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星が瞬く夜に、願いを捧げます。  作者: 夜花みあな
第7章「魔術試験編」
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【7章-2話】2度目の記憶改変操作

 メリアが続けて同じ様に中に入っていくと、鉄の牢屋が左右に見えた。

この地下牢では大罪人が監視されていると思うと、恐怖で鳥肌が立つ。

メリアも、こちら側に集まる視線に当てられるだけで震え上がっている。

(怖いっ、怖い…)

目を瞑り、前を歩くナウアールの後ろを続く。

途中、ナウアールの背中に突進してしまい、思わず牢屋の方向を見てしまった。

――全ての人間が、自分のことを睨んでいる。

まだ幼い少女や、見るからに恐ろしい男までがこの中にいる。

「大丈夫かい?!」

(…っ)

『す、すみません…』

竦む足を踏み締めて歩いていく。

すると、左の方で声が聞こえた。

「いやだっ、いやだっ…!」

「いや…っ」

その間に、また別の声が聞こえた。

「―記憶改変操作(アーズメモルリターン)。―」

(ひっ…!?)

メリアはその場に固まった。


――「メリア、大丈夫…?」

気が付いたメリアは起きて辺りを見渡す。

(ここって、…孤児院の裏野原…?)

目の前にいたのは幼い少年。

少年の顔は、何処か見覚えのある顔だった。

少年はこちらに手を伸ばして言った。

「…魔術師さんのお話、聞きに行こっ!」

「うん…」

答える間もなく、別の場所に変わる。

――「メリア、メリアは絶対に幸せでいてね」

目の前の女が優しく言う。

「どうして?」

そこでまたもや別の場所に変わる。

――「こんなの…、偽の情報だっ…!?いい加減辞めた方がいいぞ?!」

「偽なんかじゃないっ!」

目の前で2人の男が言い合いを始める。

耳を塞ぐと、また場所が変わる。

――「火種を落としたのはお前だ。アディー」

「お前は何もいい事なんかしていない。…偽善者が」

「全てを受けて償え。お前なんか誰も信用していない。何が魔術師だっ!」

「とっとと消えろ、異端者が」――


「メリア?!」

倒れ込むメリアの手をアリアが掴む。

「あぁ、また手、出したか。そろそろ替え時だったからいいね」

ウェリアーンが不気味な笑みを浮かべる。

「ちっ…!」

女が詠唱を始めると、ウェリアーンは慣れた様子でタビアストに耳打ちをする。

「頼むよ」

「承知致しました。―範囲41、結界魔術、第24式。―」

結界が、女の攻撃を跳ね返す。

ウェリアーンは自身の耳に軽く触れると、女に告げた。

「…この件は、報告させてもらうね」

そう言ってウェリアーンは振り返って言う。

「メリア以外は特に大丈夫そうだね」

ある場所に着くと、ウェリアーンが言う。

「メリア、戻った方がいいんじゃないの…?」

アリアが肩を貸しているメリアの方を見る。

苦しげな表情で、若干過呼吸気味だ。

「意識は?」

「あるけど…」

ラウィーヌが黙り込むと、ウェリアーンは何かを閃いたかのように提案をする。

「…うん、城の掛かり付け医に診てもらおうか。記憶改変魔術は侮っちゃあいけないからね」

「よく覚えてるな」

「それほどでも」

ロヴィリアに返すと、ウェリアーンは指を立てて指示をする。

「―じゃあ、二手に別れようか」


――「クズの娘がっ…!」

――「消えろ」

――「黙れ」

――「娘もどうせ同じだ」

「…」

(誰も、私の事なんて…)

脱力すると、外の方から声が聞こえた。

「おっと」

(…?)

起き上がると、目の前にナウアールの顔面があった。

「うっ…」

頭にズキズキと痛みが走る。

「メリア大丈夫?!」

「…今はあまり話しかけない方がいいかもしれないね」

「えっと…何でですか…?」

「―メリアは今、混乱しているだろうから…ね」

頭を抱えて唸るメリアを見て、ナウアールは静かに言う。

(記憶に干渉する魔術をかけられたから、何が起こるか分からない…。ウェーンの言っていた医者は大丈夫だと言っていたけれど…)

見ていられなくなったナウアールは、メリアの顎を掴んで目を合わせる。

「―オーリヘルア」

「うっ…」

「収まらないか…。ごめんね、メリア」

ナウアールはそう言ってメリアを寝かそうとすると、メリアはその手を振り払う。

「怖いっ、怖いっ…」

「…っ」

「メリアっ?!」

アリアが前のめりになると、何かを察したナウアールはその手を止める。

「―闇手の悪引きっ。―」

「―ビルディントート。―」

攻撃を仕掛けてきたメリアへ詠唱をする。

なんとか攻撃は防げたようだ。

そしてその後、メリアの顔が上がる。

片目はグレーに変わっていて、顔が火照っている。

「アリア、医者を連れてきて」

「わ、分かりました…?」

「ナウアール様…」

か細い声が聞こえると、ナウアールは直ぐにメリアの方を向く。

「今、医者が来ているから安静にしていて」

「…」

言葉が詰まって何も言えなかった。


――数時間後。

メリア達と合流したウェリアーンとラウィーヌ、ロヴィリアとその他共々は、また城下街の広場で集まった。

「セルバー様の魔術、見たかったな…」

「あはは。僕は父上の付き添いだったからね。…また会ったら見せてあげるよ」

落ち込むアリアにセルバーは提案をする。

「…」

メリアは起きてから今までずっとこの調子だ。

悲しい表情も、怒った表情も何もしていないのに、なんだか虚しく感じる。

「ロヴィリア。詳細は、また週明けの生徒会で話そう」

「分かった」

「じゃあ、ここで皆お別れって感じ?」

ウェリアーンが言うと、ナウアールは口端を上げて言う。

「そうですね。殿下はどうします?」

「…もう地下牢に行く必要は無いから、護衛は終わりでいいよ。自分で帰れるしね」

「了解しました」

「じゃあ皆、またね」

夕陽の光が差し込んで、街を明るく照らした。

――ある場所を除いて。

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