ある日突然に0105
無造作にガラスのインク瓶より床へと流し落とされるインクを見て慌てるファラール。
メイド達は呆気に取られた様に俺を見ているな。
執事は冷静に俺を見守っているが…衛兵達は不思議そうに…いや、興味津々っと俺の行動に見入っている。
っかさぁ…アータラ本当に仕事せんと怒られっぞ。
そんな事を思いながら、流したインクへと注いだマナをコントロールしつつ転移陣を思い描いて行く。
俺の意志を汲んだ様に動きつつ床に落ちたインクが動く様に流れ始めている。
まるで…インクに意思が宿ったかの如き動きである。
その素早く流れて行く様は、ちと、気持ち悪い現象やもしれないな。
ウゾ、ゾゾッ、ウゾゾゾゾゾォッっう感じで波立ちながら地を這う如き動きにて流れるインク。
「ひっ!」っと思わずファラールが声を押し込める様な感じで声を上げる。
う~むぅ…流石にぃ、ちと、気持ち悪かったかなぁ…
まぁね、でもさぁ、人に見せる事なんて考慮して無かった訳で…仕方無いよね、よね?
そんな事を思っている間にもインクは素早く床を動き回り…そして魔方陣が描き出されて行く。
このインクは術者の意を汲み、自動で対象の魔方陣を描く様に動く性質を持たせた代物なのさ。
無論、一般的な代物ではありえないけどね。
このインクには色々な性質が付与されているんだけど…その性質の幾つかを上げるとしたらだ。
1.術者の意志に沿い陣を構築する。
2.術者が発するマナとキーワードにて認証し陣を定着する。
3.空間よりマナを得て術式を半永久的に維持する。
4.術者が発するマナとキーワードにて認証し陣を解除する。
5.術者の意志に従い、指定した容器へと自ら回収される。
ってな感じかねぇ。
本来は筆や刷毛などでインクを床へと手書きして行くのだけど…非常に手間で時間の掛かる作業なんだ。
勿論だけど、掻き間違えたら最初から遣り直しってシビアな作業なのさ。
けどね、このインクを使ったら、そんな手間や苦労からオサラバってね。
魔術に関わる者にとっては垂涎とも言える代物なんだろーけど…現界では俺しか知らない代物なんだよねぇ。
いや、現界でコレを作り出せるのは俺だけなんだから、致し方無い事なんだけどさぁ。
大体、このインクの原料は現界だけで仕入れる事は出来ないんだよ。
神魔仙幻の各界と現界の素材を様々な術にて処置して調薬調合を施しつつ精製した後で術式にて形成した代物を錬金の御技にてインクと化した代物と言えば良いかな。
その詳しい工程は複雑奇怪だから説明するのは困難なので割愛だよ。
とてもでは無いけど…書いた書物は半年掛かっても見終わる内容とはならないだろうしねぇ。
況してや内容を読み解き理解して探求しつつってなったら…何時読み終わる事になるのか…ねぇ。
だから、簡易な説明で堪忍な。
さて、持って来たインクを全て使用する事も無く転移陣が構築されたみたいだね。
俺はキーワードを告げて陣を定着させる。
これで、この転移陣は俺にしか解除できない代物となった訳だ。
俺のマナと指定されたキーワードが与えられない限り此処へと定着する。
例え城が朽ち果てて崩れ去っても宙に転移陣が浮いた形で定着して存在し続ける事になるんだけどね。
さてっと…転移陣に誤りが無いかを確認して…うん、問題は無いみたいだね。
では、試運転かな。
そう思って転移陣へと乗る、俺。
一瞬で降臨界へとね。
うん、転移成功、って訳で城へと一旦戻る事にね。
下手に留まって皆様方々に捕まると長くなるからさぁ。
いやね、確かに現界と降臨界とは時間の流れが違うさ。
けれども…捕まったら、捕まった俺が疲れるから…やだ。
城では、まだ遣ることがあるんだから、下手に疲れるのは御免ってな。
なので、素早く転移陣へと乗り城へと転移。
って…ああ、そうそう、転移した場合は転移陣から少し離れた場所に現れるからね。
無論、現れるのに干渉する代物が存在しない場所へ自動的に出現する様になっているんだ。
「石の中に居る」なんて事になったら拙いでしょ、それに生き物同士の合成生物なんてぇのには成りたくないしねぇ。
虫などの生物が無数に存在した場合は転移陣にて排除されてから転移対象が現れるんだ。
だから蠅男の様な現象は発生しないんだよ。
いや…蠅男みたいな事になるのは…流石に御免です、はい。
城へと戻ると…行き成りファラール姫が俺へと抱き付いて来た。
っとぉ、何事ぉっ!
驚いて辺りを見回すと、ホッとした様な皆様がね。
い、いや…どったの?
そしたら抱き付いていたファラールが半泣きで告げて来る。
「グス、ガリル様ぁ~良かったですぅ~
行き成り姿がお消えになったから、ファラールはぁ、ファラールはぁ~」ってヒシってね。
ああ、行き成り姿が消えたから心配したのか…
そう言えば、転移試験するって告げずに転移しちゃってたな。
こりゃ、まいったね。
俺に抱き付いてグズっているファラールの頭を優しく撫でながら俺は告げる事に。
「姫…心配して下さったのですね。
大丈夫ですよ、転移陣を設置したので正しく転移できるか試験しただけですので」
そう告げたんだが…
「いや」って…えっ?
「姫なんて…嫌です、ファラールって呼んで下さらないと…ファラール、嫌です」
少しオコにて告げるファラール…メサ可愛いんですが…どないしょ~




