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星が瞬く夜に、願いを捧げます。  作者: 夜花みあな
第6章「新学期編」
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【6章-5話】契約精霊からの情報報告

 (ラウィーヌ、最近無表情の時が多いけど…、話すことは多くなったかな…?)

ナウアールは笑みを浮かべながら思う。

授業の心配もせず、静まり返った廊下を歩くのはなかなか背徳感を抱くが過ぎるのではないかと思うが、ナウアールの頭には一切無いように見える。

(秘密を守るくらいなら、こういう所は平常心でいなくちゃね。…生徒会長という立場でも、かな)

段々と生徒会室に近付くと、ナウアールはポケットに入れていた鍵を取る。

(さて、メリアはどうなるかな)

ほんの瞬き1つ分、ナウアールの片目は優しさと光を無くし、深いスプルースとなった。


生徒会室は想定よりも広く、壁の端側には資料室等の部屋の扉が複数あった。

今は授業中なので、当たり前だが生徒会室の扉を開けても誰もいなかった。

唯、閉め忘れたのか一部の窓から昼に昇る太陽の光だけが差し込んでいて、その様は異様に綺麗に見えた。

その景色に圧倒され、メリアはその場に立ち止まる。

「どうしようか。皆は大きいテーブルのところに座ってて。…紅茶でも淹れようか」

(流石、生徒会室。紅茶もあるんだ…)

関心しながら静かにチェアに座る。

メリアが先に座ると、ラウィーヌは隣に、青年は向かい側の左側に座った。

ナウアールは壁端にある台にあるケトルに手を伸ばし、詠唱をして水魔術で水を生み出し、火魔術で程良く温める。

「それにしてもラウィーヌ。目を付けるのがいいね。丁度暇潰しに、良い本を取り寄せたんだよ。そこの棚にある筈…」

「あの本棚でしょう?」

「あぁ、そうそう。何だっけ…」

ラウィーヌは立つと、青年側にある本棚に向かい、本の背をなぞる。

「〈天体観測、天体の全て〉…。あまりにも単純な名前ね」

(…て、天体っ!?)

メリアは目を輝かせてラウィーヌを見る。

天体観測、星、星座。

この辺の言葉は、毎日願いを捧げる為に星ばっか見ている星オタクのメリアにとって、最高の言葉である。よって、その本もメリアにとっては最高の本だ。

「いやいや、魔術には欠かせないと思うんだけど?特に星属性が得意な魔術師なら尚更」

(これから生徒会室に潜入しようかな…。こっそり持ち出して…)

メリアの顔が緩む。

ラウィーヌやナウアールが話している間、メリアは本のことで呑気に想像していると、ラウィーヌはあまり動かない口角を上げて言った。

「生徒会に関係あるのかしら?凄く要らないと思うのだけれど」

「それに、私、今は本を読む時間じゃあ無くって、メリア・ファスリードと話すのに忙しいの。ごめんなさいね」

その笑みは棘があり、メリアの心に深く傷を付ける。恐らくだが、きっと煽りも兼ねているだろう。

(……っ)

メリアは考えるのを止めて俯く。

その間にも、他の3人の会話は絶え間なく進んでいた。

「…ナウアール様とスアラ様はノリノリで図書委員長に頼んでましたけど…」

「まぁ、とりあえず紅茶を淹れ終わるまでこっちで話してるから、話しかけないでもらっても?」

青年に言葉を返すと、ラウィーヌの顔が無表情に戻る。

それを見ていたナウアールは、紅茶のフレーバーをティーポットに入れながら言う。

「分かったよ。2人で話してて」

(それなら…結界で遮断した方が良いのかな……?)

言うと、ナウアールは詠唱をしてラウィーヌとメリアを囲う結界を張った。

「……メリア・ファスリード。さっきの状況について話すわね。ナウアールが結界張ってくれたみたいだし」

『はい…』

「視界阻害結界を張ったわ。…少々失礼致して」

そう言って、ラウィーヌはスカートからロケットペンダントを取り出す。

付いている紐を退けて、本体をコンパクトのように開くと、そこに手を当てて詠唱をする。

「―契約精霊、今、現れ―」

(契約精霊…?)

メリアがその様子をポカンと見ていると、その間に、ラウィーヌのロケットペンダントから魔法陣が展開する。

(星属性精霊なのかな…?)

魔法陣に注視していると、突然魔法陣から青色のコウモリが現れる。

『えっと…?』

「あら、ヨズは何処かしら」

ラウィーヌが訊ねると、コウモリは男の人間ような姿に変わって返した。

「先程、見回りと言って校舎の反対側にいましたが、その後戻って来てないので…」

「相変わらずなのね…?」

小さく溜息をつくと、ラウィーヌは再びメリアの方を向いた。

(2人いるのかな?……それにしてもこの精霊、言葉が流暢だし、人型にも…)

普通、精霊は言葉を発さない為、言葉を発するのには相当な訓練と応用が必要だ。

そして、もうひとつ。

人型に変われるのも、普通の精霊では物凄い才能だ。

精霊は普段、形を持たないか、動物に擬態しているかのどちらかで過ごしている。

人型に変われるのは、いずれにしても人間と何らかで干渉しないと無理に近い。

これは、メリアの契約精霊ラリアードにも、メリアは少なからず同じように思っていた。

(人間に連れられたか、…或いは……になるけど…)

ラウィーヌと会話する精霊を見つめて考えていると、精霊はこちらを見て言った。

「…それで、ラウィーヌ様。そちらの方が…?」

「そうよ。メリア・ファスリード」

「分かりました。…先の空き教室ですね。全員で5名、部屋の端にいました。

名簿と顔写真を確認するに、

2年フレイクラス、エイラ・フェリンドール様、

同クラス、ハバルト・ルービン殿。

2年レイナクラス、ドーバン・ロズバニア殿。

最高魔術師連リース・ヘベリアント様、

算術担当教師、カルロアス・マートでした」

(…?何で最高魔術師と教師がいたの?…私達のところに来たのはその教師か生徒っていうこと?)

「2年ねぇ。エイラも…」

ラウィーヌは額に手を当てて思い詰めるようにする。

少し経つと、メリアはタイミングを見計らって訊ねる。

『すみませんラウィーヌ様。私達のところを確認してきた人って、誰でした…?』

ラウィーヌは体制をそのままに答える。

「リース・ヘベリアント。心理操作はしたから記憶は無いはずだけど…。…アズ、他に情報とかある?」

「…いいえ。非常に式が杜撰で適当な視界阻害結界だったので、姿は確認できたのですが、その代わり、非常に高度な防音結界を張っていたので、話までは…」

(非常に式が杜撰で適当な…)

『そ、そうなんですか…?』

メリアは苦笑いで話を聞いていると、ラウィーヌは契約精霊をロケットペンダントへ戻すと、結界に向かって告げた。

「じゃあ確認は終わり。…ナウアール、聞いてるなら結界外して」

「…はいはい」

答えたナウアールは、結界解除の詠唱をする。

「ナウアール、全部聞いてたわね。…王子の遊び相手にしてはどうかと思うのだけれど?」

「いや、紅茶が冷めないように温度管理するから、確かめて魔力消費を調整してたんだよ」

「言い訳には随分な理由ね」

(…不効率だな…)

「まぁいいじゃないか。それじゃ、紅茶飲んでみて。砂糖もミルクもあるよ」

『あの…。カップに注いで、魔術で管理するんじゃなくて、ケトル内で管理すれば良かったのでは?』

メリアがカップに鼻を近付けて聞く。

「しかも、学園には、学園長に使用許可を、又は授業で使うと言われていないと、持ってきてはいけないと言われてませんでした?」

青年が続いて返す。

「…」

「メリア・ファスリード、リバールン・キャスバ、いいこと言うわね」

(…え?)

ポカンとラウィーヌを見ると、向かい側に座ったナウアールはカップを手に取って訊ねる。

「…紅茶はどう?」

メリアは直ぐに、紅茶を入れたカップに口を付ける。

(…何か、これって……)

『…フルーツの香り?がしますね。失礼ですが、これ、いくらですか?』

「この紅茶、スアラが持参したものだったと…。前に聞いた時は、確か金貨3枚分とか?」

『この紅茶にそんなに価値があるんですね…』

ナウアールに言うと、その場の空気が固まる。

(え、何か言っちゃった…?)

メリアが戸惑っていると、ナウアールに向けたラウィーヌの片目が光る。

「あら、ナウアール、言われちゃったわ」

ラウィーヌが紅茶に手を伸ばすと、ナウアールは言った。

「メリア、今、僕は気が変わった。提案があるから紅茶を飲んだら聞いてくれないかな?」

(…これが心理操作…?!)

「…案外楽しいわね。これなら…」

(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い)

『……あ、あぁ、授業がそろそろ終わりそうですねー。私、そろそろ戻らなくちゃいけないですっー』

手本のような棒読みで立ち上がると、ラウィーヌはメリアの腕を掴んで言う。

「あら残念、…次は昼食休憩ね。…ティーパーティーでもしましょうか」

無表情とは対して楽しそうな微笑みを浮かべて、ラウィーヌは答える。

(嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌)

こうして、メリアの地獄の昼食休憩ティーパーティーが始まったのだった。

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