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星が瞬く夜に、願いを捧げます。  作者: 夜花みあな
第6章「新学期編」
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【特編】2つ名呼びの真実と、ある“もの”の由来となる出来事

 レイランド学園高等部1年フレイクラス、アリア・ラクアレーンは、新学期早々とある噂を耳にした。


――2つ名を付けると、いいことが起きるらしい。


それを聞いたアリアは、試しに色々な者に2つ名を付けてみた。

レジリア・エンヴィーンには〘煽り魔〙、エイラ・フェリンドールには、〘凱風の嬢〙と名付け、メリア・ファスリードには〘星願い人〙と名付けた。

自分にも多くの2つ名が付けられたりしたが、付けたものも含め、特に何も起きなかった。

他の友人にも聞いてみると、意外にも1人成功した者がいたらしい。

アリアはコツを教えてもらう為、その者に会いに行こうと決心した。――


…という経緯でアリアは今、その噂を成功させた者に会いに行こうと階段を上っている。

まぁ、コツも何も無いものだと思うのだが、実際アリアはコツを教えて貰いに行くのでは無いのだ。

アリアの目的は別にあった。

(その人が“噂”を広めたのかな…。前にも少し噂が立って、その人が首謀者?みたいな感じだったし)

この噂の前に、1度小さい噂が立ったことがあった。

その内容というのは…。


――“学園裏の森の奥深くにある泉の水を、夜中の0時丁度に、ベリメリア座の方面である東側を向き、掬って飲むと、恋が叶う”というもの。


だが、この噂は色々と条件が多かった為か、あまり大きく噂が立つことは無かった。

(まぁ、0時以降は寮から出ちゃいけないし、監視役の学園長の使い魔が飛び回ってるし、そう簡単にまず出られないからね…)

そう振り返っていると、やがて目的の教室の前に立つ。

「ふぅ…」

溜息のような呼吸を1回すると、閉まっている扉をノックした。

「…失礼します」

中にいる数人がこちらに注目すると、アリアはその中を目で探しながら訊ねた。

「ノディス・エルカとロディス・エルカはいますか?」――


「…それで、なんで来たの?態々2年の階まで来ちゃってさ」

「ねー。しかもエイラと仲良い奴だし、ファスリードとも仲良い奴じゃん。…名前忘れたけど」

ノディスがロディスに言うと、2人でお互いを見合う。

普段と違い、2人の顔には白くペンで書かれたように名前が浮き出ていた。

(…悪戯?それにしても大胆だし、そうしたらなんの為に…?)

疑問に感じたが、あまり気にせず2人に訊ねる。

「…私はアリア・ラクアレーンです。1年生の」

「あぁ、そうだった。よくエイラとかに聞くんだけど、最近滑舌が可笑しいから聞き取れなくて」

(エイラ、そんなに滑舌悪かったっけ…?)

アリアは気まずそうに苦笑しつつ、2人に訊ねた。

「今回の噂の件、2人が広めたデマですか?」

「これはこれは。…デマと決め付けられるのは少し気に食わないかな?」

アリアの方に歩み寄ると、ノディスと書かれた1人の青年は、アリアの制服のローブを掴む。

「ということは2人が噂を…?」

アリアが呟くと、直ぐに手を離したノディスと書かれた1人の男の青年の後ろで、ロディスと書かれた1人の青年が言う。

「“デマ”、じゃなくて“噂”。…まぁ、広めたのは僕らだけどさ。今回はきちんと元の話はあるから殆ど真実なんだけど」

「そうそう。…でも、これはあんまり言わないで欲しいかな…って思ってるんだけど…。というより別の事が気になってるんだな?君は」

(…気付いてた、のかな)

「察してくれたこと、感謝します。…はい。私、貴方達2人に教えて欲しいのです」

心に決めたアリアは、真剣な表情で2人に言う。

「…噂の真相とか聞かせろ、とかでしょ。なら言わないよ。意味が無くなるし、面倒臭いし」

「――噂の話のコツ。それを教えてもらいたいのですが、宜しいですか?」

驚きの回答に2人は一瞬ポカンとしたが、その後腹を抱えた。

アリアに見える身体はピクピクと震えているようでいないような様子。

彼等は笑っていた。

「ちょっと…っ!?」

アリアが強く言うと、ノディスと書かれた1人の青年は顔を上げて笑いを堪えるように口元を抑えながら言った。

「…っ、分かった。話すよっ…」

周りの話によると、その後数分笑い続けたそうだ。


「まず初めに言っておくと、2つ名ってその人そのものの要素が入っていないと成立しないんだ」

「それに、勝手に付けると神が許さないから、王都に申し立てして正式な2つ名を貰う必要がある…って王都が言ってるから貰わないといけないし…」

ロディスと書かれた1人の青年とノディスと書かれた1人の青年が交互に話す。

(正式な…。じゃあ皆この時点で駄目だったんだ)

「それが、元の話なんですか?」

「そう。で、これをオマージュして“話”としてじゃなくて、あくまで“噂”として広めたんだけど…」

頭を搔くと、続けて言った。

「1人、成功させちゃったんだよね…」

「え?」

「エイラ。エイラが成功させちゃったんだ」

信じられない真実に目をパチパチと開閉する。

ノディスかロディスのどちらかだ、とアリアは思い込んでいたのだ。

「エイラが?」

(…2つ名は私が付けたし、特に変わった変化は無かったと思うけど…)

エイラとの会話を振り返る。

今までの記憶を辿っても尚、変化は見つからない。

「…で、多分それで滑舌悪くなっちゃったんだと思う。元の話では“起きれば何かしらの厄災が降らんこともなし”とか書いてあったしね」

「…滑舌が悪くなるのって、厄災か分からないし、滑舌が悪くなったのはほんの数日だけだし」

そう言われると、真っ先にノディスとロディスではないか、と疑ってしまう。

――だって、今顔に名が浮かんでいるのだから。

けれど、これが厄災かは微妙なラインなのでそれが完全な確信ではない。

確信を突くのであれば、するべきことがある。

「…それなら、2人の顔に浮かんでいる名はどう言った理由で?」

疑問を声に出さず、呑み込んでしまえば勘違いしてしまう可能性は大いにある。

ならば声に出し、疑問を伝えるのみ。

アリアが訊ねると、ノディスとロディスの2人は、まるで何を言っているのか?、とでも言いそうな表情で固まっていた。

そして2人が窓に反射した顔を見てあちこち触ったりすると、呟くように言う。

「…驚いた。僕達には見えないみたいだな、ラクアレーン?聞くけど、本当なの?」

「うん、本当」

「ほんと?」

「うん」

「間違いなく?」

「うん」

「神に誓って?」

「…うん」

「じゃあ命を懸けても、自分を天秤につ―――」

「やめましょ、やめましょ!」

そう叫んでこれ以上言葉を発させないようにすると、好奇心でアリアは2人の頬に触れる。

「「うっ…」」

同時に2人がアリアが触れた頬の上から手を被せる。

「2人共?!」

アリアが叫んで訊ねると、声に共鳴したかのように名の入った文字が光る。

(…何かに反応してる?)

アリアは呆然と立ち尽くす。

その時だった。

「それは意思操作と制限の呪魔術だよ。下手には触れない方が身の為かな?」

思わず顔を上げると、途端に1人の少女の顔が見えた。

――3年、ティレ・イルア・ルフェード。

呪魔術を得意属性とする家系、イヴァリアート男爵家の娘だ。

それを、学年が異なるアリアが何故知っているのか。

それは、ある出来事からあった。


――レイランド学園では、ちょっとした小さな出来事があった。

2年前、レイランド学園ではその年までだが〈学園統一魔術力調査〉というものがあった。

それは、その年のレイランド学園初等部、中等部、高等部1、2、3年、初等部では加えて4、5、6の中での魔術力が高い者を選出する、という行事があった。

その中で、高等部3年間一度も代わること無くトップに座り続けた者。それがティレだったのだ。

この調査は、そうそうトップに座り続けることは無いと信じられていたので、これは伝説となって何故か語り継がれている。


……という理由もあるが、大きい理由は恐らく〈呪魔術の家系〉という理由だからだろう。

その場に現れれば友に忽ち話を聞かされ、凄いことを思い出させる。

(…で、でもなんでここに?)

「ラウィーヌから聞いたわ。なんか双子とエイラちゃんの妹分が何かしてるって」

「嘘言わないで下さいませ、師匠。こっそり盗み聞きしてたのは私の見間違いでして…?」

ティレの後方からラウィーヌが続けて出てくると、2人で会話を始める。

「…これは、ど、どういう…?」

「あら、私ってば説明もせずに弟子と話してたの…!?いけないいけない…」

自身の中で言うと、ティレは呼吸を整えるのか大きく深呼吸をする。

「――解呪するから、少し離れていて。…そうね、あの双子より1歩離れた所とか」

そう指示された場所に立つと、随分と雰囲気が変わったティレは詠唱をする。

「―魔の離れ。―」

言うと、ロディスとノディスの頬に浮かんでいた白い文字は消え去り、2人は目を覚ます。

アリアの身体は光を放ち、身体から白い文字が空中に移動し、飛散した。

「あれ…?」

腰が抜けてその場に座り込む。

「やっぱり本人には見えないようになってたわね…。そうなると結構大変だから困るのだけど…」

終わって直ぐにブツブツと呟くティレに、ラウィーヌは肩を叩いて訊ねる。

「説明した方がいいわよ。今この子混乱してる」

「…え?」

いつもは恐怖で引いてしまうラウィーヌの前でも、身体は一向に動かない。

「普通の人の反応…っていう感じかしら。まぁいいかしら。…ねぇ、エイラちゃんの妹分ちゃん」

アリアは下を向いた顔を再び上げる。

「エイラは貴方に2つ名付けて貰えたの、嬉しかったのよ」

「エイラが…?」

「…後で聞いてみるといいわ」

ラウィーヌが答えて直ぐそっぽを向くと、ティレは続けて説明をした。

「あの2人に掛かってた魔術は〈意思操作と行動制限〉の魔術。そしてその動かす主人である者が、アリアちゃん。貴方ってことになってたわ〈行動操作〉の魔術で」

「…」

黙り込むアリアに、ティレは「あぁ…、それに…」と呟き補足する。

「正確には2重操作されてたみたい。まず、誰かがアリアちゃんを行動操作で2人を操作して…。だから…」

「何も気にしなくていいわ。…逆に医務室に行った方が良い位だけど」

言われても動じないアリアに、ラウィーヌは一言言い捨てた。

「そんなことでいちいち落ち込んで、絶望して、色々考えてちゃあ、身が持たないわよ。気にかけるのは大事だけど、それとは別物よ」

そう言った後に、ラウィーヌは続けて呟くように言った。

「…貴方らしくないって言うか…ね」

その声は聞こえてなかったのか、アリアは小さく何かを呟くと、ゆっくりと立ち上がる。

その目尻には少量の涙が溜まっていた。

「2人は医務室に運んでいくけど、どうする?」

ティレが訊ねると、しばらくしてアリアは震える唇を動かして答えた。

「…だ、大丈夫、で、です」

「そう」

そして、双子を連れた2人は、廊下の奥へと消えていった。


――その後、噂を聞くと犯人は以前メリアのことを襲った者だったということが分かった。

どうやら、遠隔で呪魔術を操っていたらしい。

後日に、全校生徒には注意がされて、その後から事件はパタリと止んだそうだ。――


数日後、アリアは呪魔術を掛けられた廊下で思い返していた。

(…)


――「そんなことでいちいち落ち込んでたら――、身が持たないわよ。気にかけるのは大事だけど、それとは別物よ。」――


ラウィーヌの言葉を胸に残し、影響で締め付けられる胸を抑える。

「…じゃあ」

「やってやる、から」

胸に手を当てると、アリアは心に決めた。

だからか、その目はいくらかいつもより光が宿っていた。

『…アリア?』

後ろから来たメリアが訊ねると、アリアは直ぐに振り向く。

「どうしたの、メリア。ここ、あんまり通らないんじゃないの?もしかして先生の手伝い?」

『い、いや…、はい…。先生に手伝いを頼まれて…』

モジモジと指を捏ねると、メリアは何か言いたげに口をパクパクとする。

(図星か…。…ん?)

首を傾げると、拍子にメリアの口から大きな声が飛び出した。

『な、なっ、涙がっ…』

慌てて自身の頬を触ると、水の触感があった。

…室内では雨は当たらない。

これは、涙だ。

そう思うと、更に目が熱くなって水滴が次々と滴る。

「あ、だ、大丈夫だよ、メリア…」

涙を拭こうと目を擦りながら言うと、メリアは心配そうに訊ねる。

『大丈夫ですか…?』

声を聞き取ったアリアは、猫背になった背を伸ばし、笑顔を作る。

「…手伝い、手伝うよ」

アリアが言うと、メリアは不自然な笑顔を作って答える。

『なんか、面白いです。手伝いを手伝うって…!』

「ねっ…!」

2人は見合って笑うと、共に並んで廊下を歩き出した。

その時、アリアはメリアの横顔を見ながら思った。

(…意味は無いけど…、また、2つ名考えてみようかな)

今ならまた、考えられる気がする。

「ねぇ、メリア。メリアって星が好きなんだよね?」

アリアは、エイラが気に入ってくれたように、メリアにも特別な2つ名を付けることを新たに決めたのだった。


――それが、メリアの2つ名〘星願い人〙が決められる数日前の小さな出来事である。

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