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星が瞬く夜に、願いを捧げます。  作者: 夜花みあな
第7章「魔術試験編」
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【7章-8話】王国史知識皆無、メリアさん

 帰り、メリアは担任のエウィルに申し込み用紙を手渡すと、荷物を持って教室を出た。

「それで、メリアは何にしたの?」

廊下の壁際に寄りかかっていたアリアが訊ねる。

メリアは立ち止まって間を開けると、地面を踏み締めて言った。

『基本ですっ!』

「…そう」

笑顔を浮かべると、アリアは駆け足でメリアの先に行く。

「お互い、頑張ろうね…!」

『はいっ!』

2人はそれぞれ笑顔で廊下を歩き出した。


翌日、メリアが王国史科の授業を受けている最中だった。

何となくノートにメモをしていつもと同じようにしていると、教科担任のイーティ・アントールは言った。

「――この種族の所はよく覚えておいてくれ。あとそうだな…、精霊語位は覚えた方がいいかもな」

(え、え?)

思わずペンを落とすと、同時に授業終了の鐘が鳴る。

メリアの心の中では悲鳴が響いていた。

「メリア、どうしたの?珍しいじゃない」

『あ、あっあのっ…、種族とか名前を覚えるのが苦手で…』

「魔術の詠唱とかは覚えているのに?」

『うぅ…』

メリアは蹲って呻く。

種族や膨大な知識を詰め込むのが苦手なのだ。

メリアでも、時間が無限にあれば多少は覚えられる。

それが通じたのは孤児院にいた時までだった。

『でも、有名な人とか出来事だったら、分かる気がしますっ』

蹲るのを見たアリアは訊ねた。

「じゃあ問題ね。初代フィーライト王国の国王は?」

『えっと…?』

「初めて魔術を作った人は?」

「国民に魔術を使えるように改革した人は?」

「それをなんて言う?」

『えっと…』

「だめね、これは。王国史の知識皆無だわ」

諦めると、メリアはアリアに訊ねる。

『もしかして…、魔術試験に王国史科って…?』

「筆記試験には参考程度にあったと思うよ?」

(終わった…)

絶望と共にメリアは闇底へ落とされた気分になった。

「ねぇ、何の話してるの?」

「アリアがなんかしたか?」

メリアのところに来たのはマリアーンとレジリア。

マリアーンは教科書の種族のページを見ると「ふーん」と言って目を逸らす。

「これからも必要になってくるから覚えた方がいいよ?特に種族とかは、って父上が飽きる程言ってるよ」

最高魔術師が言うのであれば本当なのだろう。

(でも…どうやって覚えたら良いのかなぁ…?)

覚えないにしても、定期試験で落とされることはあるのかもしれない。

『誰かがやってくれたらいいのに…』

メリアが頭を抱えると、手を叩いてアリアが提案をする。

「そうよ、お泊まり会をしましょうよ!それなら私も覚えられるし、メリアも楽しく覚えられるじゃない?」

『お、お泊まり会…?』

メリアは驚きが隠せなかった。

ポカンと口を開けて固まっていると、続けてアリアが言った。

「それで、外出届書いて街に買い物に行って、魔術書とか服とか買いに行って――」

「メリア、頑張れ」

『はいっ…』

早口で喋るアリアを見ながら、レジリアに返事をしたのだった。


「メリア様、何度目かのお疲れ様です」

「ありがとうございます…」

扉を開けられて、メリアは部屋の中に入る。

「またあのアリア・ラクアレーン様が無茶を言っておりましたね。…今度木にでも吊るしときましょうか」

「やめてください…」

(断っておいたから大丈夫だと思うけど…)

ラリアードが言うことは、全てやりそうな予感がする。

精霊は感情が分からないので、冗談は滅多に言えないのだ。

「そう言えばですね。メリア様」

ラリアードが言うと、掌に魔法陣が浮かび上がる。

「ここ数日、学園の結界を見ておりましたが、誰かが結界を破って中に入って来ました」

「詳しく聞いても良いですか?」

「はい。今私が言った通り、学園の結界に穴が空いていました。女性人1人が入れる位ですかね。この位の」

手で形を見せると、ラリアードは続けて話す。

「魔力量は極めて少なかったので人間か或いは…」

「そういった魔族とかですか?」

「恐らくは、ですかね」

聞くと、メリアは窓際に肘を置いて外を見渡す。

(そうだったら危ないのに、結界が反応しないってことは…)

「戦う意思が無いんですね。その人は」

(でも学園の結界は重固結界だったし、簡単には破れない筈…。防御結界も張ってあった筈だし…)

メリアが呟くと、ラリアードは窓際に歩いていきメリアに向かう。

「結界魔術とは、確か親族であれば校門は開くんでしたっけ」

「そう。ラリアードが感知したのはどこら辺か分かります?」

「…校門の近くでした。詳しく言えば校門横の草むらです」

メリアはそれを聞くと、学園の結界に雷魔術の攻撃をする。

しかし、中からは攻撃が吸収されるみたいだ。

攻撃は無残に吸い込まれたように消えていった。

(内側からは攻撃出来ない…)

メリアは顎に手を当てて「うーん」と唸る。

すると起きてはならない事が起きた。

「夜分遅くにこんばんは…」

窓の外から聞こえてはいけない声がした。

「嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌」

メリアは最高速度で走ってベッドに潜り込むと、間から顔を覗かせる。

「こんばんは。どちら様でしょうか?」

ラリアードは声の主に向かって訊ねる。

「トバー、イジア…。ルー、ティアン…あ、えっとすみません。僕はルートゥです」

声の主を見ると、その姿はあまりにも人間とはかけ離れていた。

全体的には人型をしているが、頭の右側には折れた山羊の角のようなものがあり、首には痣のような紋様があった。

「…もうお姉さんしか頼めないんです」

「え、いや、え?」

「それならば話をお聞き致しましょう」

戸惑うメリアの前で、ラリアードは坦々とルートゥの話を進めるよう促した。


「ナルア、ぺーラ、ルブェント、ルール・アズバン…」

「タダルア、イール、トゥヘア…」

メリアが聞き取れるのはそんな言葉だった。

しばらくラリアードとルートゥは話していたが、突如メリアに向かって翻訳をしてくれた。

「この国の言葉はあまり分からないので精霊語で話させてもらっています。お願いなのですが、僕の姉を探してもらえませんか?、だそうです」

(良いって言っていいのかな…?)

「……良いですけど、姉、とは?」

「…マリエットゥ、らしいです」

(マリエットゥ…)

頭の中を探しても、それらしき名前は聞き覚えがない。

「…確か偽名を使って入っていたかも、と」

「その偽名は分かりますか…?」

「分からない、らしいです」

手掛かりが無ければ、探し出すことも儘ならない。

メリアはそれより確認したいことがあったので、ルートゥに近付く。

「…どうしてここにいるんですか?」

ルートゥは思ったよりも早く答えた。


――「リュリア、ハーべ、プルベル、アントー。」

〈姉を止める為です。〉

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