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星が瞬く夜に、願いを捧げます。  作者: 夜花みあな
第7章「魔術試験編」
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【7章-3話】話さなくなったメリア

 「なぁ、ナウアール。あいつ、大丈夫か?」

「うん。大丈夫な筈だけど…」

ロヴィリアとナウアールは、生徒会室で資料を見合わせて話す。

「数日経ってもずっと変わらないが?」

数日前の地下牢の件以来、メリアは何も言わないで俯くのみ。

結界書法魔術さえも使わない。

少し前のメリアだったら当たり前かもしれなかったが、今は違う。

「僕だって、気にしてはいるよ。医者に見せてからもこうだし」

「でも、ロヴィリアがそう言うのは何か新鮮だな」

「別に」

揶揄うナウアールを横目に、ロヴィリアは昨日の事を思い出す。

――「俺の目的は世界を救うこと。お前らが言ってることはしたことは正しいな。だが、それ以外は無い」

(記憶改変操作を使ったくせに…)

何が世界を救うだ。

被害者を出してるじゃないか。

心で思っていても、ロヴィリアは声に出さなかった。

しかし、こんな調子のメリアに話すのも、自分の方が調子が狂う。

ロヴィリアは意を決してメリアに言う。

(こういう時って、何かしていいもんなのか?)

「まぁ、ロヴィリア。今回の件は生徒会で解決しておこう」

「は?ファスリードとかラクアレーンとか関わっただろ?…エイラもラウィーヌもだが」

「…いや、だからこそだよ」

はっきり言わずに曖昧に言うナウアールに訊ねる。

「何か変だな?」

「気の所為だよ」

「…」

言っても尚、吐かないナウアールを不思議そうに見ると、ロヴィリアは呟く。

「ほんと、最近物騒な事件の解決とか調査で頭がどうにかしちまうぞ…」

「とりあえず、調査記録だけ纏めようぜ」

「そうだね。生徒会顧問にも提出しないといけないし」

「…せいぜい1週間かな」

ナウアールが言うと、ロヴィリアは隣に置いていた仕事の書類を勢い良く自身の前にスライドして、置く。

そして伸びをして先程は違う、1段階明るい声で宣言した。

「俺は2日で終わらせるからなぁっ?!」

「ふふっ。意地張っちゃって…、どうしたのかしら?ロヴィー」

後ろで作業をしていたスアラが笑うと、ロヴィリアは声を荒らげて叫んだ。

「あぁっ、もう話し掛けんなっ!?」


「…ねぇ、メリア。言わなくても良いけど、絶対に無理しないでね?」

「ここ1週間、ろくに会話してないでしょ?」

無言で大人しく席に座るメリアに、アリアは声を掛ける。

「…」

大人しいせいか、顔も色が悪く見える。

(この間、エイラとラウィーヌに言われたけど…)

数日前に、アリアはエイラやラウィーヌに助言を受けていたのだ。

その内容はアリアにとっては信じられなかった。


――「実体験した私から言わせてもらうけど、記憶改変操作は、精神が強くないなら確実に耐えられないわよ」

「私だったら、傍にいてあげるけど…。多分そういうのじゃあ無いのでしょう?」

「メリアはそんなことで機嫌直るわけ無いから…」――


「どうしよう…」

先日の女子会での話し合いから、なんとか考えを絞り出す。

(笑わせてみる?それとも私がこの前みたいな歌付きの話を歌って、メリアに聞いてみる?)

あれこれ考えて、アリアは頭を抱える。

「アリアは駄目だなぁ。無理矢理でも聞かないと今後絶対に話さないよ?これは」

そう言ったのは煽り馬鹿ことレジリア。

「はぁ?レジリアにだけは言われたくないわっ」

「あ〜あ。メリア、話さなくなってもいいのかな?」

「うぐっ」

「そう思うなら、努力してみな〜」

「あんのぉっ…!」

そそくさとその場を去るレジリアに腹を立てながら、アリアは考える。

(無理矢理…。なら)

「メリア。今日私の部屋、絶っっ対に来てよね?」

「…」

思った通り何も言わなかったが、メリアの顔は縦に動いたように見えた。

(大丈夫かな…)

アリアはメリアを心配そうな表情で見た。


――その夜。

約束通り、メリアはアリアの部屋に来た。

「メリア。紅茶淹れてあるから好きに飲んでね」

淹れたての紅茶をメリアの方に置く。

ソーサーとカップが擦れ合ったカチャッと音だけが、軽く部屋に鳴り響く。

アリアの部屋はそれだけ音がしないのだ。

「…前に、ラウィーヌから心理操作魔術を教えてもらったの。嫌じゃなければ、私から心で会話…出来ないかな…?」

ラウィーヌに教えてもらったと言っても、思い出すだけで背筋が震える。

――「メリアの為よ」

アリアが何か言う度に無表情でそう言われるので、段々とラウィーヌが恐怖に思えてきていた。

それすらも乗り越えて、アリアは魔術を習得した。

メリアに訊ねても、慣れたものだが相変わらずメリアは俯いて何も言わない。

けれど、反応はしないので駄目ではないのだろう。

そう勝手に判断すると、アリアは詠唱をする。

「―心理操作魔術。―」

アリアはその後、目を閉じる。

(メリア、聞こえる…?)

(…うん、聞こえる)

メリアの声が心に響く。

(良かった…)

(アリア…。何で私なんかに…?)

(あぁ、もう。お揃いのブレスレットまで買って、助けない親友が何処にいるのよ。私は、ただメリアの気持ちを知りたい。それだけよ)

(だからって塞ぎ込んじゃあ駄目。メリアだって気持ちがある。…私が聞く前に話さないで頂戴…)

(……打ち明けられることがあるなら話してみて)

アリアは急かさないようにして訊ねる。

(…少し、いいかな)

(全然大丈夫。話してみて)

(……うん)


メリアの見た記憶は、とても纏められるものでは無かった。

突然、覚えていない幼少期の頃の記憶が流れてきたり、父親らしき人物への罵倒、自分への罵詈雑言の嵐。

これらはメリアの人格にも影響を及ぼした。

何人か存在する人格達が制御出来なくなり、混ざり、記憶の中でも意識も朦朧とする。

目覚めてみても、人格が混乱してまともに会話が出来ない。

メリアはそういった先を見据えて、詠唱さえも使わないと決断をしていた。


しかし、多重人格のことはアリアには言えない。

言いたくない。

話したらお終いな気がする。


(だからって…今も混濁してるの?)

(…うん)

(記憶の方は…?)

(うん…それは大丈夫…な筈だけど…)

急にメリアは黙り込む。

すると、心の中からではなくメリアの実体から、嗚咽混じりの啜り泣く声がした。

「…ひぐっ、うぐっ」

(…そう、メリアは辛いに決まってるのに……)

目を擦って涙を拭くメリアを優しく見守る。

(…あの本も、今から早く読み進めなきゃいけなくなってきたな…)

(メリア。私、どうにかして結界書法魔術だけでも、詠唱出来るように探してみるわっ!)

(えっ…?)

(貴方のオタク、第1号なんだからっ、推しの魔術見れなくてどうするのよ…っ!)

(また、絶対に結界書法魔術、見てやるんだからねっ!)

胸に手を当てて宣言すると、メリアは手を戻して微笑んだ。

(…アリア)

「アリアお母さんに任せなさいっ!」

(…うん)

静寂な部屋に、2人の笑い声が聞こえた。

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