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未知との遭遇

いきなり戦闘が始まりました。

傭兵と軍人たちは”それの”正体に度肝を抜かれながらも、立ち止まらずに遮蔽物に身を隠す。

「リーダー、敵襲だ! よくわからんが、木の化け物が向かってきている!」

傭兵の一人が無線機に向かって怒鳴る。

「木の化け物とはどういうことだ? 詳しく情報を送れ」

「化け物としか言えねぇよ! 詳しく知りたかったらこっちに来てくれ!」

相手が理解してくれるなんて期待していなかった傭兵は通信機を乱暴に切って銃を構える。

「おい、どうしたらいいんだ!?」

「撃つしかねぇだろ! 向こうは殺る気満々だぞ!」

傭兵は自分の言葉を信じて、銃口の引き金を躊躇なく引いた。


森から飛び出してきたのはな5の異形。1匹1匹が5,6メートルは超える巨体で、手足が細長いのに対して手足は大きい。

それらは人の形をしているけれど皮膚は植物で体から枝が伸びている。

そして血管のように青く光る線が走り、人間の目がある場所に空いた穴からも青い光が毀れている。

1匹が耳まで――耳はないけど――避けた口を開けて咆哮を上げた。

鼓膜が壊れるんじゃないかと思えるほどの大音量。

肌がびりびりと震えるほどの威圧感。

1匹に釣られるように他の4匹も咆哮を上げる。

「撃て! 撃つんだ!」

全員が一斉に銃を撃つ。

大口径のアサルトライフルから対獣用に貫通力を高めた銃弾が獲物を破壊せんと撃ちだされていく。

銃弾は化け物にまっすぐ飛んでいき、その皮膚に食い込んでいく。

が、そのほとんどが表面を削っただけで弾かれていく。


銃弾の嵐を平然と受けながら化け物たちは大股で走り続ける。

ヨルもバトルライフルで射撃を続けるが、聞いている様子はまるでないことに頬が引き攣る。

「もう、やだ。帰りたい……」

弱気に呟きながらも、マスクを降ろして突撃を敢行する。

オレンジと黒で虎模様にペイントしたバトルアーマーが傭兵たちの間を走りすぎていく。

彼のバトルアーマーは一般的なものより装甲が薄く、丸みを帯びた形をしている。


化け物とどんどん距離が縮まっていく。

1匹がヨルを獲物と定めて、彼に向かって駆け出す。

その姿が近付いていく内に、回れ右して逃げたくなるが、いま逃げたら殺される。

ヨルは銃を撃ちながら前に踏み出し続ける。


バトルライフルはアサルトライフルより口径が大きく、装填数も200発以上。

跳ね上がる銃口をコントロールしながら、大型の獣すら蜂の巣に出来る銃弾を化け物に浴びせ続ける。

さすがに至近距離で射撃を受けては化け物も仰け反る。


が、それでもヨルに接近し、その長い腕を振り下ろす。

「あっぶない!」

ヨルは前にスライディング。

長い爪が地面を削り取る。

化け物の股下を滑りながら、バトルライフルの引き金を引き続ける。

銃弾が木の皮膚を破壊し、青い液体が飛び散る。

化け物は痛みに甲高い悲鳴を上げて身をよじる。

「攻撃は利いてる! 撃ち続けろ!」

転がるように立ち上がりながら、無線に向かって叫ぶ。


基地のシャッターが上がり、装甲車が姿を現す。

「待たせたな! 化け物の相手は任せろ!」

装甲車の銃座についた射手が腕を振り回して叫ぶ。

「見てろよ、葉っぱ野郎! ばらしてキャンプファイヤーにしてやるぜ!」

重機関銃から圧倒的な破壊力の銃弾が射出されていく。


さすがに化け物たちも重機関銃の銃弾には耐えられないようだ。

痛みに甲高い悲鳴を上げて、青い液体が噴き出す傷口を押さえて喚く。

1匹が足を崩して倒れた。

すぐに立ち上がろうと地面に手を当てたが、腕に力を入れる前に胸から頭にかけて撃ち抜かれて倒れた。

「よし、化け物どもを一掃するんだ!」

装甲車の登場に元気づけられた傭兵たちにも勢いがつき、驚かされた仕返しをしてやろうと前に出る。

何十という銃火に押されて、化け物たちの動きが鈍くなっていく。


が、死にかけているわけではなかった。

体を震わせると、肩や腕から歪な杭が伸び始める。

最初は見えるか見えないか程の小さなものだったのに、すぐに大人の腕ほども成長した。

その大きさと形を見たヨルは、車両に刺さった枝を思い出した。

「逃げろ!」

咄嗟に警告したけれど、畳み掛けようと前に出ていた傭兵たちは間に合わなかった。

空気が一気に噴き出すボシュッという鈍い音を立てて枝が発射される。


その時、奇跡にも枝が1発も当たらなかった兵士は全てが信じられなかった。

湿った音が弾ける音がしたかと思うと、周りの仲間たちが血肉を撒き散らしながら弾けていた。

何が起きたのか理解できないまま、後ろから重たい音がしたから振り返ってみると、壁や地面に木の枝が深々と刺さっている。

兵士は言葉を失ったまま、地面に座り込んだ。


砲弾並の破壊力を誇る枝はヨルにも飛んできた。

彼は2本を身体を捻ることで避け、すぐに横へ飛んで続く3本目も避ける。

化け物は全弾を撃ち終えたが、すぐに身体の至る所から枝を生やす。

「撃たせない!」

ヨルはバトルライフルを背中に戻し、次の武器を取り出す。

折りたたみ式の銃床を伸ばし、リボルバ―式のグレネード・ランチャーを取り出す。

両足をしっかり開き、銃口をやや上に向けて引き金を引いた。

ワインの栓を抜くような軽い音と共にグレネードが飛び出す。

グレネードは弧を描いて飛んでいき、枝を撃とうとした化け物の背中に着弾、爆発した。

化け物は悲鳴を上げて倒れ込む。

背中の殆どが弾け飛び、焼け焦げた場所から音をたててへし折れた。

「1匹!」

ヨルは誰も見てないのにガッツポーズを取る。


が、死角から飛来した枝が頭を掠めた。

ヘルメットのフェイス部分が壊れ、ヘルムの半分が吹き飛ぶ。

「あっぶない! マジで危ない!」

自分の幸運に目を開きながら、飛んできた方を見れば、森から新手の化け物がいた。

他の奴と違って指先が地面に届くほど腕が長く、背中から長い枝が生えている。


夜を狙ったのはその隣にいるもう1匹だ。

両手に大量の棘をびっしりと生やしている。

「装甲車、森の近くにいる奴を狙ってくれ」

「オーケー、あの木偶の坊だな。任せてくれ!」装甲車の1つが2匹の化け獣を射程内に納めるために移動する。

が、両手に棘を生やしたほうが牽制を込めて棘を乱射する。

1つ1つが小さいけれどその破壊力は兵士の持つ小銃以上で、装甲車の表面に凹みが出来ていく。

「この野郎、俺の愛車に傷を作りやがった! おい撃ち殺せ。あいつらに自分が何をやったのか思い知らせ――!?」

化け物の背中から発射された装長い枝が甲車の車輪を貫く。

さらにもう1本が装甲車に突き刺さる。

分厚い装甲を破り、操縦士の腹を貫いた。

刺さった枝が走行の邪魔をし、操縦士を失った装甲車が動きを止める。

「くそ、やばいぞ。急いで逃げろ!」

枝の破壊力に度肝を抜かれながら、指揮者は急いで装甲車から脱出した。


「いったい、あれはなんだ?」

建物から様子を見に外へ出てきたイグニスは遠くで暴れる化け物の姿に息を飲む。

何回か異星人と接触したことはあるが、あんなタイプは見たことがない。

だが、自分たちに攻撃をしている。

すぐに通信機を掴んでガンシップを呼び出す。

「こちら先遣部隊のイグニスだ」

「こちらバローザ、どうした?」

いま、正体不明の生き物に襲われている。

状況は……まずいな。

死者がでているし、装甲車もやられてる」

「わかった、到着には30分はかかる。

それまでもってくれ」

「30分か、10分で来い!」

通信を終えたイグニスはマスクを下ろして銃を構える。

「歩兵は装甲車や遮蔽物を盾に援護しろ。重装甲歩兵は前に出て化け物の攪乱をするんだ!」

そう言いながら、自身も銃を手に前へ飛び出して行った。


重装甲歩兵は短距離なら車と競争ができる速度が出せる。

化け物たちの制圧射撃を避けながら、猟犬が獲物を狩るように回りながら攻撃していく。

化け物が近づけば距離を取り、枝を撃とうとすれば射線上から逃げる。

化け物たちは何を狙えばいいのかわからず、闇雲に腕を振り回し、枝を乱射する。


が、一見うまくいってるように見えるが、気を抜けばやられるのはこちらである。

身体能力を何倍にもあげているはずなのに化け物たちは重装甲歩兵と同じ速さで動き、彼らの1歩先枝を撃つ。

1匹の撃った枝が傭兵の腕を千切り、うしろで援護しようとしていた兵士の胴体を真っ二つにした。


イグニスは化け物が振り回す腕を掻い潜り、がら空きになった胴体に至近距離で銃弾を叩き込む。

化け物は破片が飛び散り、痛みの方向を上げるが倒れず、踏み潰そうと足を上げる。

そこへグレネードが足元で爆発。

巨体を支えていた足が裂けて化け物は悲痛な悲鳴を上げて倒れた。

「リーダー!」

グレネードランチャーを持ったヨルがイグニスのそばに駆け寄る。

化け物は吹き飛ばされた足で立ち上がり、近づこうとした重装甲歩兵を殴り飛ばした。


ヨルとイグニスは化け物がこちらを狙う前に安全な距離まで下がった。

「おい、こいつらはなんなんだ?」

「知らないよ、いきなり襲ってきたんだ」

ヨルはグレネードの残りを確かめ、残りが少ないことに顔をしかめる。

「ねぇ、手榴弾とかない?」

「持ってるが、破片手榴弾が効果あるとは思わねぇなっと!」

化け物が腕を鞭のようにしならせながら振り回す。

2人は左右に分かれて避けるが、地面を打った腕はヨルを追いかける。

「この……!?」

体制を崩した姿勢から避けきれず、グレネードランチャーが弾かれる。

ヨルは地面を転がりながらグレネードランチャーを拾うが、グレネードランチャーの銃身がぐにゃりと曲がってしまっている。

「ああ、もう!」

使い物にならなくなったグレネードランチャーを投げ捨てる。


そして背負ったバトルライフルも投げ捨てる。

他にも重装甲歩兵がいる中でヨルを執拗に狙う化け物は首をかしげる。

まるでバトルライフルが夜の唯一の武器で、自分を傷つけることができる武器と理解しているみたいだ。だが、もしそうならそれは間違いだ。

ヨルはこれからする自分の無謀な行動を勇気づけるために長く息を吸って、それからゆっくり吐いていく。


ホルスターからヒート・ナイフを取る。

柄についたスイッチを押すことで刀身に熱が通るこのナイフは対獣用として最終武器である。


ヨルがナイフに持ち替えたのを見た傭兵たちが叫ぶ。

「おい、自棄になるな!」

「下がれ! あとはあたしたちがなんとかするから!」

ヨルは周りの声を無視して、乾いた唇を舐める。

「それじゃ、行きまぁっす!」

打ち下ろされる腕をわずかに横にずれただけで避ける。

腕が地面を打ち据えて、弾かれた石と土がボディに当たるが、ヨルは気にせずに化け物の懐に飛び込む。


化け物は小さな体を掴もうとしたが、ヨルのヒート・ナイフが突き刺さるほうが早かった。

刺さった箇所から化け物の肉体を焼き、煙が上る。

化け物は悲鳴を上げながら、ヨルの体を掴んで地面に叩きつける。

「ッ!?」

バトル・アーマーがダメージを吸収してくれたが、それでも衝撃に息が詰まる。


傭兵たちがヨルから注意を逸らそうと撃ちながら接近する。

けれど、化け物は傷つけられたことに怒り、傭兵たちに目をくれずヨルを踏みつぶそうと足を上げる。

ヨルは背中の痛みを無視して転がって逃げる。


「早く立て、馬鹿やろう!」

傭兵の1人が至近距離からバトルライフルを撃ち込む。

今までは傭兵の存在を無視していたが、さすがに痛みに身体をよじる。

「この馬鹿やろうが、無茶してんじゃねーよ!」

その間にイグニスがヨルを助け起こす。

「でも、ダメージは与えられたよ」

ヨルは痛みに顔をしかめながら、親指を立てて笑ってみせた。


その時、空からプロペラの心強い音が響く。

「こちらバローザ。ずいぶん変わった植物を相手にしてるんだな」

「遅いぞ。さっさとやってくれ」

「了解、あんたらは離れていてくれよ。

俺も人間の引き金を作りたくない」

バトル・シップが高度を上げて化け物を射程に収める。

パイロットは射手に攻撃の合図を出す。

「くたばれ、化け物」

ガン・シップの胴体につけられた重機関銃が火を噴く。

銃弾は化け物の堅い皮膚を貫き、肉体を粉砕していく。

たちまち2匹が身体を真っ二つになって破壊された。


他の化け物も銃撃に耐えきれず、戦意を無くして森の中へ逃げていった。


ガン・シップは逃すまいと追撃しようとしたが、化け物たちが森に消えると反応がきえてしまった。

パイロットは熱源探知、生態反応などなど機能を切り替えて探したが、森に消えた化け物を見つけることが出来ない。

パイロットは化け物を探すことを諦め、植民地の上を飛んで周囲を警戒することにした。


ヨルは地面に座り込んで、化け物が消えた森を眺める。

「あれが、開拓部隊を潰したのかな?」


これが第二次開拓部隊と、¨彼ら¨との初めてのコンタクトだった。

次はもう殆ど会話だけになると思いますが、ご了承ください

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