【7章-10話】魔術試験〈前編〉
――「メリアって、変だよね」
その言葉で目が覚めた。
声の主らしき人物は外でも傍からでもいない。
というか人がいない。
(……久々に聞いたな、そんな言葉)
起き上がり、そのまま何もせず一点を見つめていると、何処からスタスタと小走りでこちらに向かってくる足音がした。
「…ブリアンティ、ローズ。ルートゥ」
「ブリアンティ、ローズ。…メリア」
魔族の短期間同居人、ルートゥに挨拶をする。
結局、1週間以上経ってもルートゥが確信する者はいなかった。
そして今日は、ルートゥと姉探しを始めてから10日を迎えるのと、待ちに待った魔術試験の日だ。
「…ラリアード、翻訳お願いしていいかな…?」
「承知致しました」
契約石からラリアードが現れて、ラリアードはルートゥの隣に控える。
「…今日、魔術試験があるけど…。視覚共有はする?」
メリアが訊ねると、ルートゥは何かをラリアードに伝え、ラリアードが翻訳してメリアに伝える。
「…お願いしたいそうです」
「分かりました」
メリアはベッドから重い身体を持ち上がらせ、伸びをする。
そして自身の胸に手を当てると詠唱を始めた。
「―視覚共有。―」
魔法陣が展開され、メリアを光が包む。
しかし、直ぐに光は止んだ。
特にメリアに変わったところは無い。
メリアは左目に手を当てると呟いた。
「これで早く見つかるといいな…」
試験会場に着いたメリアは、緊張で手が震え、まともに喋れる状態では無かった。
(…基本だから簡単だと信じてるから大丈夫だと思うけど、…どうしても怖い…)
どうやら、メリアが感じていた感情は緊張ではなく恐怖だったらしい。
周りにはレイランド学園の生徒以外にも、一般の平民程の人間や小さい子供もいる。
久々の緊張に、入学式のことを思い出す。
「校門前で蹲ってたっけ…。生徒代表挨拶、原稿考えてなかったから孤児院長の真似して…」
数ヶ月前のことだが、今のメリアには随分と懐かしく感じる。
誰にも聞こえない、呟くような声で懐かしさを思い出していると、聞き慣れた少女が自分の名を呼ぶ声がした。
「メリアー!」
アリアだ。
アリアに気付いたメリアは、緊張して震える手を押さえ、言葉を返した。
『アリア、おはよう、…ございます…』
「おはよー!」
メリアの表情は、柔らかな雰囲気に変わったような気がした。
――第1次試験、筆記試験終了後。
(案外対策しておいたところ出て良かった…)
何とか習得した精霊語の挨拶が10点程付けられていた。
魔術試験は150点満点で合格不合格が分かる。
1問でも1点でも落とすと、それが命取りになるのだ。
メリアとアリアが会場を出ると、真っ先にアリアがメリアに結果を訊ねる。
「どうだった?私、結構自信あるんだよね!」
そんな定番の質問に答える。
『…私もかな』
「それなら大丈夫そうだね。次の会場に行こう!」
『…うんっ』
前の試験生の後をついていき、第2次試験の会場へ向かった。
――第2次試験、開始直前。
集まったメリア達の前に、試験監督の魔術師が立つ。
「試験内容は、連携と個人対戦です。担当代わりまして――」
横に2歩下がると、隣にいつの間にか姿を現していた――星属性最高魔術師が魔術師。タビアスト・ディア・スウェディ。
「早速、連携の試験を行うので分かれて試合を開始しててくれ。話はそれからだ」
そして皆は紙に記された班に分かれた。
メリアの班は4人グループで、残りの2人は知らない者だった。
……残りの2人は。
(おかしいですよね?そうですよね?間違いですよね?)
自分にそう言い聞かせる。
だが、努力も虚しく班員は合っていたようだった。
1人は細身の女性で髪を上げて縛り、団子にしている。
もう1人は、ナウアールより若干年上のような青年で、短髪。メリアより少し年上に見える青年だ。
「軽く自己紹介をしておきましょう。流石に知らないで受けたら、ろくな結果になり兼ねないですから。僕はナウアール・スウェディ。レイランド学園高等部3年で星属性が得意属性です」
メリアの知人、ナウアール・スウェディが指揮する。
「そうだね、じゃあ次はあたいだね。あたいはディアブだよ。得意属性って言えばいいんか。得意属性は火だよ」
「俺はソールだ!得意属性は風だ!」
(その見た目で…?)
「…ありがとうございます。じゃあ次はメリア、お願い」
『えっと…。メリア・ファスリードです。得意属性は星属性が得意属性です…』
「へぇ、あんた魔術上手いんやねぇ」
ディアブが輝かせながら結界を見つめる。
『い、いえ…。大したことは…』
「すげぇな!俺らとは大違いだ!?」
ソールも続けてメリアに詰め寄る。
ナウアールが様子を微笑んで見ていると、ある場所を見て皆に知らせる。
「…そろそろ始まる頃だ。相手は…あの4人のようだね」
ナウアールが差した方向を見ると、メリアは驚愕した。
差したグループはアリアとマリアーン、その他の2人だったからだ。
信じられない光景に、メリアは腰を抜かす。
手が相手の方に伸びるが、自分で抑える。
それを見たソールはメリアを抱き起こす。
「大丈夫か?」
『はいっ』
(…え、今私……)
自分の行動ではない行動に驚くメリアだったが、相手の1人の試験者は容赦なく宣言した。
「鐘が鳴ったら試験を始めましょう」
同時に、10時を告げる鐘が鳴った。
(これ、相手の方々見越してたって…!)




