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星が瞬く夜に、願いを捧げます。  作者: 夜花みあな
第9章「学園祭編」
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【9章-14話】僕の記憶に刻まれる、僕が尊敬する貴方を思い出す

 夜遅い静寂の学園、生徒会室には2人の人影が映る。

メリアはその生徒会室の中で、もう1人の生徒であるナウアールに呼び出されていた。


(…関係?何の?)

メリアがナウアールからの言葉に困惑していると、ナウアールはどこか寂しげな表情を浮かべた。

「…やっぱりね。覚えてなかったみたいだ」

『…すみません』

メリアの胸に罪悪感が宿る。

メリアが無言で俯くと、ナウアールは不自然に口角を上げ、答える。

まるで無理をしているように、メリアには見えた。

「いいんだ、覚えていようがいまいが、唯の僕の自己満足だからね」

そう言って天井を仰ぐナウアールを見るのは、とても気持ちの良いものでは無かった。

その後しばらく沈黙が続き、お互いが気不味くなっていた。

(…。無言になっちゃった。…何か…、何か言わないと…)

『あ、あのっ』

「…うん?」

『…今っ、凄く気持ちが悪いです!この空気がすっごく気持ちが悪いですっ!』

メリアの顔は、言うまでもなく混沌だった。

「…うん?」

疑問形で返すナウアールと視線を反らせながら、メリアは続ける。

『なので――』

『――折角なので天体観測でもしましょうっ!』

…数秒間、その場が沈黙に包まれた後。

「…ふっ」

『い、如何致しましたかっ…?!』

顔を隠して、身体を小刻みに震わすナウアールに、メリアは1歩また1歩と近付く。

近づいても尚、ナウアールはこちらに顔を向けない。

否、顔を上げようとすらしない。

(えっ…?!私いけないことしちゃった…?!…えっととりあえず…)

バタバタと混乱しているときも、ずっとナウアールは顔を隠し続けていた。

流石に心配になったのか、メリアは覚悟を決めて

髪で隠れた顔を見ようと、指でそっと髪を退けてみた。

勿論、メリアの心臓は今にも破裂しそうな程に音を鳴らしていた。

それはもう、五月蝿い程に。

(…?!)

いざ退けてみると、メリアはポカンと口を開けて硬直した。

何故なら、ナウアールの行動の意味が、メリアには全くさっぱり分からなかったからだ。

また、メリアはナウアールの表情を見る。

そこには、笑みがあった。

「いやぁ…、ありがとうメリア。これで何だか緊張が解けたよ」

『き、緊張してたんですか…?!』

「うん。大事なことだからね。でも今、メリアが面白くて…ううん、緊張を解いてくれたから大丈夫」

良くない言葉が通り過ぎたように感じたメリアは、思わずツッコんだ。

『…今、面白いって言いかけて――』

「――…でも話す前に、まずはやることがあるね」

遮って答えたナウアールは、メリアに言った。

『やること、ですか?』

「うん、君がいちばん分かってるじゃないか」

「――天体観測だよ」


やがて、学園の外に出た2人は、人目につかない校舎裏に向かった。

「…あ」

ナウアールが空を見上げながら声に出したので、メリアもつられて空を見上げる。

『…凄い』

「…昔も、よく天体観測してたな」

ボソッと呟くナウアールの隣で、メリアは目を輝かせた。

『今日は、流星群ですか?』

「…え?」

空を見上げると、そこには空中に広がる星々の中で、流星群が落ちていた。

(流星群なんて、滅多に…)

「11年前、初めて見た流星群。君が見せてくれた流星群。…似てるな」

『それって…――』

今までメリアの中に無かった記憶がフラッシュバックする。


――「宜しく、ナウアール!」


――「…う、うんっ」


気付いた時、自分の頬には目から流れ出た熱い液体が伝っていた。――



――11年前。

「今日、新しい子が来るみたい。メリア、どんな子だと思う?」

「うーん、女の子ならどんな子でもいいかな」

「…ふーん」

孤児院では、新しく院に入る子供がいても皆に告知することはない。

1ヶ月に一度は親を無くしたり、親に捨てられた年齢様々な子供らが院に入るのだ。

そんなことがある為に、態々告知をしないのだ。

「…あ」

2人の少女が話している前で、1人の少年がドアから顔を出した。

見た目は6~8つ程に見え、服装はボロボロ、髪はボサボサだった。

終いには、似合わないような眼鏡を付けていた。

「…男の子だったみたいだね」

「う、うん」

2人のうちの1人、アクアマリンの瞳をした少女は、もう1人の少女とは違い、その少年をじっと見ていた。

(…話し掛けてみようかな)

そんな興味で、アクアマリンの瞳をした少女は少年に向かって走る。

そして隣に来るなり、声を掛けた。

「ねぇ、私メリア。貴方は?」

「…ナウアール」

「良い名前ね!…宜しく、ナウアール!」

笑顔でメリアを名乗る少女が言うと、ナウアールを名乗る少年は笑みを浮かべて言った。

「よ、宜しくっ」――


食事も一緒、遊ぶ時も一緒。

君といる時は、退屈な日は1度もなかったよ。


――それから2年後。

メリア7歳、ナウアール11歳。

「メリア!メリア!」

「…うーん?」

「新聞で見たんだ!今日流星群なんだって!」

喜びを身体いっぱいに表現したナウアールがメリアに向かって飛び込んでくる。

「え、そうなの?!本当?」

「うん!一緒に見ない?」

「…でも院長さん、大丈夫かな?」

不安げに訊ねるメリアに比べ、ナウアールは嬉々として答える。

「平気平気!窓からでも充分見えるらしいし!」

「…なら大丈夫そうだね!」


そして、君と星を見たんだ。

――人生初の流星群を。


「わぁ…!」

「地面に向かって落ちてくるみたい!」

2人の子供は、窓際に立って落ちる星々を眺めていた。

その時、メリアは突然黙り込んだ。

普通は、黙り込むなんてことは驚くことでは無い。

だが、ナウアールはメリアを見て驚いた。


――「メリアっ…?!」


(だ、駄目っ…、これ以上言われちゃぁっ…!)

メリアは土の地面に座り込む。

顔を手で抑え、嗚咽が混じった声を出しながら。

ナウアールは、メリアの状態を見ると驚きも見せずにメリアにハンカチを手渡す。

「…人格が増え始めたんだよね。その時から」――


――「今思えばおかしいことはなかった。前に記憶改変操作を受けた時にも、前に受けたことがあるかのように多少の耐性がついていた。…そこから導き出されることはただ1つ。――前にも同じ攻撃を受けていた、ということだ」


――あの夜以降、メリアは夜中に突然起きては窓から外へと抜け出していた。

昼間に本人に問い掛けてみても、その事については覚えていないようだった。

そんな時だった。

「…メリア」

「どうしたの?」

「僕、来月引き取られることになったんだ。…ここから凄く遠い場所に住んでる人に…」

僕に、ナウアールを引き取ってくれる者が現れた。

それまでメリアと共に過ごした数年は、大切なものであった。

勿論、彼女が返した言葉はこうだった。

「――良かったね、ナウアール」

何処か寂しげな表情だった。

これだけは、僕は鮮明に覚えている。

しかし、この後の記憶は…。

――事件の記憶はあまり無い。


――それは夜に起こった。

「…豪雨だ」

口に出した。

外は室内でも鮮明に聞こえる程の大きさであり、雷が鳴り響く。

皆が泣き、不安がり、興味を示したりする中、メリアは1人無言で外に出た。

その目は生気が無く、濁っていた。

そして外に出ると――。


「…っ、もう、もう止めてっ、止めてぇっ。止めっ、…ぅっ」

メリアが言うと、我に返ったナウアールは自分の頬を引っ張った。

(…一体、何をしているんだ、僕はっ…!)

「…め、メリア。ごめん。もう今日は寮に戻ろう」

メリアは手で顔を抑えながら、泣き続けた。

手渡されたハンカチを地面に置いて。


空は2人の気持ちを汲み取らず、唯流星群を降らす。

その下で、ナウアールは寮長に泣き疲れて倒れたメリアを預けると、自身の部屋に戻る。

隣の部屋の友人が、部屋の扉を叩いて訊ねる。

「ナウアール。夕食食べなくていいのか?」

「――あぁ、大丈夫」

言うと、ナウアールは自分の胸を叩いた。


――(こんな奴が、敵国に行ける筈無いだろ…っ)

そして、ナウアールは手に顔を埋めた。

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