【7章-6話】魔術試験決めと、頼みと
フィーライト王国では1年に4度、魔術試験が行われる。
魔術試験とは、魔術師になる為に絶対必須の資格、魔術取扱免許を取るための試験である。
魔術取扱免許も、段階が幾つかある。
基本、単属性、総合だ。
基本は魔術師学園中等部卒業程度の基本魔術を、日常で扱うことを許される。
単属性は、14属性ある属性の中から1つ、自由に扱うことを許される。
総合は、ありとあらゆる属性、召喚を禁止されているもの以外なら扱うことを許される。
だが、難易度が尋常じゃない程高い。
基本を取れば、魔術師と言っても嘘にはならない。
つまり、魔術師を目指す者は、数週間後に控えた試験を受けるのだ。
――それはレイランド学園も該当する。
「今配る、魔術試験の申し込み用紙を書いて、今日中に提出して下さい」
担任のエウィルが配ったのは、魔術試験を受ける為の申し込み用紙。
ほぼ強制というか強制だが、申し込み用紙は書かなければ、当然試験は受けられない。
クラスメイトが次々と提出していく中、メリアはどの試験を受けるか迷っていた。
(迷うけど…。魔術師になりたい訳じゃないし…、単属性の試験を受けようかな…。……でもなぁ…)
ペンを握って頭を悩ませていると、後方からアリアがメリアに声を掛ける。
「今日中って言ってたから、また後で出そう?私、相談したいと思ってたし」
『…うん』
ペンを置くと、メリアは選択欄を見つめた。
「あら、メリア。迷っているらしいわね、何で迷っているのかしら?」
廊下で思わぬ人物と出会った。
ラウィーヌ・ホリベリアン。
無表情少女で有名な2年だ。
ラウィーヌは口端を持ち上げると、扇子で口元を隠し、メリアの手を取る。
「え、ちょっとラウィーヌ?!」
「あらぁ…?」
その場にいたアリアとエイラがその後を追いかけて、メリア達は思わぬ場所に移動した。
「生徒会室よ。さぁ、皆入りましょう?」
圧に押し潰されて中に入ると、当たり前にナウアールが正面に、ロヴィリア、スアラ、ユベリアン、サリアル、その他2人の生徒会役員がいた。
「スアラ姉様、少しいても?」
「良いけど…。ラウィーヌ、最近連れ込みが多いわね。試験勉強頑張りなさいよ?」
「メリアが決めてから決めるわ。勉強は頑張るけれど」
「…そう」
2人の会話は何故か冷たく感じる。
(仲悪いのかな…?)
不思議に思いながら足を踏み入れると、ナウアールは微笑んで案内する。
「ここに座っていて」
『ありがとうございます…』
先日と同じ様に座ると、ロヴィリアが手持ちの資料を見ながら言う。
(何だか、集まりみたいになっちゃってるなぁ…)
「ファスリード。病み上がりだから絶対に気を付けろ。……分かったな?」
『はい…?』
答えると、ラウィーヌは構わず話を進める。
「魔術試験ねぇ、総合の方がいいと思うけれど…、初めてなら基本の方がいいわ」
『それはなんですか?』
「理由は無いわ。それに、また先だけど特派員の話があるし、学園祭を行うならば取らないといけないわ」
(特派員…)
メリアは前に特派員として、アバント領の討伐退治をした。
それも理由なのだろう。
「なんで言っちゃうんだい?ラウィーヌ」
「隠し事はしたくないので」
即答するラウィーヌに、メリアはまたもや圧倒される。
「そうね、基本は取っておけば属星魔術使い様の選抜も受けられるし…」
「研究所にも入れるわよ」
研究所とは、王国立研究所のことだ。
魔術から生活、騎士の強化等、何でも研究できる。
けれど、それにはレイランド学園を卒業しなければならない。
「わたしの将来の夢をサラッと言わないで頂戴、ラウィーヌ」
エイラの放った驚きの言葉に声が出なくなる。
『エイラ様の将来の夢…?』
「…そうよ。研究所に入って魔術担当教授になることが夢」
将来の話はある程度は聞いていたが、エイラのお淑やかな見た目とは反して、頭脳系の研究所とはある意味凄いとメリアは思った。
「まぁ、さて置いて今はメリアの受ける試験を決めるのだから、今回皆受ける試験を言っていった方がいいんじゃあないかしら?…生徒会役員もね」
「僕も?!」
スアラの提案で、皆が自分の希望した試験を言うことになった。
決まって直ぐ、ナウアールは初めに言う。
「僕は属性は全て取っているから、基本」
「俺は雷属性の単属性」
「私もナウアールと同じく、基本」
「私は氷属性の単属性」
「僕は…、基本ですねぇ」
「私も基本よ」
「炎属性の単属性」
「水属性の単属性」
「私は、基本かな?また変えると思うけどね」
ナウアール、ロヴィリア、エイラ、ラウィーヌ、ユベリアン、スアラ、他2人、アリアの順で言う。
(…単属性も多いな…)
『でも基本の方が全体的に扱うことが出来るんですよね…』
「そうだね」
『ということは私が使ってる魔術は単属性の方が使用許可を正式に貰えるし、そっちの方が得な…』
「うんうん」
「メリア様は随分悩みますね」
(だって…)
メリアが思っていた結果とはまた違った結果になり、メリアは更に頭を悩ませる。
「ていうか、ナウアール。早く決めた方が良いわよ。これは本題じゃあないんだから」
ラウィーヌはそう言うと、ナウアールへ視線を向ける。
『でも私、基本の程度が分からないから取っておいた方が…。……え?』
「そうだね。…じゃあお願いから」
戸惑うメリアだったが、ナウアールはこの時を待っていたかのように手を組む。
「――学園祭のフィナーレ。メリアが飾ってくれないかな?」
(……)
メリアは久々に気絶しそうになった。




