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星が瞬く夜に、願いを捧げます。  作者: 夜花みあな
第9章「学園祭編」
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【9章-12話】意外な人物との遭遇

 「…っ!」

メリアはガタガタと震える足で、1歩、また1歩と後退りする。

それは自分の意思ではなく、自分の身体が拒否反応を起こしているが為だった。

自然と、自身の呼吸が上がっていく。

(…こ、孤児院長…っ?)

そう、目の前に現れたのは、白髪が入り交じった茶髪の髪をした男。

その男こそ、メリアを孤児院からレイランド学園へと送った人物、リンウェル領立孤児院長本人であった。

「おや、何でだ?久々に会えて、喜ぶべきところじゃないのか?「お久しぶりです」ってよ」

馴れ馴れしい口振で1歩、また1歩とメリアの返事を待たずに、孤児院長は前に近付いてくる。

(…っ、息がっ)

息が上がるのと同時に、メリアの足も自然と後退りし、孤児院長から離れる。

それを見た孤児院長は、足を止めると大きく溜息をついた。

「…無理もないよな。俺が追いやったんだしな」

(…へ?)

キツく瞑っていた目を開くと、自身の口から自然と言葉が流れる。

「…ねぇ、孤児院長」

「ん、何だ?」

何も構わず、こちらを向いて答えると、孤児院長は何かに気付くと直ぐに口に出してメリアに言った。

「お前、半分人格代わってんな。大丈夫か?今はもう対策しなくても平気か?」

「…ぁ」

確認すると、メリアも気付かない間に、人格が半分前に出てきていた。

(良かった…、レアだった…)

安心したメリアは、ほっと胸を撫で下ろす。

その入れ替わりで、半分の人格を支配しているレアが孤児院長に向かって話し出す。

「…ところで孤児院長。何故今――」

「――なんでここにいるのか、だろ?」

言おうとした台詞を読まれたかのように、孤児院長は流れるように口に出す。

驚いて声も出ないが、レアはメリアとは反対にまた質問を投げようとした。

「…それで――」

「――お前達を守る為だ。悪いことはしない」

「…なんで?」

聞き返すと孤児院長は、その答えを用意していたようにスラスラと理由を話し出した。

「メリア、お前の母親からの手紙だ」

「…?」

メリアは疑問に思いながらも、手渡された封筒を手に持つ。

封筒は少し厚みがあり、紙以外の触り心地もする。

メリアは封筒を見たあと、孤児院長を改めて見て訊ねる。

「これを渡す。だからさっさと学園祭を終わらせろ」

(…急いでる…?)

「孤児院長、それは――」

「――いいから急げ。あとフィナーレまで1分も無いぞ」

孤児院長の言葉で我に返ると、メリアは舞台の方に目を向ける。


――「あぁ、我が国の空よ。満点に咲き誇る花のように星を輝かしてくれる」――


――「魔術師さん…っ!?」――


ここは何度も練習した。

フィナーレと演技がピッタリと合わなければこの舞台は終わらない。

何度も、何度も何度も合わせた。

(…今は)

「…すみません、行きます」

メリア自身の人格ではっきりと告げると、メリアは新たに詠唱を始めた。

「―大光魔術、第12935章、白に輝く光花。―」

それに追加して、メリアは空高く手を伸ばし、詠唱を新たにした。

「―大星魔術、第6329章、ベリメリア座の導きの末路。―」

やがて詠唱を終えると、メリアの辺りには白く輝く花と空中に浮かぶ星々が見えた。

それはメリアの辺りだけではなく、会場や他の学園の敷地内全てに溢れかえっていた。


――「…うわぁ…!」――

――「綺麗ね…!」――

次々にそんな言葉が聞こえてくると、その様子を見ていたナウアールは微笑みを浮かべながら呟く。

「流石は僕の…」

言い終える前に、自身の手で口元を塞ぐ。

手を離すと、ナウアールは隠しきれていない笑みを浮かべ、うっとりと目を細めた。

(…ありがとう)


――「大魔術か…。お前も魔術は大した出来になってきたんじゃないか?」

孤児院長が拍手をしながらこちらに向かってくると、メリアは間髪入れずに訊ねる。

「…は、話して下さいっ…。何でここに来たのかを…っ」

「…すまんが、そんなに時間は無いんだ。…とりあえずお前の質問には簡単には答えてやる」

(…)

「今俺は適当な理由でベルレイという奴の仲間としてお前を捕まえようとする形でここに来たんだが――」

その言葉を聞いて、メリアは反射的に魔術を孤児院長に向けて撃つ。

「―水魔術、第3章っ…―」

焦るメリアに対し、孤児院長は言葉も無くその魔術を手で受け止め、次々に自分へと向かってくる攻撃を流す。

「――でも、今回はお前を嘲笑ったり貶したり、お前について閲する為に来たんじゃない。――お前を守る為に来た」

(…私をっ…?)

言い終えると、孤児院長は何かを感じ取り、小さく呟くように告ぐ。

「…メリア、仲間のところに逃げろ」

「…えっ…?」

メリアがその人物から出る筈の無い言葉に驚いていると、孤児院長はメリアの様子を見て声のトーンを上げてまた言った。

「逃げろ」

「…な、なん――」

「――追っ手が来る。とっとと逃げろっ…!」


――「お前は魔術師学園のレイランド学園に首席合格した。全寮制だから入学しろ」――


孤児院では、自分の…私のことも構いもしなかったあの孤児院長が…?

私に向けられた言葉が、約10年の内でも数少なかったあの孤児院長が…?

私のことを…。

嘘だ、嘘だっ、嘘だっ…!


孤児院が声のトーンを上げてメリアに言っても、打ち消されることなくメリアの頭の中は、孤児院に対する疑問で頭が1杯だった。――


――次にメリアが我に返ったのは、暗闇に立っていた時だった。

(…あ)

きっと、あの後に気を失ったか何かで連れていかれたのだろう。

腕を動かそうとするが、何故だか自由が効かない。

(…あれ)

自分の身体を力一杯振り絞って動かそうとするも、ピクリとも動かなかった。

もう一度辺りを見て、今のこの状況を確認しようとした時だった。

――「お目覚めかい?」


――光が見えた。

――本物の光だ。

刺すような白い光が見えた――と思った。

メリアも最初はそう思った。

だが、それは現実ではなかった。

1人の青年の顔が、そこにはあった。

(…)

ツッコむ気力も魔術を展開する気力も無くなったメリアは、魂が抜けたようにナウアールの腕の中に倒れたのだった。


――一方、校舎裏では。

「ねぇ、ベルレイ。アンタの目的、何だったっけ?」

頬に煤をつけたシルベートが言う。

その言葉に、服や顔見当たる限りに煤や破れ跡を付け、大木に寄り掛かるベルレイは返す。

「メリア、ファスリードの…。…あぁ、今はもう駄目だ」

そう言って微笑むと、ベルレイは空に輝く星々と、地面に咲く白く光る花を見て、魂が抜けたように力無く言った。

「もう、今日は勘弁するから…。先に帰っちゃった嫁ちゃんに迎えお願いしてくれないか…?」

「自分で帰れ」

そう言ってシルベートは疲労しきった身体を叩き起しながら詠唱を始めた。

「―神託大特化魔術、我が契約致すフェブリナ神よ。我が操りし人形を目覚まし、我が手に落とせ。―」

言うと横に倒れていたラリーが目をカット開け、地に足をつけて立つ。

すると、ラリーは操作魔術に掛かられたようにではなく、自分の意思で2歩歩き進むと、赤く光った目でベルレイを見下し、お見舞いに詠唱を唱えた。


――「我がお慕い致します、アルトルバン神殿。我を操る此小娘によって、…どうか、…どうか自分の作った時空と世界を憐憫した貴方様の眼を御自身の手で下しましょう…!」――


その狂気の言葉を並べた詠唱を終えると、「フフッ」と気味の悪い笑い声を最後に、その場所は強烈な光に包まれたのであった。


そして本当の最後に、光を放った者は地へと軽やかに降りると、片手を上げて地に倒れる者に向かって制裁を与えた。


――「これが、最後の天誅だ」――


その言葉を真の最後にして、校舎裏での話は終わった。

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