これからも一緒に。
四角い裂け目を潜り抜けて着いた所は、随分と不思議な場所だった。
「車」と呼ばれているものが走っていたり、建物が全て異様な高さを誇っている。
そして、人の多さが尋常ではなかった。
夜だと言うのにも関わらず明るく、昼ですら見たことのない数の人で溢れかえっていた。
どうやら、「日本」という場所らしいが、全く聞いたことのない国だった。
「お2人さんもコスプレかい?どこで撮影すんのか知らんが、よく撮れるといいねぇ!」
すれ違う人から時々「コスプレ」という単語が出て来るが、それに関しても中々どういった意味合いなのかが掴めずにいる。
とりあえず何も分からないままフラフラしていても、と想い、ドラセナと一緒に頼れそうな人を探す。
何人かに声をかけると、「オトナシ・ナオト」と名乗る男性が親切にも色々と教えてくれた。
どの施設はどう使うものなのか、これはどういうものなのか、など初歩的な部分を始め、ドラセナが持っている宝石類の売却も手伝ってもらった。
彼はシェアハウスをしているため、家に泊める事はできないが、それでもいつでも助けになる、と連絡手段の板を一緒に購入してもらい、そこで別れた。
「随分優しい人でしたね」
「ああ。金銭面としても2、3年は問題なく暮らせるだろうって言ってたし、とりあえずは今日寝る場所を探そうか」
「そうですね」
購入した板を見れば「寝れる場所、体を洗える場所リスト」と書かれた連絡が入っている。
親切な事だ。
とりあえず、次はどこへ行くかと歩き始めようとした所、ドオン!と何かが落ちてきた。
何かがこちらへ向かって来る。
僕達の前で立ち止まったそれは、
「どこへも、行かないでよ」
どうやってここへ来たのか。
泣きそうな顔をしたラヴィンが、そこにいた。
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「いや〜見つかって良かったぜ〜!」
ふいーっと合流して安心しているカリヤとチョコ、そして、先ほどよりは落ち着いたのか穏やかな顔をしているラヴィンと、人気のなさそうな場所で立ち止まる。
「なんでここに居るんだ?到底これる様な場所じゃないって…」
「そりゃもう!頑張ったんさ」
どう考えてもお前じゃないだろうと思うが。
カリヤは「まあそこは気にすんなよ」と話題を変える。
後でラヴィンから聞こう。
「それよりよお、ここはどこなのさ。どうすんだよこれ」
「どうするもこうするもないだろ。ここで生きていくんだよ僕達は」
「あ〜…まあやっぱそうなるよなあ…」
カリヤは微妙な顔をして頭を掻く。
「んでもさあ…俺たちを置いていくってのは無えんじゃねぇの?」
「…それに関しては、悪いと思ってるよ」
「ならいいさ。ほんで?行けそうなのかよ?生活できませんじゃ意味ねえだろ?」
全く、考えが甘いな。
自信満々に板の画面を見せつけると、何も分かっていない3人の頭に「?」が浮かんでいた。
「親切な人に出会ってね。生活に必要な知識や金銭などはすでに用意できているのさ!」
「マジかよ!すげえな!」
「…私たちも、一緒に暮らしちゃ、ダメ?」
チョコがおずおずと聞いて来る。
こちらに来てしまったのだ。ここで拒絶する理由もないだろう。
「勿論構わないさ。5人で生きていこう。この、日本って場所で」
「うん。良かった。」
チョコが安堵した表情を見せる。
そんなに不安になるような質問だっただろうか。僕達の間柄だというのに。
「来れちゃったんだよねぇ、ごめんね〜?」
「私は望む所ですよ。これでこそ意味があるというものですから」
「へぇ〜?強がっちゃって」
向こうでは何やら話し合っているが、まあ気にする内容でもなさそうだ。
酒場の続きといったところだろう。
「皆、今日からはここで暮らしていくんだ」
この未知と人に溢れた場所で。
「今日からまた、よろしく!」
この、日本で。