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焚き火の誓い

中華風ファンタジーで読み辛い文字とかありますが

ルビ(フリガナ)をふってありますのでストレスなく読めると思います

 旅商人が放した馬を見つけた俺たちは、(キョウ)へと急いでいた。

 その道中、森の小川で一夜。

 夜の闇に星が瞬き、冷たい風が木々を揺らす中、俺たち家族3人は小さな焚き火を囲んだ。

 まだ、春がのぞき始めた時期、夜の寒さは厳しい。


龍剣(ロンジエン)、ちゃんと薪持ってきたかしら? 焚き火が消えたら凍えちゃうわ」


 龍梅(ロンメイ)が薪をくべながら、わざとらしくため息をつき、俺をからかっているようだ。

 

龍梅(ロンメイ)、俺だって頑張ってるって! ほら、これでどうだ?」


 俺はドサッと薪を地面に落とし、得意げに胸を張った。

 枯れ枝を集めるの、大変なんだぞ!

 焚き火の光が3人の顔を照らし、しばらくの沈黙が流れる。


「…なあ。都に行ったらさ、小さい家買って、毎日こんな風に飯食いたいな」


 何の変哲もない夢のような願いが、ふとこぼれた。


「そうだな……。都に家を構えるとなると、それなりの(ゼニ)がいるな」


 俺と龍梅は顔を見合わせ、ふっと笑う。


「それがあるんだ」

「それがあるのよ」


「そうなのか?」


 予想外の答えに少し驚いているのが伝わってくる。


「おう」

「ええ」


「旅商人さんの馬車の残骸の近くに埋められていたんだ」


 きっと、山賊に(ゼニ)を渡したくなかったのだろな。

 その思いが、土奥深くに埋めるという行動に表れていた。


「旅商人さんは最後に託してくれたのを名無しの(キョウ)を出るときに掘り出してきたの」


「そうか、旦那が……。ん……旦那が? あ、あぁ、幽魂になった旦那にあったと言っていたな……」


 龍梅は小さく笑い、、鍋の中をゆっくりとかき混ぜた。

 火にかざされた粥の香りが、ふわりと夜の冷たい空気に溶ける。


「お父………信じられないかもしれないけど、これを見たら信じるだろ?」


 銅銭がぎっしりと詰まった大きな革囊(カクノウ)を馬の背から降ろす。


「これは……すごいな。……旦那がお前たちに託したんだな。それなら、お前たちが持っていなさい」


 お父は記憶を失っていた間、旅商人さんの尽力に心からの感謝を抱きながらも、守れなかった悔いが胸に重くのしかかっているようだった。

 その思いの行き場を求めるように、視線は焚火の揺れる炎に向かっていた。


「私は……お前たちの言うことは信じるよ。事故とはいえ、突然姿を消した私の言葉を信じてくれたのだから」


 お父は「都に家か」と静かに呟いている。

 炎に照らされた指先がゆっくりと動き、手の中の髪飾りをそっと撫で、お母に話しかけているようだった。

 

「家族で普通に暮らして、普通に生きたいんだ」


龍剣(ロンジエン)らしい夢ね。……でも、いいわ。私も、そんな未来、悪くないと思う」


 俺は剣の柄に触れ、前世の記憶がチラリと脳裏をよぎる。

 姉貴を失ったあの日の後悔が、胸の奥で疼く。

 

「龍梅。俺さ、前世を覚えているって言っただろ? 姉貴……。前世で…姉貴を守れなかったんだ。だから、今度は絶対に守る。龍梅やお父を」


 声が少し震える。

 龍梅は驚いたように俺を見つめ、そっと彼の肩に手を置く。

 

「龍剣、私もよ。あなたを守るわ。……双子。そう、双子なんだから、どちらかが欠けてもダメでしょ?」


 龍梅の言葉に、俺の胸の奥にじんわりと広がる。

 彼女の瞳には、揺るぎない決意と、どこか懐かしい姉貴の面影が宿っていた。

 姉貴……、俺がもう少し注意を払えていたら、守れたかもしれないのに。

 焚き火が静かに揺れ、少しの沈黙が流れたその瞬間――

 

「ブフッ!」


 突然、馬が俺と龍梅の間に首を突っ込んで、でかい鼻息を吹きつけてきた。

 焚き火の光に照らされた馬の顔が、まるで「感動的な話なんて聞いてられねえ!」とでも言うように、ニヤリと笑ってるように見えた。

 そのまま、俺の顔をデカい舌でベロリとなめた。


「うわっ! お前、タイミング悪いな!」


 俺の髪に馬のヨダレがベッタリついてるのを見て龍梅が吹き出す。

 

「もう、龍梅! 笑うなって! こいつ、絶対わざとやってるんだよ!」


 ムッとしながら馬の鼻を軽く叩く。


「ほら、やめろって!」


 しかし馬はまるで聞く気がない。

 わざとらしく首を振り、さらに俺の背中に鼻を擦りつける。

 やりすぎだろ……! どこで洗えばいいんだ……。

 

「お前、滷馬肉(ルーマーロウ)にならなくてよかったな」


 俺が言うと、馬は抗議するようにブヒッと鳴いて、龍梅の肩にドンと頭を乗せる。

 龍梅が「もう、しょうがないんだから!」と笑いながら馬の額を撫でている。

 

「この馬も、私たち家族に仲間入りしたいのかもしれないな」


 3人で笑い合い、焚き火の火花が夜空に舞う。

 遠くで小川のせせらぎが響き、安堵が二人を包む。

 

「明日は赤月哭(セキゲッコク)だな。戻るなんて……」


「そうね。夜逃げのように去ったのに」


 二人して同時に重いため息を吐く

 仕方がない、この手の模様を消す手がかりがあるかもしれないのだから。

 本当は戻りたくないはずの龍梅には申し訳ないことをした。


「……粥おかわりできる?」


「龍剣、ほんと食い意地だけは変わらないわね」


 文句一つ言わず、優しく微笑む龍梅の笑顔に、俺もつられて笑った。

【★お願い★】

こんにちは、作者のヴィオレッタです。

最後まで目を通していただきありがとうございます。

少しでも 「また読んでやるか」 と思っていただけましたら、

広告の下にある【いいね】や【☆☆☆☆☆】ポイントを入れてくださるとめっちゃ喜びます。

最後に誤字や言葉の意味が違う場合の指摘とかもお待ちしております。

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