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星が瞬く夜に、願いを捧げます。  作者: 夜花みあな
第9章「学園祭編」
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【9章-2話】誇り高き魔術師

 アリアに連れられて古本市に向かう最中、メリアは考え事をしていた。

(そう言えば、始まってから王子達の姿見てない?…別に最初から来るって言ってた訳じゃないから、当然かな…?)

少し気になるという好奇心を胸に宿しながら、単純に怯える我が身を摩る。

人間が苦手な者でも、好奇心は湧くらしい。

(…そろそろ着く頃合いかな?)

アリアの横から覗くと、案の定古本市の文字は大きく見えていた。

「メリア、着いたよー!」

アリアの声で立ち止まると、メリアは辺り全体を見渡す。

『…広くないですか?』

「いや?昨日も同じぐらいだったじゃん」

(昨日も?)

アリアの言葉に引っかかっていると、アリアは「あー!」と声を上げる。

「メリア、あそこの本見てみてもいい?」

『分かりましたっ、私も見てきますっ…!』

目を輝かせるアリアに、メリアも別のエリアを見て目を輝かせる。

2人の鼻息は異常な程に荒い。

息ぴったりの2人は、同時に頷くと、それぞれの気になるエリアに向かって行ったのだった。


「レーベ、何故皆は私に注目しているのかな?」

第3王子、ウェリアーンが眉をひそめて訊ねる。

苦労人従者、レーベは警戒しながら答える。

「…殿下、これは恐らくきっと――。…いえ、何でもありません」

「何だい、はっきり言わないと分からないよ?」

「…こちらの問題ですのでお構いなく」

表情を戻し、無かったことにされたウェリアーンは頬を膨らまして言う。

「私は、王子なんだけれど?」

「それとこれとは話が違いますし、位の上下の違いで仕方なく私から話すことはありませんよ」

そうレーベが答えると、益々ウェリアーンの頬は膨らんでいく。

「そんなに言いたくないのかい?」

「言いたくない、というよりは言わなくてもいいじゃないか、という認識で話していないだけですが?」

落ち着いた様子で答えるレーベに、ウェリアーンは肩を下げて言った。

「うぅ、私のキューティー頬膨らましが効かないのか…、これは強敵だ」

「何ですかその名前」

「今の私の必殺技だ」

堂々と腕を組んで誇らしげに語るウェリアーンを引き気味に見ると、レーベは「大丈夫ですかね、この王子…」と呆れ果てながら呟く。

「ナウアールは「駄目だ…」と顔を隠していたのに?」

「きっと、それは――」

(――諦めの方だと思います)

口に出しそうになるのを堪え、レーベは頭を下げる。

「…いえ、何でもありません」

「それだよー、酷いと思わないかい?」

「…。それより、学園祭は回らないのですか?1時間以上いますよ、木陰に」

ウェリアーンははっとして、木に寄りかかっていた身体を起こす。

そしてレーベが手にしている懐中時計を見ると、呟いた。

「…1時間以上って、1時間半も入ってるのかい?長居し過ぎってことかな?」

「そうですね。私が言いたいのはそういうことです」

言うと、ウェリアーンは大きく伸びをして木陰から1歩踏み出す。

そして悩んだ末に、レーベに言った。

「それじゃあ、…古本市へ行こうか」

「…畏まりました」

後からレーベが木陰から出て、頭を下げた。


「…つ、着いたぁ」

白い光の中から、属星魔術使いのラリー・ムルトスタが現れる。

「約束の時間、11秒の遅刻ですよ?」

ラリーは杖を再び握り締めて自分の方に寄せると、目の前のローブを着た人物に声を掛けた。

その人物の前には、小さい一軒家が立ちそうな位の敷地に巨大かつ精密な魔術式を編ませた魔法陣が浮かんでいた。

ローブを着た人物はその魔法陣に手を当てている。

「すみません、フリアーネルさん。少し道に迷ってしまっていて…」

「誇り高き魔術師、属星魔術使いが言い訳したら、文字通り全てが狂うんですよ?分かって言っていますか、ムルトスタ殿?」

ローブの人物がこちらに向く。

ローブの人物は女であり、片目の色が異なっていた。

女の言葉の圧に押し潰されそうになると、ラリーは言い返そうと口を開く。

(たかが11秒、11秒ですよ!?)

ラリーはそう言おうとした。言おうとしたのだ。

だが、相手の女に睨まれるとラリーは小さくなって返事を返す。

「うぅ…、はいぃ…」

「分かりましたか?」

顔を近付けて更に圧を掛ける女に、ラリーは泣き顔で頷く。

「…これで許そうかと思いましたが、まだ許してはならないことをして来たようですね、ムルトスタ殿?」

「な、なんのことでしょうかね…?」

上の空になるラリーに、女は大きく溜息をつく。

「神託大特化魔術、使いましたよね?魔力量が減っています」

(そうだぁ、フリアーネルさん魔力探知得意だった…)

「正直にお願いしますよ?」

不気味な笑顔で笑う女に、ラリーは意を決して言った。

「…つ、使いましたっ!」

「だと思いましたよ。流石の貴方の魔力量でも、減っていれば疑いますよ」

「…やっぱり分かるんですね」

属星魔術使い、ラリー・ムルトスタは属星魔術使いとしても有名だが、それ以上に世界一の魔力量を持つことでも有名だ。

その数は――。

「2040、それだけの魔力量を持つ貴方を放っておく者はいないですよ。何処にも」

通常の魔術師の魔力は、平均して500~600程度であり、魔術師になれる最低限の魔力量だ。

最高魔術師でさえも、1番多く魔力量を持つ者は光属性担当のウルディア・トルアー・テンパストの1200だ。

それと比べると、凄さがより分かる。

「…というか、早く代わってくれませんかね、ムルトスタ殿。わたくしの魔力が底を尽きそうなのですけれど」

「は、はいぃっ。すぐ代わりますっ!」

そう言ってラリーは詠唱をする。

(…流石はムルトスタ殿、と言った所でしょうか。神託大特化魔術を使っても尚、あれだけの魔力量を残しているとは…)

女の目はラリーの姿を追う。

詠唱を終えたラリーは、1歩ずつ魔法陣に近付き、地に手を付ける。

そして続けて詠唱を口にすると、地に付けた手の場所に魔法陣が展開する。

そうして1歩下がるラリーの瞳は、先程とは異なった色の、青色のシアンに変わっていた。

「――今は眠りし制御主を今此処に、我と入れ替わる事を許し、そして委ね、我の全てを渡そう。――」

ラリー・ムルトスタ。

彼女は、光属性精霊神ビアルティール神託術を行使する魔術師であり――


――人格を複数持つ、多重人格者だ。

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