天を断つ
「どらあ!」
カリヤが槍を振り下ろし、大型の魔物が倒れ伏す。
いつもより少し苦戦はしたものの、問題なく依頼は達成できたようだ。
元々弱っていたのは運が良かっただろう。
「下がっていて良いとは言われましたが、何だか申し訳ないですね」
「変に怪我をするとよくないからね。僕らで処理できる範囲で受けてるし、良いんだよ」
「そうだろうけど、ムズムズするよな」
ドラセナとラヴィンは魔物が弱っていると分かったタイミングで、後ろで見ていてくれと伝えてある。
何かがあったら大問題になるかもしれない2人だ。
慣れている僕達だけでもそこまで変わらないだろうし。
「でも、弱っていたのは多分、この背中の傷。」
「そうだよなぁ。これ、一回りか二回りはでかい魔物じゃねえか?」
魔物の背中には、大きく抉れたような傷が付いていた。
冒険者の魔法とも考えられるが、この魔物は逃げ足が早い訳では無い。ここまでの傷をつけたのなら、そのまま狩って持ち帰るだろう。
早めに証明の部位と、換金できそうな所を剥ぎ取って帰るとしよう。
剥ぎ取りをしようと準備し始めた時、遠方でズウン、と地響きがした。
そこから何度かズウン、ズウンと地面が揺れ、それは次第に近づいて来ているよう。
「うお!なんか飛んでくるぞ!」
即座に臨戦体制を取り、2人を守れる配置に付く。
大型の魔物より巨大なそれは、竜型の魔物。
巨大でありながらも機動力があり、退化した羽根で飛ぶのではなく、脚力で大きく飛び跳ねて移動する、手強い魔物だ。
「面倒な奴が来たな…!」
カリヤが思わず溢す程度には厄介な魔物で、飛び跳ねている間は近接職は手が出せず、遠距離職も潰されないよう集中する必要がある。
勝てないほどではないが、油断しておらずとも何かが起こる可能性がある。
「私たちも加勢するよ!危ない事はしないさ!」
ラヴィンが前に出て来る。
先ほどの僕達の戦闘を見て問題ないと判断したのなら、きっと大丈夫だろう。
ゆるりとした足取りでドラセナも僕の隣にやって来る。
「私も出ます。竜狩りは昔成した事がありますので」
えっ、それは聞いていない。
竜狩りなんて、僕達ですらもう少し後だろうとか思っていたのに。
ゴアァ!と竜が咆哮を上げると、ダアン!と遥か上空へと飛び上がる。
こうなると降りて来るまで僕達に手を出す手段は無い。
はず、なのだが…
「天砕____」
ドラセナが剣を構える。
瞬間、空気中に歪みが発生したような、力が満ち溢れるような。
「____落下星!」
剣が抜き放たれる。
空が、全てが切り裂かれた。
竜は完全に真っ二つになり、力無く落下する。
太陽すらも分かたれたような、そんな錯覚を見た。