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お貴族様の対話術

武器屋を出てからほんの少し歩き、ギルドへと到着する。

普段から力仕事を生業としている分、屈強な肉体を持っている人が多い。

魔法や弓専門の人もいるため、それ一色というわけでもないが。

肩や頭に棘を付けている人だっている。カリヤはきっとこういう人に憧れているのだろう。


「お!3兄弟!やっと来たのか!今日はやけに遅かったじゃねえか」


「まあま!ちょいと用事があったのよ!オッサンこそこの時間にいるの珍しいんじゃねえの?」


僕達に気付いた冒険者の男が話しかけて来ると、仲が良いカリヤがそちらへと向かっていく。

チョコもそれに付いていき、僕は挨拶をして受付へと向かう。


「ん?おい!坊、飯屋の嬢ちゃんが来るなんて初めてじゃねぇか?しかも俺達が知らねえ子も居るしよぉ!」


「説明する!説明するから肩掴まないでくれよ!あっ!ゆすらないで!」


冒険者の男の声に気がつき、他の冒険者もこちらへと視線を向け…

そのままカリヤに「早く言え」と催促しに集まっていく。

こちらに直接聞きに来ずとも、カリヤなら手っ取り早いと思われているのだろう。

ありがたいものだともみくちゃにされているカリヤに手を合わせながら、受付のお姉さんに手持ちの札を渡す。


「お疲れ様です。今日も外回りの依頼でよろしかったですか?」


「お願いします。今日はもう2人居るんですけど…」


「ああ、登録されていきますか?」


「いえ、今後どうなるか決まっていないので、今日は無しで」


お姉さんは「かしこまりました」と一礼すると、いくつか依頼を取りに行く。

慣れていない内は外に張り出されている掲示板から受ける事が多いが、慣れてくると受付に依頼内容を伝えて持ってきてもらうようになる。


「それで?今日は何をされるんですか?いつもは中型の魔物の討伐と聞いていますけど」


「そうだね…お姉さんが持ってきてくれたら、だけど、今日は大型でも良いんじゃないかって思ってるんだよね」


ドラセナは問題なさそうな顔をしているが、ドラセナもラヴィンも魔物の狩りなんてほぼほぼ初めてだろうし、僕達が危険かもしれない範囲の依頼は避けるべきだろう。

なんて考えていると、いつもより少し多めに依頼書を持った受付のお姉さんが戻ってきた。


「すみませ〜ん、お待たせして。今回2人多いとのことで、いつもの内容のものと、他にも色々ちょっと持ってきたんですけど…」


「助かります。…ちょうど良さそうな依頼がありますね。ありがとうございます」


「分かってるでしょ〜」と満足げなお姉さんに感謝しつつ、2人に振り返る。

内容を確認してもらったのだが、当然あまりピンと来ておらず、ドラセナが「その魔物なら大丈夫だと思いますが」と言ってくれたものの、信頼して良いものかどうか。

まあ僕達もここまでなら大事故の危険性も無いだろう、この依頼を受けるとしよう。


「じゃあ、これでお願いします。」


「はい〜、後で処理はこっちでやっておきますので、もう出発して頂いても構いませんよ〜」


依頼の受注が完了した僕達は、倉庫に向かう前にカリヤとチョコを回収しに行った。

カリヤは屈強な冒険者達に落ち着いて話せるようになったみたいだが、それとは対照的にチョコがお姉様方に包まれていて動けなくなっている。


「おーい依頼受けたよー、武器の用意しなー」


「分かった。その、いや、カリヤと先に行ってて。」


チョコはどうやら時間がかかりそうだ。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



装備を取って来る間、ドラセナとラヴィンはギルドで待ってもらっていたのだが、その間に何が起こったのか、勢力が綺麗に二分していた。


ドラセナサイドは屈強な男や女性、いわゆる近接職の人間が集まり、大声を上げている。

ラヴィンサイドは魔法色や弓色の女性…ほんの少し男性が混じっているが、何やら会議というか、談笑のような雰囲気を纏っている。


いち早くこちらに気付いたドラセナが手を振って出迎えてくれる。


「あら、戻って来てたんですか」


「丁度今ね。意外だな、彼らとは気が合わないと思ってたんだけど」


冒険者側だってそうだ。商人の人が少し綺麗な格好をして入って来るだけで、ちょっと反応が冷たくなるような人達だ。

所作や話し方から漏れ出る気品に反応して、話しかける人がほぼ居ないだろうから、少し急いで戻って来たというのに。


「ふふ、手紙で彼らの事はよく知っていましたから。それに、この雰囲気は嫌いじゃありませんし」


「嬢ちゃんから教えて貰った魔物飯、今度お前らにも食わせてやるよ!」


ガハハと笑いながら酒を飲んでいる奴がいるほどだ。

よほど話が盛り上がったのだろう。

肉を焼いて飲み込むしか脳にない奴らの飯は、忘れるまで遠慮したいが。


「よし、じゃあ行こうか。ラヴィン!待たせたね!」


「あっ!ごめん!今行くよ!」


ラヴィンに声をかけ、ドラセナと移動しようとすると、両者陣営から見送りの声援が上がる。


「ドラセナ嬢!今度は飲み物も頼む!」や「剣の扱いはもっと雑でも良いと思うぜー!」と勢いの良い近接職組。


「あなたなら大丈夫よ!負けないで!」や「男ってのはすぐよそ見するものよ!でもあなたなら釘付けにできるわ!」と一体どういう会話があったのか遠距離組。


詳細は分からないから何とも言えないが、本来は逆じゃないだろうか?

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