2/3
断る
私は依頼を断ることにした。再び彼女の顔を見るのが辛かったからである。男にはどう足掻いても、拭いきれない過去がある。
私は大きな溜め息をつくと、ブルーマウンテンを喉に流し込んだ。喉の奥に熱いものを感じる。コーヒーの熱さではない。込み上げるあの日のロマンス。
それから数日後、彼女の死を知った。
浮気に逆上した旦那と揉め、口論の末の惨劇だった。
私は何故依頼を受け、助けてあげなかったのだろうと、嘆いた。
依頼人に特別な感情を抱いてはいけない。この世界の鉄則だ。しかし、私は自分の感情に負けたのだ。
救える命があれば救う。ごく当たり前のことだが、それが私は出来なかった。
私は涙を拭うと、いつもよりほろ苦いブルーマウンテンを飲み干した。
BAD END