二人との合流
感想文を奏上するのに時間がかかり、予定より遅れながらも家を出た。
「なんだか急いでませんか?ほとんど知らない街なので、はぐれたらもう会えないかもしれませんよ?」
「今日は普段一緒にいる人達と、予定があったんだ。一緒でも問題ないか?」
もう長い付き合いになっている男女の二人組と、週に何日かは稼ぎに出ているのだが、今日もその日だったのだ。
向こうは何も知らない状態だが…まあ受け入れてくれるだろう。
「そうだったんですか。私は問題ないですけど、良いんですか?」
「構わないよ。日課みたいなものだし」
そのまま少し急ぎながら、いつもの待ち合わせ場所へと向かう。
ドラセナは随分と周囲が気になるみたいで、しっかり付いてきながらもきょろきょろと街並みを観察している。
会話をしながら歩いていると、すぐ待ち合わせ場所が見えてきた。
いつもは遅れがちな二人は既に到着しており、こちらが歩いていきているのに気がついて手を振ってくる。
「ようやく来たか!中々来ねえから呼びに行こうかと思ったぜ〜」
「いつも少し早く着いて待ってるのに、珍しいね。」
「すまん!ちょっと色々あってさ」
合流したのは男のカリヤナと女のチョコスモ。
カリヤとチョコの通称で親しまれている、街では誰でも知っているカップルのようなものだ。
「色々、色々ねぇ…」と視線を巡らせるカリヤが、後ろのドラセナが動いていない事に気付く。
「ところでよ、そこの嬢ちゃんは何、知り合い?付いてきてるみたいだが」
「ああ、説明するよ。とはいっても、どこから話すかな…」
唐突に隣国から飛んで来た貴族様、なんて言えないしな。
二人とも長い付き合いだし、変に関係性を誤魔化しても隠せないよな…。
どこをどう説明するものかと悩んでいると、ドラセナが何やらお辞儀のような姿勢を取り始めた。
「ドラセナと申します。昔の知り合いで、今は家に住まわせて貰っています。本日は同行してもよろしいでしょうか?」
「お、おお。全然良いけどよ。チョコは?」
「カリヤが良いって言った。それだけ。」
「だってよ!俺がカリヤで、こっちはチョコって呼んでくれ!よろしくな!」
どうやら解決したみたいだ。
ただ、いつもの日課的に問題ないだろうか。
「でも、ドラセナも大丈夫か?魔物との戦闘があるけど、そういうのって…」
「心配は無用ですよ。そちらもしっかり修めてますから」
どうやら大丈夫みたいだ。
そうか、貴族は戦闘技術も学んでいるのか。大変だな…。
などと憂慮していると、チョコがドラセナに指を向ける。
「でも、その服は良くないと思う。」
「あら、意図は何でしょう?」
まずい。何とは言えないが、何かがまずいような気がする。
何か、何か言ったほうが良いだろうか。
「あのっ、あー」
「だってそれ、ヘルマが昔着てたやつ。ちょっと傷んでるところが一緒。」
「あら、そういうことでしたか。そうなんですよ。ちょっと借りていて」
良かった、何だか雰囲気が和んだみたいだ。
しかし、チョコはそんなところまで覚えてたのか。
「よっし、じゃあまずは服屋にでも行くか!」
カリヤが勢いよく声を上げると、そのまま歩き始める。
唐突な決定に他の3人は戸惑いながらも、反対もないので歩き始める。
「ちょっと気に入ってたんですけどね。まあ家で着れば良いでしょうか」
「いや、家で着る用の服も買って帰る。古着はいい機会だから捨てる」
「それは全力で阻止させていただきますが」
「残しといてやれよ〜、悪いもんじゃねえだろうに」
4人で雑談をしながら、この街の服屋へと向かっていった。