明日からは、お貴族様の脛が主食です
大型魔物と竜の討伐証明を剥ぎ取り、無事にギルドに帰還した。
竜の討伐証明の部位がどこなのかを把握していなかったが、ドラセナの「竜は大体角と心臓さえあれば十分です。それが竜の全てのようなものですから」との言を受け、ついでに尻尾を持って帰った。
「いーーーやぁ!しっかし凄かったな!あんなの俺、初めて見たぜ!」
「聞いた事もない。すっごく凄かった。」
カップル2人は街に付く前からずっとこの調子だ。
まあ気持ちはよく分かる。
何せ冒険者の自慢話ですらあそこまでの規模のものは出てこない。
子供の頃に伝承を読み聞かせられ、子供ながらに(嘘過ぎるだろ…)と引いていたような、そんな領域の技だった。
「…」
対して、ラヴィンは随分と静かだ。
この気持ちもよく分かる。
あまりにかけ離れた存在を目の前にすると、害どころか得になる存在であっても、どこか自分の人生を否定されたような気分になるというのは。
ギルドの扉を開け、僕達は受付へと歩いていく。
カップル組は早速冒険者達に英雄譚を広めにいくらしい。
「あら、お早いおかえりですね。5人だとかなり違うものなのですか?」
「そうとも言えるし、そうでないとも言えるかな…依頼外の魔物の討伐もあるから、こっちの処理もお願いするよ」
「かしこまりました〜」と素材を受け渡したり、解体する場所へと移動する受付のお姉さん。
大型魔物と竜の素材を台に乗せると、とても驚いた顔を見せる。
「え〜!竜じゃないですか〜!しかもちょっと強めの。えっ、凄いですね。3人の時だったら、安全を取って引いてたレベルじゃないですか?」
「やだ凄〜い」と言いながらも、サクサクと状態を確認していく。
竜の方は素材としての価値も高いからか、色々な部分をよく観察している。
「そうですね〜、すっごく状態が良いですし、金額割増で…このぐらいですかね!」
そう提示された見積もりの金額を見ると、かなりの金額になっていた。
5人まとめてしばらくは稼がなくとも良さそうな、それぐらいの金額だ。
「も、問題ないです。これでお願いします」
「かしこまり〜!現金で受け取ります?」
「それでお願いします」と金貨を数枚受け取る。
金貨なんて手に持つのは初めてかもしれない。
「それで、今日も酒場に行くの?」
倉庫へ装備を仕舞いに向かったカップル2人の方へと向かっていると、ラヴィンがこの後の予定を聞いて来る。
「その予定だったけど…ドラセナはそれでも良いかな?」
「喜んでご一緒いたしますよ」
金貨は僕達が使うといい、と言ってくれたので、今日は普段は行かない、高めの酒場に向かおうと思っていたのだ。
倉庫に付いてカリヤとチョコに先ほどまでの流れを伝えると、大層喜んで「行こう!」と賛同してくれた。
日が沈みかけ、赤紫に照らされた街へと出る。
ギルドから出る時には、冒険者の皆が、どこから持って来たのかわからないクラッカーだったりを用いて祝ってくれた。
まるでこの街を出るかのような、そんなことを思わせるような送り出しで、少し恥ずかしかった。