ストーカーの女
中華風ファンタジーで読み辛い文字とかありますが
ルビ(フリガナ)をふってありますのでストレスなく読めると思います
「やっと会えたわね……龍剣さま。ずっと……ずっと待っていたのよ……」
龍梅は、俺を守るかのよう静かに前へ出た。
「龍剣は渡さない!」
郷長の娘の声は次第に荒々しく、歪んでいく。
「あなたにはわからないわ! 私がどれだけ彼を愛していたか!」
「愛? そんなものーー愛じゃない!」
「お前は……、俺と姉貴の命を奪っただろ!」
俺の言葉に女は、悲しそうな顔をした。
「あの女を助けようとして車道にでるなんて! あなたが死んでしまうなんて……もちろん、私も後を追ったわ!」
女は「生きている意味がないもの……」と呟いて、口角を歪ませ笑う。
「そうよ。あの女を押したのは私。あの女……が無理やりつき纏ったのでしょう? 私というものがいるのに! そんな女のために」
「リウにつき纏っていたのは……あなたでしょう?」
龍梅の声は静かだったが、その言葉には鋭さが滲んでいた。
「龍梅……?」
「あなたがつき纏っていたのは気づいていたわ。家の前でも 何度も、何度もすれ違うのだもの。あの私たちが死んだ日、デパートへ向かうとときも」
「龍梅!? 何を……?」
「今まで黙っててごめんなさい。リウ」
「リウーー、それは俺の前世の名前……。え!? どうして?」
デパート? 私たちが死んだ日? リウ!
龍梅が時々、言葉を濁したりするときに引っ掛かるのがあったが、前世の姉貴が龍梅だなんて、そんなことはないと思い込んでいた。
リウが俺であるように、姉貴も龍梅の可能性が合ったのに違うと思い込ましていた。
「あ、あ……姉貴? 姉貴なのか!?」
ええと龍梅は頷く。
「うるさいっ! うるさいっ! うるさいっ! うるさいっ! うるさいっ! うるさいっ! うるさいっ! うるさいっ! うるさいっ! うるさいっ! うるさいっ! うるさいっ! うるさいっ! うるさいっ! もうーー邪魔はさせないっ! 今度こそ、永遠に一緒になりましょう!」
彼女の言葉が終わるや否や、彼女の身体から赤黒い靄が一気に膨れ上がり、大広間を飲み込むように広がった。
俺は反射的に龍神閃を構え、腕に刻まれた稲妻の紋様が青く脈動するのを感じた。
隣に立つ龍梅もまた、自身の龍神閃を握りしめ、決意に満ちた瞳で覚悟を固めていた。
「龍梅、下がってろ! こいつは俺が――」
「あなたを一人で戦わせると思う?」
龍梅が鋭く言い返す。
龍梅の声には、揺るぎない強さが宿っていた。
その瞬間、郷長の娘が動いた。
女の体は不自然にねじれ、まるで糸に操られる人形のように高速で突進してきた。
手に握られた偽の龍神閃――郷長が握っていた模造品――が、赤黒い靄を纏いながら龍梅を狙って振り下ろされる。
キィン!
俺は間一髪、模造剣の刃を弾き返す。
金属音が大広間に響き、衝撃で床の土埃が舞い上がった。
俺はこの因縁を絶ち切るべく、剣舞にまるで風が流れるように優雅でありながら、鋭い殺意を秘めた。
だが、郷長の娘の動きは人間のそれを超えていた。
「少し痛いわよ。捕まえてあげるーー!」
彼女は宙を滑るように後退し、模造剣から赤黒い靄を鞭のように操って俺を捕捉しようとしてきた。
斬る!
斬る!
斬る!
振るうたびに消える靄の鞭は、まるで生き物のように襲いかかり、息をつく暇も与えてくれない。
「龍剣! 右!」
龍梅の声が響くと同時に、俺は反射的に体をひねり、迫りくる靄の鞭を剣で弾く。
しかし、郷長の娘は間髪を入れずに次の動きを仕掛けてきた。
女の体が奇妙にしなり、まるで骨のない獣のように床を這うような動きを見せる。
予測不能な角度から跳ね上がり、模造剣を振り下ろしてくる。
俺は即座に反応し、剣を横に払って軌道を狂わせた。
衝撃が腕に伝わるほど力強く弾き返せたおかげで、女は倒れ込むように回転しながら着地する。
その際、手に持っていた模造剣が遠くにはじき飛ばされ土間に刺さる。
今度は女の身体を覆っていた赤黒い靄が、瞬く間に無数の鋭い槍のように形を変え、俺と龍梅を貫くべく突き出された。
龍梅も剣を振るって靄を斬り裂く。
龍梅の剣舞は龍剣とは異なるリズムを持ち、まるで水面を滑るように滑らかで、しかし一撃一撃に確かな力が込められていた。
二人の剣舞が交錯するたび、龍神閃の青い光が靄を切り裂き、祭壇の光と共鳴して大広間を照らした。
「うるさいっ! うるさいっ! 邪魔な女は消えろ!」
郷長の娘が絶叫し、両目からドロッと赤い血を流しながら龍梅に襲いかかった。
龍梅は、その不気味な形相に一瞬怯んだ、その隙を女は見流さず龍梅の首を掴んだ。
「つ、か、ま、え、た」
郷長の娘の首があらぬ方向へ曲がる。
「あぁぁぁぁぁ……龍剣さま。どこ!? この女を殺すの! 見てて欲しい……。……龍剣さま? どこにいるの!? ああああ、見えない! 見たい! 見たい! 見たい! 見たい! 見たい! 見たい! 見たい! 見たい! 見たい! 見たい! 見たい! 見たい! 見たい! お前じゃない!!!!」
女の手が、龍梅の首を締め上げようとする。
その時、ピタッと動きが止まった。
「ああぁあ、呼んでいる……。龍剣さま、来て」
そのまま、赤黒い靄が龍梅と郷長の娘を覆いつくす。
「龍梅! 姉貴ーー!!」
龍梅の姿が消えてしまった。
龍梅は……彼女は、前世の姉貴だった。
また……俺のせいで姉貴を失うのか!?
何かが砕ける音がした。
無気力となり、膝が土間につく。
「龍剣! しっかりしろ! まだ、大丈夫だ! 殺すつもりなら連れて行かないはずだ!」
お父の言葉が、胸の奥に深く刺さるーーまだ終わっていない、まだ……。
「でも、どこに……」
「まだ、呪の封印が完全に解けてないはずだ。だとすれば、湖だ」
「湖の中心にある石ーー」
そこにいると信じて行くしかない。
龍梅ーー姉貴を助けるためには!
【★お願い★】
こんにちは、作者のヴィオレッタです。
最後まで目を通していただきありがとうございます。
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