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星が瞬く夜に、願いを捧げます。  作者: 夜花みあな
第8章「学園祭準備編」
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【8章-8話】癖強教師の指導かと思われた時間

 ――数日が経ち、学園祭前日。

メリアは学園祭で開かれる屋台を見回っていた。

(てっきり学生が開くのかと思ってたけど、案外、外からの店も多いな…)

メリアが見ている光景は、言い表せない程とても凄いものだった。

食べ物や菓子を売っている店もあれば、ちょっとしたアクセサリーや文房具の店もある。

(…当然かな?)

レイランド学園には、魔術師を目指す者で魔力を持つ者なら、爵位持ちの貴族、平民…と様々な人物が入学している。

きっとここに並んでいる店は、爵位持ちのお貴族様が呼び出したんだろう。

そう解釈しつつ、目立たないように陰と陰を渡り歩いていた時だった。

「メリアー!」

アリアがこちらに向かって、片手に本のようなものを持ちながら走ってくる。

メリアの目の前まで来ると、ハァハァと荒い息を立ててメリアに本を見せる。

「見て!」

『…その本、どうしたんですか?』

「あそこに古本市があったの!古い魔術書も売っててさ。前払いで買ってきたけど…。一般には明日本格的に売ってくれるって!」

中々嬉しい情報だが、生憎メリアひとりでは行けそうに無い。

『嬉しい!でも、…どうしよう』

メリアが言うと、アリアは俯きがちになったメリアの顔を覗き込んで言う。

「メリア、私はメリアが好きそう、ってだけで言うと思う?」

目線を合わせると、よりアリアの不機嫌さがしっかりと見える。

『え、えっと…』

「察するのを練習した方がいいかもね。いちいち話すのもあれだし」

『すみませんっ…――』

目を力一杯瞑って、一時強制的に視界を塞ぐ。

――きっと嫌だと思っているに違いない。

そう思いながら、メリアは反射的に頭を抱える。

だが、罵倒する声も慰める声でもない優しい声が、ある言葉を放った。

「特訓よ、メリア。メリアだって人から謝らない方が気持ちいいでしょ?」

『…』

「メリアと何かしたかったの。だけど今、丁度いい約束が出来たっ!」

(…あぁ、そうだった。アリアは、…アリア・ラクアレーンは――)

メリアは心で思うのと同時に、アリアは暗い地を明るく照らす光のような声で無邪気に笑った。

「――今から特訓開始だからねっ!」

(――私を、照らし、助け、導いてくれる光だ)

改めて思うと、メリアは微笑んだ。

『はいっ…!』

この出来事が、久々に恐怖ながらも声が漏れそうになった時となった。

「…でもとりあえずは、明日一緒に学園祭回ろう!」

アリアはメリアの手を引っ張って、屋台の陰から陽の下に向かって走り出した。

そのときの空は、いつもより晴れ渡っている気がした。


(…学園祭、楽しみ…、かも)

そう思った束の間、教卓の方で声がした。

「――で、遅くなったが君達1年生には、多少の礼儀作法を叩き込むように指示されてね」

(れ、礼儀作法っ…?)

「今年は王室が学園祭へいらっしゃる。多少の礼儀作法を身に付けないと」

「安心してくれ。簡単な話し方と接し方だけだ。“理解すれば”直ぐ終わる」

「今から1時間、みっちり授業するからね」

話しているのは生徒会長、ナウアール・スウェディと会計、ロヴィリア・ルンディス、副会長のスアラ・ホリベリアン。

3人は指示すると、扉を開けて人を招く。

「こんにちはーっ、皆さんっ!これから1時間、みっちり扱いて扱いて扱き捲るので、どうぞ宜しくお願いしますわっ!」

中々癖の強い女性教師が入ってくるなり、アリアは軽蔑の目を向ける。

メリアは何とも思わなかったが、癖強教師が最後に放った言葉で、全てが変わった。

「国が誇る魔術師育成学園でも、あたしがっ!鍛えて差し上げますわぁっ!」

何という気迫に満ちた言葉だ。

メリアがその言葉に圧倒されていると、ナウアールがこちらに向かってこっそりと手招きしているのが見えた。

辺りを見ても、誰もナウアールと目が合っていない。

ということはメリア自身に手招きをしているのである。

メリアは慌てて立ち上がると、廊下へと繋がる扉に向かって一目散に走っていったのでだった。

(ちょ、ちょっと待ってメリア!?私を置いて何処に…?!)

(すみませんんんんんっ!)

メリアは何度も頭を下げながら、教室を出ていった。


「ありがとう、来てくれて」

『は、はいぃ…』

控え目にナウアールの後ろを歩いていると、ナウアールは足を止めてメリアに近付こうと試みた。

しかし、残念なことにメリアも足を止めた。

(…不意打ちでも駄目かな)

そして歩いて止まる歩いて止まるを繰り返していると、何だか面白く感じてきた。ナウアールが。

メリアに聞こえないように声を抑えて、足を止めたり進めたりする。

メリアはその度足を止めたり歩いたりする。

それが面白く、そして可愛らしい。

ナウアールは様子を楽しんでいると、ナウアールの前をさっさと歩いていたロヴィリアが言う。

「それが本題じゃないだろ。遊んでる暇じゃっ…」

「まぁいいじゃないの。2人、楽しそうじゃない?」

(…そういう事じゃっ)

「まぁ、先に行ってましょ。場所は分かってるし」

話を聞かないスアラに、ロヴィリアは引っ張られるようにして動止を繰り返す2人から離れていった。


生徒会全員+メリアがとある部屋に集まると、学園長が真ん中に座る。

「生徒会の皆、授業中にすまないね」

「いえ、学園長。本日は特別日課ですので」

ナウアールが返す。

生徒会役員は、慣れているのか平気そうな顔をしている。

だが、メリアは違った。

(私っ、生徒会役員じゃあ無いんですけどぉぉ?!)

「…あぁ、ファスリード君もいたね。晴れやかな学園祭のフィナーレ担当だ」

『あっ、はい…!』

「しかし、私がいる前で結界書法魔術とはね…」

困ったように言う学園長に、メリアは慌てて解除の詠唱をしようと口を開く。

「いや、いいんだ。君の情報は学園長として知っているからね。無理矢理個人情報を知りながら解除させるのは、1人の人間として失礼に値する」

『えっと…、すみません…』

「ここでは謝る必要は、少なくとも今は無いよ。何も気にする必要も無い」

ナウアールの言葉で、メリアは背筋を伸ばす。

(…そうだ、私って今学園長の前にいるんだ)

『す、すみませんっ』

「謝る必要は無いよ?」

『あぁっ…』

力を無くすメリアの前で、学園長は微笑みながら話を進める。

「今日、集まってもらったのは1つ。してもらいたいことがあるんだ」

その場が静まり返ると、学園長は机から何かを取り出すような仕草をしながら静かに告げた。

「――このバッジを付けてくれないかな?」

(え…?)

一人一人に配られたのは、学園のロゴが入ったバッジ。

見たところ、魔術の類のような仕掛けはされてないようだ。

「そのバッジを付けるだけ。それが、私のしてもらいたいことだ」

唖然としていると、ナウアールが隣からメリアの制服のローブにバッジを付ける。

「…いいね。分かりました、学園長。明日付けさせてもらいます」

「宜しくね」

学園長が言うと、生徒会役員は全員立ち上がり、扉に向かう。

遅れてメリアが扉に向かうと、学園長に呼び止められた。

「ファスリード君」

『な、何でしょう?』

「学園祭の時、もし暇だったら古本屋の屋台を見てくれないかな。暇だったらね」

『わ、分かりましたっ』

(古本屋…、朝アリアとあったところの所…、だよね)

『ではっ、失礼しますっ』

メリアはそう学園長に返して頭を下げると、部屋の扉を閉めた。

その時、メリアは部屋の名前を見て驚愕した。

――〈学園長室〉

目撃情報によると、あとのメリアの目は驚く程死んでいたらしかった。

そんな噂も立ちながら、メリアは学園長室から離れた


「メリア、大丈夫かい?」

その言葉でメリアは目が覚め、メリアは小さく呻いた。

(…何で私がっ)

「バッジ貰うのっ…っ?!」

「さて、なんでかな」

思わず口を塞ぐと、ナウアールはメリアの頭を撫でる。

(え、あ、え?)

驚きで目を丸くしていると、ナウアールがメリアに手を差し出す。

「レディ、行こうか」

(…え?)

何も動けずにいるメリアの手を強引に取って、ナウアールはメリアを立ち上がらせる。

メリアが立ったのを確認すると、ナウアールはメリアと共に、飛行魔術を使って廊下を駆け抜けていった。

(何で何で何で何で何でぇっ?!)

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