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星が瞬く夜に、願いを捧げます。  作者: 夜花みあな
第7章「魔術試験編」
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【7章-12話】進む運命

 やがて時間が過ぎ、空は夜になって暗くなる。

空を見上げても、ルートゥが言っていたような「星が降る」というようには星はあまり見えない。

ルートゥが言っていた「星が降る」は、別の意味があったのだ。


――呪操族。

山羊のような角を持ち、身体の何処かしらに特定の紋様が浮かび上がっているのが大きな特徴だ。

名前の通り、呪いを操る魔族だ。

呪操族と人間との関わりも、他の魔族より比べると段違いに深い。

その点については、呪操族は人間との関わりが深く、そして信頼している。

人間との関わりが深ければ、問題事は当然にある。

信頼していれば尚更だ。

悪党でも、正義でも、必ず人間と関係を持つ魔族はついて行くのだ。


話は戻るが、「星が降る」というのは主に星に関係がある魔族が使う言葉である。

呪操族もそうだ。

この魔族は、星を辿って呪いを操るのだ。

彼らが使う言語は「呪霊語」であり、「星が降る」は呪霊語から精霊語、フィーライト王国語に単純翻訳した言葉である。

今まではそのままの意味で使われていたが、とある魔術師によって解読がされた。

解読した魔術師はこう言ったそうだ。


――「災いが起きる」と。


「…メリア。中に入っちゃっていい?」

扉が開き、マリアーンが顔を出す。

『どうぞ…』

「マリアーン様、私が開けさせて頂きます」

「ありがとう…、メリアの精霊さん?かな」

『はい、そうです』

マリアーンは、中に入るとメリアのベッドに腰を下ろす。

「そうだ、メリア。学校の売店でコーヒー買ってきたんだけどどうかな?」

そう言って手に持っていた紙袋をメリアに手渡す。

中身を見ると、粉末状になっている黒っぽい茶色の粉が見える。

メリアが知っているのは、何もされていない豆のままのコーヒーの豆だ。

『これがコーヒーですか…?』

「うん、そうだよ?これなら簡単に作れると思って」

メリアがマリアーンのコーヒーを見ていると、マリアーンはメリアの顔を覗き込む。

「…メリア」

『はい……?』

「顔色悪いよ。なにか飲もう。…あ、折角だからコーヒー飲んでみたら?精霊さんに頼んでさ」

マリアーンはメリアの額を触る。

(何だか…、不自然だな…)

メリアは具合が悪くなければ、気分も悪くない。

『飲んでみます…』

「精霊さん、お願いしても良いですか?」

「かしこまりました」

そう言ってラリアードが淹れに行った。


しばらくして戻ってくると、メリアはラリアードからマグカップを受け取る。

「…どうぞ」

『ありがとうございます…』

自分の方に寄せ、香りを嗅ぐと思った通りのコーヒー特有の苦い香りがする。

(…あれ?こんな香りしたっけ)

苦い香りの奥に、別の苦い香りがする。

「どうしたの?メリア」

『あ、いや大丈夫ですっ…』

(まぁ…、飲んでみよう)

口元に近付けてマグカップを傾ける。

1口飲んでみると、舌にほのかに苦い味が伝わる。

(おいしい、かも…!)

もう一度マグカップを傾けようと手を動かす。

しかし、不意に手がガタガタと震えだす。

「えっ…?」

声が漏れる。

片方の手で抑えようとしても、手を自由に動かすことが出来ない。

「メリア…?!精霊さん…?」

マリアーンがメリアを抱えながら、ラリアードの方を見る。

「…はい?」

「精霊さんがやったんですか…?!」

「…そうですね」

(えっ、まさか…)

メリアもラリアードの方を向くと、ラリアードは無表情な目を細めて言った。

「…なんて言うと思いましたか。――今すぐメリア様から離れてもらっても?」

「はぁっ?!」

『ら、ラリアードっ、まさかっ…』

ラリアードがマリアーンの方に手を伸ばすと、魔法陣が展開され、発生した星屑がマリアーンの方に向かう。

「―、――!」

陰から飛び出したルートゥがマリアーンを取り押さえる。

「…ルートゥっ!何でっ」

『マリアーン』

「何よっ…、メリア」

抗うマリアーンにメリアは沈痛な面持ちで言った。

『弟さんは…』

「…そう、気付いてたって事ね…。ならっ!」

手を伸ばしてメリアの頬を掴む。

『何です…っ』

「そうよ、私がやったわよっ。あんたを殺す為にねっ…!」

マリアーンは何やら詠唱をする。

(目が眩む…)

目を瞑ると、マリアーンは頬を掴む手の力を強める。

「…その手、離してもらっても?」

星屑がマリアーンの周りを囲うと、ラリアードは手を握り締める。

すると、星屑が一斉にマリアーンの身体に貼り付き、自然とメリアはマリアーンから離される。

首元を触ると、黒い紋様が浮かんでいる途中で、詠唱が邪魔されたことで効果が無くなる。

「…メリアっ。私はあんたのことっ…、なんて…」

『マリアーン、学園崩壊を目論んでも…、今は早かったんです…』

「…っ?何で、私の目的を知って…、…っ!」

『弟さんから聞きました。マリアーンの目的を』


『…そして、貴方の過去も。…マリエットゥ』


――私、マリエットゥはフィーライト王国北部にあるアバント領とシルバード領の境にある、ワーデス山脈付近の森で暮らしていた。

私には兄が1人、弟が2人、妹が1人の兄弟がいた。

呪操族である私達は、兄弟の他に家族や親戚20人程度の集団でひっそりと身を隠していた。

母はよく人間の話をしていた。

――「人間の言うことは正しいの。信じていいのよ」

その言葉に違和感があった。

身を隠しているのなら、人間に嫌われているのでしょう?何で信じるのですか?

そんな疑問と、まるで従わされているような、そんな違和感を感じた。


ある日、母が山菜を採りに山を登りに行って少し時間が経った頃、母が帰ってくる背後に、馬に跨った集団がついてきていた。

「ついてこい」

そう言われてついていったのは、ベルリガ監獄。

家族全員連れてこられ、監獄に入れられた。

家族はそれぞれバラバラの部屋に入れられ、私は弟の1人ルートゥと一緒の部屋に入れられた。

ルートゥは兄弟の中でも大人しく、呪いも含め、私と同じような魔術を使えた。

「ここから抜け出そうよ」

話がされない為、2人で夜な夜な脱獄の決断を固めていた時、突如私1人だけ檻から出され、私達を捕まえた者の前に突き出された。

言われたことはただひとつ。


――「レイランド学園を崩壊させろ」――


成功させれば、必ず家族を助ける、と。

既に2人失敗に終わっているらしく、私は家族を解放したい気持ちと、興味で作戦に協力することにした。

これで脱獄しないで家族を助けることが出来るかもしれない。そう思った。

姿を変えてもらい、偽名を使って入学し、覚えた魔術でメリアを助け、信頼を得り…そこまでは順調に進んでいた。

信頼を得たメリア・ファスリードが使う魔術を利用しようとするところまで来た。

しかし、その後が実の弟の間抜けな告げ口によって終わる。

家族も、私に託された学園崩壊も。

何一つ達成出来なかった。

全て母の言葉を信じたのと、弟が勝手に行動した結果だ。


「ルートゥ…」

マリアーンの姿は加工されてたものから変わり、ルートゥとよく似た姿に変わる。

その場にへたり込むマリアーン

メリアはその様子を見て優しく包んだ。

「…恨まないでください。誰も悪くないんです…」


この言葉が、家族の記憶が無く、孤児院を出て記憶改変魔術をかけられた少女の、精一杯励ませられることだった。


数日が経つと、マリアーンはレイランド学園から姿を消した。

(…退学だろうな)

メリアは大方予想はついていた。

ルートゥには「自分から話に行きます」と言われ、それから2人には会っていない。

「あの時、私が願っていたら…」

その言葉が聞こえていたのか、アリアは堪えるように言った。

「時は止まることなく過ぎていくの。メリアの思っていることは分からないけど、運命なのよ」

アリアの言葉で、メリアは胸の中で祈った。


――たった数週間の仲の友人へ。

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