【6章-3話】話から始まる指導
メリア達の星属性魔術の指導は、すっかり晴れて、雲ひとつない澄んだ青空の下、行われていた。
「早速だけど、少し話から始めさせてもらうね。
魔術史の説明だと、
魔術は、魔力という通常、人間には無い特殊な力
―魔力という、粒子状で現れる力によって扱うことが出来る。
ある書物には
―魔術において、大事なのは得意属性。それから鍛錬するなり磨き上げたりすることで、魔術師に成り上がることが出来る。―
と記されている。
僕も含め、君達の得意属性は星属性。14種ある魔術の中で最も繊細で、丁寧に扱う必要がある属性だ。
その為、新しい章を魔術書に刻むことは難しい。
これは皆知っているね。
だから、僕は扱い方を中心に指導をするよ」
(魔術書と魔術史に基づいた指導するのかな…?)
星属性担当魔術師、タビアストは、言い終えると間を置いて生徒に告げた。
「長話は一旦終わり。次は1人1人手合わせするから、1人ずつこっちに来て。―ナウアールから並んでね」
(……?)
「じゃあ最初は僕達が取っちゃうね」
ナウアールはそう言って前に向かう。
(じゃあ私は1番後ろに…)
メリアが生徒の列の後ろを目指して1歩踏み出すと、掌からバシッと手を掴まれる感覚が伝わる。
(…えっ?)
「君は僕の次が相応しいと思うんだけど?」
(…え、えっ?)
「…そうね。その生徒会長が言う通り、貴方が先の方がいいわよ」
(…え、え、えっ?)
前で手を掴むナウアールと、後ろにいる無表情少女に言われると、メリアは2人の顔を交互に顔を見る。
その表情は
(やだやだやだやだやだやだやだやだやだ)
メリアの顔色は、2人に両手を掴まれて徐々に悪くなっていく。
目に涙を浮かべるメリアを無視して、結果、ナウアールと無表情少女の間に入ることになってしまった。
そして、メリアは無事に気絶したが、その後、目元がパチッと光るのと同時に、直ぐに起きて状況を見る。
いつもだとありえない速度で、そして、人格も代わらないで。
(…なんで?…すごっ…!)
手を掴まれたまま、ポカンと立ち尽くしていると、ナウアールの方に向かうタビアストが杖を手に取って言った。
「あぁ、そうだ。そこの多重人格。簡単には代えられないからな」
(……えっ?)
「だって。僕が言ったお陰だね」
(終わった…)
「良かったわね。早く終わらせられるわよ」
最後に無表情少女が言った言葉で、メリアは絶望から絶望の底まで落とされた。
―タビアストが行った手合わせは、思う程長くは無く、簡単に魔術を放つだけだった。
最後の1人の手合わせが終わると、タビアストは迷わず生徒1人1人を指差す。
「名前を言うから、それぞれ分かれて」
移動した後、メリアはそのメンバーに目を丸くした。
(あれ…?これって…)
メンバーはナウアール、無表情少女、無表情少女の友人らしき人物、メリアだ。
ナウアールは微笑み、無表情少女は一点を見つめ、友人はソワソワしている。
それぞれらしいと言えばらしい。
(何か仕掛けられてる…?)
全員始まる前にメリアと話した3人で、メリアは驚きを隠せない。
目がナウアール、無表情少女、その友人の順で回って落ち着きが無い。
(無表情少女さん…いるんだ…。……もしかしてこういうのが2つ名だったりするのかな?)
「そこの目が座ってない人。私にぶつかった挙句、私が順番も譲ったのに、『あぁ、無表情少女さん…いるんだ…。……もしかしてこういうのが2つ名だったりするのかな?』と思うのに、落ち着きの無いのね。他に理由があるのかしら?」
「ラウィーヌ…」
『い、いえっ、そうではないです…』
「…そう」
無表情少女はメリアの方を向くのを止めると、こちらに向かってくるタビアストに目を向ける。
「じゃあ指導始めるね」
「宜しくお願い致します」
メリア達は、タビアストからは連携について指摘された。
〈ここの4人は、ひとりで展開して打つのは得意としているかもしれないが、魔術師になれば連携は必須だ〉
そこで指示された内容はつまり〈連携の練習〉といったものだ。
メリア達はその指示を受けた時、授業終了を告げる鐘ここでは指導中断の鐘が鳴った。
他のグループで指示していたタビアストは、鐘の音を聞くと、大声で告げた。
「今日の指導は終わりにする。―各自戻るように」
「あ、メリア」
廊下でアリアと鉢合わせる。
「そっちはどんな感じ?」
階段を登りながら、メリアは答える。
『…まぁ、ぼちぼちっていう感じ…かな…?』
「そうなんだ…。…それならちょっと聞いてくれない?私の闇属性のクラス、とにかく凄く暗いのよ。指導の最高魔術師様も暗いし…。ほら、最近人替わったでしょ?」
『うん…』
「何かブツブツ言ってるのよ…。私の得意属性おかしいかと思ったわ…」
『へ、へぇ…』
(闇属性の人達、やっぱりそういう人多いよね…)
不自然な苦笑いで返事をすると、アリアは「あっ」と声を出してメリアを向く。
「もうすぐで授業開始の鐘鳴っちゃう。急ご!」
この後、2人は走って教室に入ったが、ギリギリで入った為、担任から強く注意を受けた。




