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残酷な森の世界

新作始めました。

おれとしてはアバター+HALOを意識していますが、オリジナリティを出せるように努力します。

辺りを見渡せば、赤、青、緑と色とりどりな植物が目に映り、上を見上げれば、柔らかそうな白い雲が空を流れている。

じっとりとした熱帯地域特有の湿気が肌に粘り着く感覚が服の中にまで浸食し、汗が流れ続けていく。


それに臭い。

濃厚な植物の匂いに鼻が曲がりそうになる。

酸素マスクをつけなくていいのは嬉しかったが、今では蒸し暑さに耐えてマスクをつけるか、鼻が麻痺しそうな匂いを我慢するか、甲乙つけがたい。


ラルフは匂いを意識しないように口で呼吸しながら、前を歩く隊長に話しかける。

「隊長、植民地まであと20分ぐらいですか?」「いや、偵察隊が一通り様子を見てから戻るまで待たなきゃならんから、1時間はこの森にいなきゃならんな」

隊長のイグニスはラルフと同じように汗をかいているのに、清々しさを感じる笑みを浮かべて応えた。

ラルフはわざとらしく肩を落としてうなだれる。

「俺たちも行きましょうよ―。

あいつらの仕事なんて待ってたら、こっちは脱水症状で死んじまいますよ」

「そうは言っても、一応は安全を確かめなきゃいかんだろ。

街を護っていた軍隊がやられたんだ。

気を抜いていたら、俺たちも後を追いかけることになるぞ」

「そりゃ、そうだけど……」

隊長の正論にラルフは言葉を詰まらせる。

なんだかんだ言って、彼も戦闘のプロだ。

下手なミスをして死にたいわけではない。


隊長は自分の勝ちだとニヤリと笑って、ラルフの胸を小突いた。

「あーだこーだ言ってないで、おまえもヨルを見習えよ」

「いや、俺だって頑張ってるじゃん!

なんで俺があんな可愛げのない餓鬼を見習わなきゃいけないんすか!」

「でも、この間、盗賊に殺されそうになってた所助けられただろ?」

「う……」

ラルフはまたも言い返す言葉が見つからず、悔しげに自分の後ろを歩くヨルを見る。

「だ、だいたい、あいつは重装甲歩兵じゃないすか。

比べるのはずるいっての……」


そのヨルはどこか遠い目をしていて、大口径のバトルライフルを片手に歩いていた。先月17歳になったばかりなのだが、童顔でどこか眠たそうな目をしているせいで子供扱いされている。


彼もこの森の蒸し暑さに汗をかいているけれど、気にせず、呆然と遠くを眺めている。

「おい、しっかり目を開けておけよ! ぼーっとしてたら早死にするからな!」

ラルフが叱っても、小さく頷くだけである。

ラルフは不満げに鼻を鳴らし、隊長は苦笑する。

「ヨル、少し辺りを散策してこい。サーリ、ボウマン、一緒に行ってやれ。

他はここで待機、周囲を警戒しておけ」

命令を受けた傭兵たちはそれぞれ武器を降ろし、楽な姿勢で座り込んで携帯食糧を食べたりトランプを始める。

ヨルは命令通りに2人の傭兵を連れて周囲を散策しに行った。


ヨルは遠くで空を飛ぶ鳥を眺めながら、森の中を慎重に歩く。地球の熱帯地域に近いというが、その亜熱帯地域を経験したことがない彼からすれば、全てが珍しい世界だ。

生い茂る木々も、派手な姿をした動物も、全てが珍しい。

任務がなければ、ずっと観察していたい世界だ。

第一次惑星開拓部隊が全滅した事を忘れて、グリムはここが気に入り始めた。


グリーン・ランド。

星のほとんどを森に覆われた世界。

第一次惑星開拓部隊がこの星を植民地化したのは1年前。

酸素ボンベ無しに活動できこの星には独自の生態と資源に溢れ、人類が生きて行くには最適な星だと思った。

開拓部隊は拠点をつくり、少しでも早く人が住める場所にしようと、開拓と研究を進めようとした。


が、3ヵ月前、開拓部隊との連絡が途絶えた。

ノイズが酷くて詳しい状況はわからなかったが、電波越しでも通信者が怯え、動揺しているのがわかった。

その通信を最後に、第一次惑星開拓部隊から音信が途絶えた。

惑星開拓本部はすぐに第二次惑星開拓部隊を組織、生存者の救出となにが起きているのかを解明するために派遣する事にした。


その尖兵として、海兵隊と傭兵の混成部隊、千人以上が派遣された。


そして今、ヨルたちは第一陣惑星開拓部隊の植民地を目指して前進してるわけだが、今の所、驚異的な存在は見当たらない。

ヨルはそばの木に触れる。

樹齢何年になるのかわからないけれど、ヨルの何倍も背が高くて太い。

その生命の逞しさに、思わず溜め息が出る。


彼の様子を見ていたサーリとボウマンは顔を見合わす。

「なぁ、あいつ、ぼーっとしてて大丈夫か? 軍隊の奴らが全滅した星なんだぞ?」

「まぁ、なんとかなるだろ。あいつ、妙な所で鋭いからな」

不安げに尋ねるボウマンをサーリが宥める。

「なんというか、動物的な感が働くんだよ。って……ん?」

2人が話していると、ヨルが視線を忙しなく動かし始めた。

「おい、どうしたんだ?」

「なんか、見られてる……?」

「は?」ヨルの言葉に2人はキョトンとしていたが、すぐに銃を構えてヨル以上に視線を動かして辺りを見渡す。

が、葉が茂った木々の間から、自分たちを見ているような存在は見当たらない。

ボウマンはゴーグルの設定を4倍に変えてみたけれど、特に目を引くものはない。

サーリは辺りを警戒しながら、訝しげにヨルに尋ねる。

「おい、ヨル、見られてるって本当かよ……?」

「うん、なんか視線を感じる」

ヨルはキョロキョロ首を動かして、どこから視線を感じるのか探すけれど、見つからずに首を傾げる。


そのとき無線機から通信が入った。

「こちらワプス、全員、植民地に来てくれ。

思ったより、やばいことになってる」通信を受けたヨルは視線の正体を探すことを諦め、植民地のほうへ歩いていった。


ヨルたちが去った後、¨それ¨は動き出した。立ち上がって身体を震わし、土を払い落とすと、去っていった動物たちを見やる。

前にも、生命を感じない鳥に乗ってやってきた愚か者。

自然を壊して自分たちの縄張りを広げ、何の意味もなく、また自然を壊す。

いくら観察しても、あの生き物たちの修正は¨それ¨に理解できなかった。

そして我慢できなかった。

¨それ¨は歪な口を開けて吠えた。


植民地に到着したヨルは遠くで響いた咆哮に驚いて森を振り返った。

そばにいた傭兵が不安げに身を揺する。

獣が感情を表現するためのものじゃ無い。聞く者全てを不安にさせる、明確な敵意と殺意に満ちた叫び。

ヨルも背中に悪寒が走り、額に気持ち悪い汗が流れる。自然とバトルライフルを握る手に力が入り、何が起きても反応できるように全身に緊張が漲る。


イグニスは小さな声で森の中に残した傭兵に無線で呼びかける。

「オラン、なにか見えるか?」

「いえ、何も見えません。何もです。さっきまで騒いでいた動物の声すら聞こえません……」

「何も聞こえないのか?」

「はい、静かすぎて、明らかにおかしいですね」

傭兵からの応答にイグニスはしばらく考えていたが、やがて慎重に行動する事を命令した。

「身を隠せる観察ポイントを探せ。

少しでも異変を感じたら報告しろ」「了解」

通信を終えたイグニスは偵察のために先行していた開拓部隊の伍長、ワプスを振り返る。

「開拓部隊は危険動物についての情報は把握してるのか?」

「ああ、情報はある」

ワプスは部下が持っているパソコンを指差す。

「が、今みたいに吠える動物は、ないと思う……」

「なるほど、それは残念だな」

明確な答えを期待していなかったイグニスは肩をすくめた。

「じゃあ、彼らを襲った奴の正体もわからんだろうな」

「襲撃者を調べることも仕事だからな」

ワプスもしれっと悪びれずに腰に手を当てる。


植民地は周囲を電流が流れるフェンスで囲い、見張り塔とバリケートで守りを固めている。

その中で雇われた一般人が基地の整備をして、食料を作っていく。

そして研究者が軍人を同伴して森に入り、研究資源を持って帰る。

基地の守りを堅めながら、星を開拓していき、やがては第二、第三の地球にしていく。

……はずだった。

現実は第一の護りとなるフェンスは破られ、建物は倒壊して焼け焦げている。

バリケードも壊され、設置されたセントリーガン(自動攻撃兵器)も潰されている。

人の死体がないのは風化する前に動物に食い尽くされたからだろう。

ヨルはそばに落ちていた銃を拾う。

鋼で出来ているはずの銃がくの字に捻じ曲げられている。

「なにをどうしたら、こうなるんだろ?」ヨルは嫌そうに顔を顰めて銃を投げ捨てた。


それから、1台の戦闘車両に近づく。

辺りは破壊尽くされていたが、情報がないわけしゃない。

その破壊された車両は全体が丸みを帯びていて、ルーフ部分に機関銃がついている。

タイヤがないかわりに、6つの円盤がついていて、機関銃の弾倉は青い液体が入ったカプセルで、チューブが銃身に伸びている。

地球のものとは違う、スマートで未来的な車両は異星人の乗り物だ。

タイヤの代わりにつけられた円盤で車両を浮かし、銃弾の代わりにエネルギー弾が発射される。


エプリクス。

人類とは違う先進的技術を持つ異星人で、惑星を植民地化し異星人を奴隷化する過激派である。

ヨルは車両をぐるりと回って観察する。

傭兵の1人が嫌そうに顔をしかめて息を吐いた。

「エプリクス、か……。嫌な奴らがいたもんだ」「彼らの仕業だと思う?」

「わからん、建物の壊れ方ががおかしい」

「だろうね」

自分で聞いておきながら、ヨルは自分の予想した答えに納得する。


エプリクスはエネルギーガンを主力武器にしている。

建物にはエネルギー弾の着弾した焦げた跡があるけれど、ほとんどはなにか巨大な物で殴ったか、木の杭が刺さって壊されていた。

木の杭は大人の腕ほどもあって、木を折っただけの雑な作りだ。

襲撃者はなんであれ、発達した技術を持たず、原始的な力で部隊を全滅させたようだ。「なにに襲われたんだろうねー」

襲撃者の正体がわからないが、グリムは他人事のように車両に刺さった杭に触れる。


イグニスとワプスは部下を引き連れ、基地の中を探索していた。

重要な情報がある場所は軍の本体が到着するまで入ることが出来ないため、資材室や武器庫をチェックして使える物を探しておく。

「さて、使える物はなにがあるかね」

資材室の扉を開けて、武器を構えた傭兵が突入する。

銃口と視線を動かして攻撃対象を探すが、木材や資材が置いてあるだけだとわかると、警戒を解いた。

「使える奴は全部運び出せ。しばらくはここを活動拠点にするんだ。

守りを固めておけ」イグニスの指示に従って、防御補強のために資材を運んでいく。


ワプスは運んでいくの様を眺めながら、先ほど受けた無線の内容を教える。

「あと1時間ぐらいでバトルシップがやってくる。

それに1個小隊の重装甲歩兵がやってくる。

エプリクスにも充分対応取れるさ」

「まぁな、なんとかな、る……?」

話しながら資材を乗り越えたとき、奥の方に破壊された鉄の箱が目に入った。

ビニール袋のように無理矢理引きちぎられた箱からエメラルドに、仄かに光る石がこぼれている。

「伍長、これはなんだ?」

興味を惹かれたイグニスはワプスに尋ねながら、試しに1つを素手でとってみる。


ひんやりしていて硝子のような手触りだが、力を入れてみれば簡単に崩れた。

ワプスも初めて見るらしく、彼も珍しげに見る。

「私もわからないが、この箱に入れてあるってことは大事な物なんだろうな」

2人は興味深げに石を眺めていたが、外から銃声が聞こえるとすぐに立ち上がった。


基地は予備も含めて電源系統が破壊されているため、サイレンも放送もない。

「なにが起きた?」

状況を知るために外の傭兵と連絡を取れば、無線から動揺した声が返ってきた。

「て、敵襲です! 敵は、敵は……。

ああ、くそ、なんなんだよ、あれは!?

なんなんだ!?」

「セントリーガンを入り口のそばに設置しろ。

装甲車も急いで出すんだ」

ワプスが指示を出している間に、イグニスは武器を手に部屋を出ていった。


敵の姿を認めたグリムは口を開けて呆然としていた。

「なに、あれ……?」


¨それ¨は敵意と殺意を剥き出して、傭兵部隊に襲いかかった。

もう戦闘が始まります。

強設定にした主人公の活躍をお楽しみください。

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