んだ感じで気になる。
何も出来ないんだがな。
見守るだけで声も掛けれない。
なんだ、このジレンマ。
親が俺の旧自宅より、俺のお骨を納めた骨壷を持って帰り始める。
俺?
後をついて行ってますが…
何か?
電車に乗り東京駅へ。
新幹線にて地元へと。
地元では、兄が葬儀の準備を行っていた様だ。
駅まで両親を迎えに来ていた。
俺も密かに同乗させて貰い移動だな。
家には帰らず、葬儀会館へと移動。
本来は棺桶が置かれ、葬儀後に荼毘されるのだが…
この度は荼毘された骨壷が設置されての葬儀となった。
俺の友人は数名。
後は全て親戚と親の友人だ。
縁が切れていた友人も現れているんだが…
テレビの力、恐るべし!
葬儀が終わり実家へと。
取り敢えずは自宅の仏間へ設置。
後に墓へと納骨となるのだとか。
う~む。
帰って来たのは良いのだが…
俺さぁ、何時成仏できるんだろね?
納骨されたら成仏できるのだろうか?
てっきり葬儀にて成仏できると思い込んでいたのだが…
納骨まで待ってみるか。
そんな事を思いながら納骨を待つ。
携帯小説を読みながら待った納骨の日。
あいにくの雨でした。
うん。
天も悲しんでくれているんだな。
変な所でポジティブ?
いや。
死んでんだから、ポジティブは無いでしょ。
さて…っと。
納骨は終わったと。
でぇっ。
俺は何時、成仏できるのでしょうか?
両親が引き上げて行く。
ついて行っても成仏は出来まいな。
生者に死者が付き纏うのはよろしくあるまい。
両親に悪影響が出ては拙いだろう。
そう考えるならば、此処で別れるべきだな。
だが…
墓所はダメだ。
居着いている霊の存在も見える。
ああは成りたく無い。
中には悪霊化しかけている霊もな。
やべーよ、やべーよぉ~
逃げるべ、行くべさ。
ふむ。
仏教の葬式が駄目ならば…
そう思い神社へと。
駄目ですか、さいですか。
では、教会。
キリストさん、宜しくぅ~
って…
ダメ?
成仏させて下さいよぉ~
頼んますわ。
駄目?
さいですか。
くそっ!
ならばだ!
日本各地を回って成仏行脚だっ!
四国お遍路88ヶ所巡りだ。
青森の恐山はどうだっ!
高野山はっ!
各霊山巡りだっ!
でやっ!!
日本各地を駆け巡る。
ってもな。
車や電車、新幹線に飛行機を只乗りしての移動。
海外にだって行っちゃいます。
ファーストクラスだぜっ!
むっふぅ。
なんせファーストクラスはリザーブの空きがな。
そこへと、ちゃっかり収まる訳よ。
霊体だから見えんしな。
そうやって、日本だけで無く、世界中の霊所巡りしたんだが…
成仏できんのよねぇ~
なじぇ~
どないせいっうのよ、これ。
しかもだ。
霊所巡りしているとな。
身体から澱みが剥げて清々しい気持ちにはなるんだよ。
したらな。
旅先で見掛けた霊に相談される事が増えてな。
相談に乗ってやるとだ、ソヤツは成仏しくさる訳よ。
いや、訳分からんしっ!
俺が成仏したいのっ!
人を成仏させたい訳じゃ無いのっ!
分かる?
ねぇっ!
何なの、この苛めっ!!
んでな。
久々に日本へと帰郷。
熊野古道へと行ってみた。
整備されていない旧道へと分け入る。
道と言うより獣道だな。
だがな、神聖な気に満ちた道は此方の方だ。
人が分け入るには厳しいだろう。
下手したら遭難だろう。
俺?
霊体だから遭難しませんが…
何か?
その道を進んでいるとだ。
途中の木陰に違和感がな。
道から逸れる事になるが…
気になり行ってみる。
どうせ成仏できない俺だ。
時間は腐るほどあるのでな。
そして移動した先には…
なんぞ、これ?
空間に亀裂がな。
ハガキを縦に半分切り、それを縦方向に差し込める程度の細く小さな亀裂が宙に浮く感じでな。
普通は気付かないだろう。
それに気付いても干渉は無理だろう。
普通ならな。
だが、俺は霊体だ。
つまりはだ。
俺なら、この亀裂を潜れる訳さ。
ふふふふふっ。
成仏できなかったが…
こんな成仏ルートを用意していたのですな。
では…
いざ、参りますかな。