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星が瞬く夜に、願いを捧げます。  作者: 夜花みあな
第8章「学園祭準備編」
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【8章-1話】休日のお出掛け

 メリアが目を覚ますと、日が昇って辺りはすっかり明るくなっていた。

「おはようございます」

(…!?)

突然にラリアードが気配なく現れると、メリアに向かって挨拶をする。

「…おはようございます」

眠気が残っている目を擦り、挨拶を返すと今日予定していたことを思い出す。

(…あ、今日アリアと…)

「憎きアリア・ラクアレーン様と出掛ける日ですね」

ラリアードが言った通り、今日はアリアと城下街で出掛ける約束をしていたのだ。

(…お泊まり会を断ったからだけど)

メリアがお泊まり会に誘われたあと、断ってこの提案をしたのだ。

自業自得と言ったところだろう。

しかし時計を見ると10時を過ぎている。

集合時間は10時半。

城下街まではここから歩いて20分程度。

(今すぐ出ないとっ…!)

メリアは急いで身体を起こすと、素早くクローゼットを開けた。


(まさか、私が休みに友達と遊べる日が来るなんて…)

何とか外出届を提出し、寮を出たメリアは時間を見て胸を撫で下ろす。

あと10分程度ある。

もう一度言おう。10分程度だ。

歩きでは20分で着く。

…つまり。

(…歩いてちゃあ、間に合わない…っ)

そういうことになるなら寮の入口で待ち合わせしておけば良かったのに…、とメリアは反省する。

とても生徒会長に「この紅茶にそんなに価値があるんですね…」と言った人には見えない。

メリアは何かを思いつくと、ラリアードに訪ねた。

「飛行魔術って…」

「出来ません」

「そうだった…」

そんな茶番をして、メリアは絶望した。


――「メリア遅いわね…」

いつもより華麗な服を着ているアリアは、街の待ち合わせ場所である広場の時計を見て呟く。

今の時刻、10時40分。

ここから言えるのは、メリアは間に合わなかった、という事だ。

(折角コルセットもして、引っ張り出したワンピース着てきたのに…)

締め付けられる腹をさすって辺りを見渡す。

当たり前だが、メリアの姿は無い。

(…なにか暇潰しでもして――)

バッグの中をゴソゴソと手を入れると、ブックカバーに包まれた1冊の本を取り出す。

(今のうちに本の研究を…)

開きかけると、その場に強めの風が吹く。

『お待たせしましたっ…!』

なんと声の主はメリアだった。

様子を見ると、魔力の使用痕があったので飛行魔術を使って来たのだろう。

「遅いよ、メリア!」

アリアは本を素早くしまいながら、メリアを叱った。


――しばらく2人で街中を歩いていると、アリアの目にある店が止まる。

――仕立て屋。

(そう言えば、メリアってあんまり服持ってなかったよね…)

「メリア、あの仕立て屋、寄っていかない?」

訪ねると、メリアは驚いた様子でこちらを向き、返事をする。

『あ、はいっ…!』

「あそこ、確か行ったことあるのよ。ローブも作ってくれると思う。行こ行こ!」

(…大丈夫かな)

メリアの表情を気にしながら、仕立て屋へ向かっていった。


店を出てきたメリアとアリアの手には、大量の紙袋があった。

「―風魔術、第40章、風送り。―」

アリアが詠唱をして、手に持っている紙袋を一気に上空へ持ち上げる。

その隣にいるメリアの顔をとても疲れ切っていた。

(疲れた…)

仕立て屋の中でされた事と言ったら数え切れない事をされた。

採寸、服選び、服選び、服選び、服選び…。

殆どが服選びだった。

アリアがいたのが幸いなのか、気絶せずに店を出ることが出来た。

(ローブ以外にも買わされたけど…、何を買ったのかな、私)

「ごめんね、メリア。色々買わせちゃって…。でもこれ私の奢りだから!」

『奢り、ですか?』

「うん」

『本当ですか?』

「うん」

『えっ…?』

「あら、どうしたのメリア。慌ててなんかいて。あら、アリアもいるじゃない。〘煽り魔女〙様が」

アリアとの会話に割り込んできたのは、ラウィーヌだった。

「ひえっ…!?」

「あら、「ひえっ」とは失礼よ。〘煽り魔女〙こと伯爵令嬢さん?」

『〘煽り魔女さん〙…?』

メリアの頭に「?」が浮かぶ。

「そうよ。最終的にアリアの2つ名は〘煽り魔女〙さんになったのよ。我ながらに良い2つ名だわ」

「メリア、ラウィーヌが勝手に付けたやつだから気にしないで…」

『でも魔女ってこの国の言い方じゃあ無いんじゃ…』

言うと、ラウィーヌは分かりやすいように反応する。

そしてメリアに近付くと、メリアの口元に人差し指を当てて言う。

「メリア、そういうことは言わないのがいいのよ?1年先に生まれた先輩から言わせてもらうけど」

(…え、あ、そうなんだ…)

『分かりました…?』

「まぁ、いいけど。それより何なの?この大量の紙袋は」

ラウィーヌが浮かせている紙袋に指を差す。

「メリアの服だけど、何かあるの?」

「…へぇ、そうなのね…」

ラウィーヌが口端を上げてニヤけると、後ろを向いて誰かを呼ぶ。

「ロヴィリア、ちょっと来てくれない?」

「おいおい、俺は使用人じゃあねぇんだよ…。あ、ファスリードとラクアレーンじゃあねぇか」

『こんにちは…』

「こ、こんにちは…」

メリアとアリアが挨拶すると、ロヴィリアは軽く頭を下げる。

『今日はどうしてこちらに…?』

「父の経営してる工房がこの近くだから、差し入れがてら買い物に…と思って」

(ロヴィリア様のお父様…)

メリアは頭の中で想像した。

アリアの父はアリアによく似ていた。

きっとロヴィリアもそっくりなのだろう。

(髭が生えてて、短髪で、ちょっと吊り目で…)

『よく似ていますね…!』

「見てないだろ」

ロヴィリアの言葉で、メリアの頬は直ぐに赤らんだ。


「ありがとうございます。荷物持ってもらって…」

「いいや、いいんだ。なんならこいつに謝ってもらいたいんだが」

結局、ロヴィリアが無駄に魔力消費をしないように紙袋を持ってくれていた。

ロヴィリアが皆を見守るラウィーヌを指差すと、ラウィーヌはこちらに歩み寄って、ロヴィリアと目を合わせる。

「心理操作、かけられて欲しいのかしら?」

「…あぁ、もう容赦ねぇな。嫌だよ嫌」

「あら、残念」

その2人の会話は恐ろしく、メリアは息を飲んでいた。

『今日は、ありがとうございました…!また明日、ですかね…?』

(あまり会いたくないけど…)

「あら、また明日なんて言わず、ずっといましょうよ。メリア?」

「すまない、ファスリード。こいつはエイラにもこうで、気に入ったやつにはこうやるんだよ」

ロヴィリアが説明をしてくれたが、メリアは苦笑いのまま丁重に断る。

『アリアと、帰りたいので…』

ラウィーヌはその言葉に反応すると、大きく2歩下がり一言メリアに言う。

「大切にしなさいよ。…じゃあまた、…学園祭準備で。ほらロヴィリア。行くわよー」

「だから俺は使用人じゃあ…っ」

それだけ言って2人はその場を去っていった。

その後、メリアはラウィーヌの言葉に気が付いた。

(学園祭準備って…、え?)


長い秋の始まりを告げる出来事だった。

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