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ただの猫

作者: とくゆ

これは猫になった人間の話




「にゃー」

「あらあらおはようさん、なにか飲むかい?」

「にゃ」

「あらいらないんだね、珍しい」

「にゃにゃ」

「はいはい、またね」




言葉だけを聞けば猫の言葉を理解した普通の会話に聞こえる。しかし会話の主やここの住人は普通の人間なので別に言葉がわかる訳じゃあない。じゃあなんで話が通じているのかと言えば、猫が身振り手振りで言動を示すからだ。ただの四つ足の猫が身振り手振りで話すのも不思議な話だが、当の本人(本猫?)は苦ではないらしい。

この猫、名を源次郎といいこれでもれっきとした元人間なのだ。




なんのきまぐれか、はたまた神の興味なのか別世界の生まれな源次郎はトリップしたら猫になっていた。そう、なっていたのである。拒否権なんてものはなく、既に猫になってしまった彼に現状をどうこうするだけの力もなかったので彼は人間に戻ることもできずにいる。なんとも無意味なトリップである。

そんな彼の日常を少し見てみる。



彼は野良猫、元々人間なので飼われるのを嫌ったのもあるがこの世界にペットは存在しない。奴隷はいてもただの猫を飼っても誰も得なんてしない。だからペットはいない。

彼は起きると身なりを整えてからこの大通りを挨拶しながら歩く。にゃあにゃあ言っているだけだが、挨拶や返事以外に鳴いたりしないので彼らも挨拶だとわかるのだ。朝の散歩なのだろう


道中お腹が空けば何かをもらい、勿論源次郎も何かを返す。返すと言っても源次郎は何も持っていないので店先で招き猫状態を自らやる。

普段は人に愛想を振り撒いたりしないが、店先で賞品を見定める客の近くでじっと見上げるのだ。嫌な客はそれを見返したりしないので、そういう場合は大人しく外へ出で客引き。興味がある客は見てくるので本日のお勧めを紹介するのだ。




「にゃー」

「おやまぁ、今日はここでお仕事かい?」

「にゃ」

「そうかそうか」

「にゃーにゃ」

「これがオススメ?」

「にゃっ!

「じゃあこれをもらおうかな」

「にゃあ♪」




大体の人は買ってくれるので客引きも中々様になっているようだ。

客引きも大抵三時間ほどで終了してしまうと、源次郎も店主に挨拶をして来た道を戻る。

週の半分はこんな日常を過ごしている猫である

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