【7章-11話】魔術試験〈後編〉
――「―火魔術、第32章、冷火っ。―」
「―炎魔術、第89章、静炎の魂。―」
試験が始まり、お互いのグループは交互に攻防を繰り広げる。
思ったよりバランスが取れていて、連携には文句は無いが、ひとつ気になることがあった。
(連携は取れてるっ…。だけど…)
(決定的な攻撃が出来ないっ…)
「―炎魔術、第4章、燃炎。―」
「―日魔術、第37章、日に咲く花。―」
圧倒的な手数でメリア達は押され続ける。
先程から個人で相手に攻撃を仕掛けるばかりで、合わせ術は何も出来ていない。
メリアは状況を確認すると詠唱をした。
「―雷魔術、第56章、絶雷。―」
相手にはアリアもマリアーンもいる。
(早く終わらせたい…)
魔術師たる者、必ず長期戦はなるべく避けたいと思っている筈。
メリアは一筋の雷を地に響かせると、グループ全員に伝言を伝える。
『……提案なのですが、連携技をしませんか?』
「っと。あぁ、いいぜ」
「いいぞ」
「分かった」
全員が返答すると、ソールが相手の攻撃を受け流しながら、ある疑問を投げかける。
「連携技ってどうするか。最大火力で攻撃したいんだが…。ちっと考えてくれねぇかい?」
『了解ですっ』
(…全員が最大限に引き出す魔術…)
飛行魔術で風魔術の斬撃を掻い潜りながら、方法を模索する。
「―火魔術、第4章、連火柱。―」
「―風魔術、第43章、斬風。―」
「―星魔術、第94章、流れる光星。―」
(……!)
それぞれの詠唱で分かった。
そして、最高に高火力で最大限に全員の力を引き出すことが出来る連携魔術が浮かんだ。
――大魔術だ。
大魔術でそれぞれの力を使って、合同魔術を作り出せばいいのだ。
考えが浮かんだ時、同時に問題も発生した。
(残りの属性はどうしたらいいのかな…?)
大魔術は全属性を網羅した後、放出する魔術。
残りの属性も補わなければならないのだ。
あれこれ考えている内に、攻撃で押されていく。
思ったよりもアリアやマリアーンの押す力も強い為、今すぐ案を出さなければならない。
(私が補えば…っ)
「―地魔術、第31章、揺らぐ地表。―」
アリアの地属性の攻撃を避ける際、ナウアールの横をすれ違うとナウアールはメリアの肩を押す。
「術式を編んでみる。メリア、少しだけ時間稼ぎお願いするね」
『はいっ…?』
ナウアールの方向をもう一度見ようと振り返ると、ナウアールはもうそこにはいなかった。
当の本人は端の方に寄って術式を書いていた。
片手は素早く古代語を1文字1文字綴り、片手は綴った文字を追っている。
(私がアリア達を止める…)
ナウアールを横目に、メリアは詠唱をする。
「―水魔術、第48章、水壺倒鉢。―」
アリアの攻撃を受け止めると、後方に向かって下がる。
ソールやディアブも、マリアーンや他の2人の攻撃を受け流している。
(次はっ…!)
次の一手を決めようと杖を向けると、ナウアールの呼ぶ声がした。
「皆っ、得意属性の魔術の魔法陣を展開して…!」
「あいよっ」
「わかったっす!」
『分かり、ましたっ…』
詠唱をして魔法陣を展開すると、ナウアールは空高く手を伸ばし、メリア達よりも遥かに長い詠唱をした。
「―ディレ、サース、ルビィレント、イースト、カルア―」
途端、四筋の光が地に向かって降り、相手の身を光が包む。
「ちょっと待って待って!?聞いてないって…!?」
「…ここで、か」
アリアとマリアーンが言うと、ナウアールはその後続けて詠唱をして言った。
「言う暇があるなら、反撃した方がいいね」
アリアは「あっ、」と呟いた。
――「試験、結局どっちも合格だったね。…でも負けたのに合格って何かなぁ…。マリアーンも思わない?」
アリアが頬杖をつきながら言う。
試験が終わり、1週間程経って来た通知書には、アリアもメリアも〈合格〉と記されていた。
「私も合格してたし、基本って取りやすいのかもしれないね。でも私は合格してれば何でも良かったし」
マリアーンも合格だったようだ。
メリアはスカートの裾を握ると、マリアーンに言った。
『マリアーン、今日私の部屋に来てくれますか…?』
「…うん、分かった!行くね!」
「えぇ〜、メリア、私もついて行っていい?」
『すみません…、今日はマリアーンと話したい事があって…』
控え目にアリアに断ると、メリアは一段と凛々しい表情で言った。
(…今日話さないと)
『…大事な話なんです』
「そう、なのね」
アリアはこれ以上詰め寄ることは無かった。
「メリア様。お疲れ様です×∞回目です」
ラリアードが契約石から現れると、突然おかしな事を言った。
「ラリアード、それってボケているんですか…?」
「至って真面目でございます」
「そうですか…」
精霊は無表情なので、冗談を言っているのか本音を言っているのか分からない。
(真面目…、って言うことにしておこう…)
メリアは荷物を机に置くと、窓の外を眺めているルートゥの後ろに近付く。
「ナイティー、ルートゥ」
「…ナイティー」
こちらを見ず、外を見つめるルートゥは落ち込んだ表情をしていた。
「ラリアード、毎度悪いのですが翻訳をお願いします…」
「承知致しました」
ラリアードが返事を返すと、メリアはルートゥの肩に手を置く。
「…大丈夫です」
出来るだけ柔らかい声でメリアは言うと、ルートゥは小さく呟いた。
「コニーフ、ルハマ、ブルベール…」
「……メリア様」
「何ですか…?」
ラリアードは窓の外を見て、メリアに告げた。
「今日は星が降るそうです」
(…っ)
隠された意味に、メリアは小さい拳を握りしめた。




