街の武器屋
唐突にラヴィンが同行する事になったが、それといって変わった事もなく、そのまま武器屋へとやってきた。
ドラセナとラヴィンは話が合うのか、よく話している。
僕の過去や買った服の話ばかりなのが、なんとも恥ずかしい気がするが…。
「お、いつものか。武器その辺に置いといてくれ〜」
ドアを開けたカリヤの姿を見て、武器屋の店員であるドワーフの少女はぶっきらぼうに話しかけてくる。
モグラのマスクをつけている店長も、店の備品らしきものを漁っていてこちらには気付いていない。
「…おん?見ねぇ顔が二人…しかも片方はウチの街のじゃ…おい!店長!お客様が入店されてんぞぉ!」
「…!?…!」
店長さんは無言でワタワタし始めるが、その場から動く気はなさそうだ。
ハァー!と力強くため息を吐くとドワーフの店員は立ち上がり、こちらへと向かってくる。
「すいあせんね、ウチはこういうもんで。本日のご用件は?」
「ああ、僕らは特に何もないんだけど」
「私、魔物を討伐するに当たって、剣を頂きたいのですけど、大丈夫かしら?」
少し困惑しているようだが、それも当然だろう。
狭い店内には剣は一本も無い。それどころか鎧の頭に大量の矢が刺さっている物もある。
僕達も最初に訪れた時は閉店したのかと疑ったものだ。
「剣、剣ですね。どんな仕上がりを求めてらっしゃるんで?」
「魔力が通りやすく、重めが好みですね。あまり無いタイプだとは思うんですけれど…」
ほんほんと店員は頷き、店内に汚く飾り付けられている武器や武具を見ながら思案する。
いつもそうやって考えているが、あんなガラクタを眺めてもそこには何も無いと思うけど、何か見えているんだろうか。
「ちょいとお待ち頂ければ出来上がりますが、お急ぎですかね?」
「急ぎじゃ無いので、ここで待ってます」
「お、そうかい。前みたく鎧壊さねえでくれよ」
カリヤのテンションが上がり過ぎなければ大丈夫だろう。
ドラセナには少し待てばオーダー通りのものは出てくると伝え、店の端に移動する。
少しするとハンマーを打ちつける音や、火が弾ける音が聞こえてくる。
店長はずっと備品を弄っている。
「なるほど。その場で対応する店なんですね。」
「そうそう。品質は保証するよ。不満に思ったことはない」
「それは楽しみですね」
『見て呉れは本当に何でもいい』と言っている客に奥から鉄の棒を持ってきて、『これで戦えるだろ』と言い放っているのを見た時は衝撃を受けたが。
それでも技量は確かで、この街に居る人達ぐらいなら十分対応できるほどに仕事が早い。
段々とハンマーで叩いているであろう音が激化し始め、ガァン!ガァン!と最早破壊音にしか聞こえない音が聞こえ始める。
「本当に大丈夫ですか?これ」
「いつも通りとはいえ、いつも不安になるよね、これ」
数度の破壊音が鳴り、店内が静まり返ると、ひょこっと店員が顔を出す。
「できたぞー」と巨大なハンマーで手を振っている。
僕は持つことすらできなかったハンマーを軽々と。
「ほお…確かに。素晴らしい技量ですね。重量も、構造も確りとしていますし、私好みです」
「そりゃあそうよ!任せときなって!はっはっは!」
すっかり店員は初対面の客という事を忘れて誇らしげにしている。
ドラセナはかなり念入りに剣を確認し、頻りに関心したような声を漏らす。
「ふふ、気に入りました。私は金銭を持ち合わせていないので、こちらで立て替えたいのですが、問題ありますか?」
「んお、別に構いやしねえが。結構高えぞ?ウチの商品はよ…」
すっかり自分が支払う気でいたが、どうやら元々身につけていた装飾類を渡すようだ。
こちらに来た時につけていた耳飾りを取り出し、店員に渡すと、彼女は目をカッ開き、動きを止めてしまった。
「…ま、待ってくださいよ。これで支払う気で?」
「あら、不足でしたか?」
「店ごと買えるようなもん渡されても、返せる釣りが…」
ドラセナは「不要ですわ」と返し、こちらへと歩いてくる。
自信に満ち溢れた表情を見るに、相当満足な出来栄えだったようだ。
あとは狩りに出るだけだと店を出ようとすると、店員から声をかけられる。
「おい!3兄弟!お前らその方を絶対守れよ!絶対やばいからな!素直に大人を頼ってもいいんだぞ!」
「分かってますし、そんな変な所行きませんから!」
失礼な。
どういう店なんだここは本当に。