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星が瞬く夜に、願いを捧げます。  作者: 夜花みあな
第8章「学園祭準備編」
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【8章-4話】そして迷子になる

 「――で、フィナーレに少し演技を付け足したい、と?」

リバールンが眼鏡を掛けて、メリアが渡した資料を眺める。

『はい、皆さんが宜しければなのですが…』

(殆どラウィーヌ様の案なんですけど…)

ラウィーヌの様子を伺うと、ラウィーヌはいつもの無表情のまま、こちらを向く。

その眼差しは、まるで「何か?」と言っているようだ。

…いや、言っている。

(心理操作、使えるから心の中は聞かれちゃうんだよね…)

(…そうよ。にしてもメリア、いちいち思ってるから、覗けちゃうんだけど?)

あ。

メリアは自分がどれだけ可笑しいのか、それがラウィーヌの一言で分かった。

(なんでぇぇ)

心の中で叫ぶと、ラウィーヌはやれやれと首を振って言う。

「残念、としか言いようがないわよ?」

『あぁ…』

「ファスリード殿」

話をしてきたリバールンが、頭を下げてメリアに言った。

「全力を尽くしますので、指示をお願いしても宜しいでしょうか?」

『…はいっ。こちらこそ、宜しくお願いしますっ!』

(やった…!)

メリアは心の中で喜びを叫び、自分を褒め讃えた。


メリアの計画しているフィナーレを大まかに言うと、こんな感じだ。

――終わりを向かえた後、舞台の会場であるアリーナ全体を魔術で星を作り出し、台詞を言ってもらう。

メリアらしいと言えばメリアらしいが、それなりには労力が必要だ。

(アリーナ全体に、そして維持する為には最低でももう1人は必要かな…)

生徒会室の前を通ると、丁度生徒会室の扉が開く。

「だー、かー、らー、今年は王子が来るんだからもっとこう――」

驚いた拍子に、扉の向こうを見てしまった。

顎を持ち上げられて顔を近付けられるロヴィリアと顔を近付ける少女の姿が。

そっとその場から離れようと踏み出すと、前の光が消える。

「メリア、どうしたのかな?」

『い、いやっ、あの…』

「中で話そうか?」

そうして、メリアは強引に中に手を引かれた。

(気まずい気まずい気まずい…)

首を全力で横に振って抵抗しながら、微笑むナウアールによって生徒会室に入ったのだった。


中にメリアが入っても尚、状況は変わらなかった。

ロヴィリアと少女をひたすら見させられるという地獄に、メリアは絶望を感じる。

『……これって、私、何を見せさせられているんでしょうか…?』

「うーん、面白い…幼なじみの戦い、かな?」

『…お、幼なじみの戦い?』

「うん、2人は幼なじみでロヴィリアは生徒会代表で、向こうの彼女は図書委員長。今は2人で対立してるから、幼なじみの戦い」

あとからナウアールに説明されても、どうしてこうなるのかが分からない。

『つまり…?』

「図書委員会がもっと目立つ事がしたいって生徒会に言ってるんだ」

これで、この状況、この光景が何なのか、ようやく分かった。

委員会同士の喧嘩だ。

(私っていていいのかな…?)

目を細めて現実逃避していると、あまり意識していなかった方向から声がした。

「…ルレードはいつもこうよ。周りもポーズも気にしないで男女問わず…」

思わずその方向にいる少女を見る。

メリアはその姿に、見覚えがあった。

金髪で、ラウィーヌと似た雰囲気のお淑やかな少女。

『あ、さっきの…』

「そうです。また会いましたね」

「知り合いかい?」

ナウアールが訊ねると、メリアは少女とナウアールを交互に見ながら答える。

『…さっき会っただけですけど…』

「はい、そして、すれ違いざまに見破られてしまいました」

(何か、言ったっけ…?)

記憶を辿っていると、少女は微笑んで言った。

「私が盲目、ということ、です」

(あ、そう言えば言ったな…)

『…本当なんですか?』

「はい。正真正銘、私は盲目です」

そう言いながら自身の目の直ぐ前で、手を上下させる。

『でも普通に空間認知はしていますよね…?』

「はい、補助視として空間視を使っていますから。他にも痛み止めや呪いの付与解呪等々…」

言うと、目の前の少女の手はロヴィリアを離し、盲目少女の方に向く。

「え、待って、ティレ。聞いてないんだけど!?」

「言ってなかった?」

「言ってないっ!」

とぼける盲目少女に声を荒らげる図書委員長の少女は、荒らげた息を抑えると深く深呼吸をする。

「いつの間にか見世物にされてたんだけど…。…まぁ、いいわよね。ふぅ」

これでカオスな雰囲気は無くなり、いつもの生徒会室に変わった気がした。

(…あ!これで、カオス現場から抜け出せる…っ!)

状況が落ち着いたことに気が付いたメリアが笑顔になると、図書委員長の少女がメリアを見て言う。

「…何よその顔。カオスが落ち着いたとか思ってる顔ね」

『い、いえいえっ!そんなことは…』

(ラウィーヌ様みたいに心が読める…?)

そう思っていると、少女は直ぐにロヴィリアの元に戻って言い合いを始めた。

「カオスなことは、見なくとも耳で分かるわ」

コソッと呟く盲目少女に、図書委員長の少女はまた声を荒らげて言った。

「それなら見世物にしないでよっ…!?」

「ふふっ、それなら私の目を治せるように努力することね」


生徒会室から抜け出すことが出来たメリアは、廊下を通って目的地に向かって歩いていた。

(学園祭の資料提出しなくちゃ…)

職員室に向かうと、扉を開けて教諭を呼び出す。

『…アントール先生はいらっしゃいますか?』

「科学研究室にいる筈ですけれど…。いなかったらまた来てください」

エウィルに言われると、メリアはそそくさと扉を閉めて早歩きで階段を上る。

(早く行って早く帰ろう…。うん、そうしよう)

途中、数人とすれ違うが、どれも3年生のカラーの刺繍のローブを着ている。

何かおかしい。メリアはそう思いつつ、2階階段を上るとその階の廊下に出る。

歩いて教室を探してみるが、何処にも〈科学研究室〉と書かれた教室が見当たらない。

(科学研究室って…、この階じゃないの?!)

気の毒だが、この階ではないようだ。

「降りないと…!……あれ?ここ、何階だっけ…?」

メリア・ファスリード、本日、迷子になりました。

アワアワと頭を抱えてウロウロとその場を行き来する。

しかし頭の中はパニック。そこにはメリア1人。

…詰みだ。

(えっと、これ、どうしよ…?)

メリアは何とか頭の中で解決策を編む。

「と、とりあえず下ればどうにかなるっ…」

そうして、階段目指して走っていった。


***


――嘘だ。嘘に違いない。

メリアはその場に立ち尽くす。

先程の緊張と恐怖は消え去り、そこにある感情は複雑だった。

目の前で行われている自体が理解出来ない。

現実であることが分からない。

呆然とするメリアの耳に、最後に入ってきたのはこんな言葉だった。

「…呪いだっ!」

庇う後ろにいたのは、腕に禍々しい呪魔術の模様が浮かび上がり、倒れ込むミレだった。

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