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拭いきれない過去

前作、『私立探偵 長井 康介の場合』の続編です。

 私の名前は長井(ながい) 康介(こうすけ)探偵だ。

 数々の難事件を解決してきた私にも悩みがある。今回はそのエピソードについて、話しておこう。

 と、その前にブルーマウンテンを飲ませてくれ。私はこれがないと始まらないのだ。

 さて、何処から話そうか……。




◇◇◇◇◇◇




 あれは確か五年前、事務所を今の場所に移転し、初めて助手を雇った時のことだ。


 彼女の名前は"杉原 かなえ"。


 人当たりも良く、与えられた任務を卒なくこなす有能な助手だった。

 いつしか私は仕事の境界線を越え、彼女に好意を抱いてしまったのだ。


 それがいけなかったのだろう。


 奥手の私は彼女の優しさに翻弄され、仕事に支障をきたすまでに陥っていた。愛を口にすれば、その関係に終わりがくるのはわかっていた。何故なら彼女には、フィアンセが居たのだ。

 私は自分の気持ちをおし殺し、仕事に専念しようと努力した。しかし、彼女の横顔を見るたび、挫けそうになる自分に、心が疲労していったのだ。

 その気持ちを察知してか、彼女は私と距離を置くようになった。

 仕事上はパートナーだが、上手く機能することが困難になっていったのは言うまでもない。

 彼女が入籍する直前、私は遂に胸の内を明かした。当然、返事はNoだ。そしてそれは、彼女との別れを意味していた。

 別れの日、彼女はいつもと同じように仕事をこなし、小さな荷物を纏め事務所を後にした。私は自分の犯してしまった罪を後悔した。

 それ以来、私は助手を取ることをしなくなり、孤独を好むようになった。かつては平凡な家庭にも憧れたものだが、もう一人の私が守りに入ることを許さなかった。

 そして五年が経った今、かつてのパートナーだった彼女から依頼を受けたのだ。いや、正式には受けてる段階だ。

 依頼の内容はこうだ。


『旦那に浮気の疑いがあるので、調査して欲しい』と。


 過去の記憶をむし返すのが嫌で、私は躊躇した。しかし、そろそろ依頼を受けるか答えを出さなければならない。


 私の出した答えは……。



依頼を断るなら、断るへ。



依頼を受けるなら、受けるへ。

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