【7章-5話】新たな思いと出会い
家族という物は、どういう物なのだろう。
メリアはふと思った。
きっかけは、孤児院に居座っていた頃から思っていたのかもしれない。
けれど、真面目に思ったのは記憶改変操作で自分の記憶に触れた時や夢を見た時だった。
どれを考えても温かく、そして幸せに見える。
メリアはその中でも、自分に似た少女の中に憑依した時や、夢の中で魔術師さんの話を聞いた時が、初めだった。
自分に似た少女は、自分の父親や母親に暖かく接してもらい、幸せに暮らしていた。
魔術師さんの話では、母親やしき人物がお話を聞かせてくれた。
そこで、メリアは家族に興味が湧いた。
ただ、メリアの実際の記憶にあるのは孤児院での生活のみ。
それに、本当の両親か分からない。
記憶改変操作で見せられた記憶も、本当なのかさえも分からない。
それでも、1度興味を示したものについて、メリアは考える。
まず、メリアは家族について考えてみた。
唯一、メリアが家族について触れていたのは小説位だった。
ある話では父という男が家族養う為に働き、母という女が家で家庭を守り、子供らが遊ぶ。
またある話では、夫婦が幸せに暮らす。
各々の話の中では、そういう様な物が描かれていた。
そういう所から考えると、メリアには、ただの幸せそうな血縁関係にある人々だと解釈するしかない。
イメージとも掛け離れていてよく分からない。
――ある夢で魔術師さんの話を聞いた時、幼い少女の中に意識が宿った時、魔術をかけられた時。
記憶の中の人物は誰なのか。
友達の温かさと家族の温かさは違うのか。
家族というものを知りたい、分かりたい。
分からずとも、その真実と共に過去を知りたい。
そんな思いがメリアの胸を脈打たせ、今日もまた星空に願う。――
「メリア!ちょっとこっちに来てくれる?」
気が付くと、メリアは教室の自席に座っていた。
アリアがメリアに声を掛けて手招きをしている。
(行かないと…)
立ち上がってアリアの方に向かう途中だった。
身体がやけに重く、そして頭がクラクラする。
(魔力量上昇症状…?)
最近習ったばかりだが、覚えている限りでは症状が魔力量上昇に酷似しているのだ。
主な症状は頭痛、目眩、倦怠感、――記憶障害。
(魔力、使ってないから…?)
「あっ、メリア?!」
「―風魔術、第101章、舞い上がりっ―」
アリアが手を伸ばすのと同時に、横から誰かの腕が伸びる。
少女が詠唱すると、風が吹いてメリアの身体を起き上がらせる。
「おっとっと。…大丈夫?平気?」
手を伸ばしたのは活発そうな少女。
(あ…、どう返事しよう…)
詠唱や言葉を発しないと決めたメリアは、返事が出来ない。
「……あ、メリアって言ってたよね。アリアから聞いてる。記憶が混濁してるってねぇ…。……私なら、記憶に干渉さえさせてもらえば纏めることは出来るけど…」
「マリアーン、メリア戸惑ってる。それに、返事出来ないからね?」
「あぁ、そうだった!ごめんね、メリア」
メリアはペコペコとお辞儀をして感謝を伝える。
「あ、まだ名前言ってなかったね。私、マリアーン・リアメント。メリア、宜しくね!」
変な表現だが、明るいオーラが出ているが、メリアの目が眩むほどそんなに眩しくはない。
「私のことはマリアーンって呼んで!…それで何だけど、メリアって好きなもの、とかこと、とかある?」
女子の会話定番の質問。
(……あっ)
メリアは口をムズムズさせると、近くにあった紙に文字を書く。
『星、とか天体観測…。魔術も、一応知識はあるんですが…』
「…!私もよくするわよ!私、よくオタク口調になっちゃうから皆寄ってこないのよ。私が好きなのは騎士団様何だけど…」
見習い魔術師は何故こんなにオタクがいるのか。
そんな疑問が頭に過ぎったが、メリアは一番に思ったのは、「自分の好きなことが一緒な友達が出来た。嬉しい」。
マリアーンは何処か優しく、儚い笑みを浮かべて、言った。
「改めて…、宜しくね、メリア!」
(この人、感じは良さそう…だな)
緊張が解れて口元が緩む。
すると、忘れていた頭痛が返ってきて、またズキズキと痛む。
「忘れてた!メリア、そのままじっとしてて」
マリアーンが指示すると、メリアは押さえようとしていた手を離す。
そのままじっと待つと、両方の掌を広げてマリアーンは詠唱をする。
「―。」
別国の詠唱かと思うと、マリアーンが詠唱をしたのは精霊召喚だったらしく、展開された魔法陣から精霊が現れる。
「―。」
また詠唱をすると、精霊とマリアーンが連携して魔法術をする。
精霊との連携魔法術は、精霊の力と自身の力を合わせて、より強力な効果を付与する行為だ。
だが、精霊の扱いや精霊語と呼ばれるフィアライ語の習得方法が非常に難しいので、神使召喚魔術や属星魔術使いが扱う神託大特化魔術に並んで難しいとされている。
勿論、メリアには何を言っているかさえ分からないが、それより自分を助けてくれる友の存在に、温かさを感じた。
目を覚ますと、マリアーンとアリアが心配そうにこちらを見ていた。
「これで詠唱出来るし、話せると思うけど…」
マリアーンの言葉で、メリアは結界書法魔術の詠唱をする。
幸い、何も起こらず発動することが出来たので、安堵の溜息をする。
「医務室だからゆっくり休んでいいわよ。その代わり、3人で話さない?!」
「アリア、いい事考えるじゃない!メリアはどう?」
『はいっ、大丈夫ですっ』
アリアの提案で、オタクと陰キャ達の女子会が始まったのだった。




