王と王女
中華風ファンタジーで読み辛い文字とかありますが
ルビ(フリガナ)をふってありますのでストレスなく読めると思います
「……我が末裔?」
もし、この男女が巻物に描かれていた双子だとすれば、王と王女?
郷で虐げられ、蔑まれてきた俺たちが山岳王国の末裔だなんて嘘だろう?
龍梅は隣で息をのんでいた。
「そんな……私たちが?」
「あの剣舞……俺たちの剣舞」
剣舞は俺たちにとって唯一誇れるものだった。
この世界で生きる術として父から教わり、ただ生きるために剣を振るった。
それが王族に伝わるものだったなんて……。
「そうです。待っていました」
男女は俺たちをまっすぐ見つめ、ゆっくりと頷く。
「そうだーー龍剣、龍梅。お前たちこそ、我が末裔だ」
「じゃあ! この紋様! これが何かーー」
「その紋様は龍神さまの加護。この地が再び呪いに染まった時に王の末裔に力を貸してくれることが約束されているのです」
王の末裔に? まさか!?
俺は慌てて龍梅の方へ振り返る。
「龍剣……、私の手も、紋様が……」
龍梅はそっと手を広げ、震える指先を見つめる。
王は、目を閉じ感覚を澄ましている。
「この地から離れてしまったようだな……封印が緩んでしまった」
「今は封凶祠の力で辛うじて保っていますが、長くは持たないでしょう」
王女の次に発した言葉は、場の空気を凍りつかせるものだったーー。
「国を越え、全てが呪に染まるでしょう」
あの目から血を流した郷民のように国中の人間が発狂するかと思ったら背筋がぞわりとした。
王は静かに言葉を紡ぐ。
「再封印せねばなるまい」
「呪いとは……一体なんなのでしょうか?」
お父が恐る恐るかすれた声で尋ねる。
「……ある女がいた。女は高官の娘だった。父親の手によって、次王の伴侶となるべく育てられた。だが——その願いは叶わなかった。その娘は自分の目を天の闇の神に捧げ……王国を呪ったのだ」
「そんなことで……?」
俺は思わず声を漏らした。
山岳王国全体を呪うほどの憎しみ——それが、そんな理由で?
「哀れなことに……、その娘には、王の伴侶となることこそが唯一の生きる道だった。娘の人生は、それ以外の選択肢を許されなかったのだ」
娘の父親である高官は、いずれ産まれる子を使い実権を握り、王国の統治者になろうと画策していた。
もちろん、そんなことがまかり通るわけもなく、王は別の者を伴侶とした。
「……彼女自身も王の伴侶になることを信じて疑わなかったの。叶わなかった時の彼女の絶望は言葉では表せないほどのものだった」
「彼女は七日間、一睡もせず呪詛を唱え続け、最後に自身の目を捧げ呪いが完成した」
「その女性の思いは、一人の女性としてはわかるわ……」
龍梅が小さく呟く。
「我が末裔よ。剣舞をもって呪を再び封印するのだ」
「あなたがたに頼るしかないのです。王も私も祭壇に込めた思念でしかない」
王女は申し訳なさそうに目を伏せた。
「いや、突然に言われても! 俺はこの手さえーー!?」
ズウンーー、場の空気が沈み、まるで何かが押し寄せるような気配が走る。
その瞬間、微細な埃が舞い下り、光の筋に浮かび上がった。
重い沈黙の中で、草臥れた木の匂いが鼻をかすめる。
「二振りの剣龍神閃がそなたたちを導いてくれるはずだ」
「呪が強くなったようです。龍剣、過去からの因縁を絶ち切るのです」
「過去からの因縁?」
「龍剣、お前は我であって我ではない。本来なら、我で絶つべき縁であった。すまない」
俺は息を詰まらせた。
何の因縁だ? 絶つべき縁? 俺は王であって王ではない?
王の言葉の意味が、まるで理解できなかった。
「我が末裔よ。この国の民を守ってくれ」
「どうか……民を守ってください」
俺はただ、この世界に生まれてきただけなのに。
俺は知らず知らずのうちに拳を握り締めていた。
「国の民を守れって!? 俺はそんなことできない!」
なんで、国の民……?
俺は姉貴、家族を守れれば、それでよかったはずなのに……!
【★お願い★】
こんにちは、作者のヴィオレッタです。
最後まで目を通していただきありがとうございます。
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