【5章-9話】今やるべき事
「あら、こういう風な時でも代わるのね」
メリアの替わった人格が掌を動かしながら呟く。
ミレはその場に倒れている。
メリアの人格は魔力吸収を感じると、魔力防御結構を組み立てて展開する。
(…そういうことね。道理で魔力が少ない)
メリアの人格が窓を破壊して外に出ようとすると、誰かがこちらに走ってきた。
「あら、確か―様とかだったかしら」
呟くと、その人物に向かって一声掛ける。
「…その子は任せたわよ。―結界解析―」
(範囲452、5重結界…)
「―火魔術、第87章、焼却。―」
メリアの人格が外へ出ていくと、任せられた人物は唖然と返すように呟いた。
「お前は大丈夫なのかよ」
メリアの人格は図書館の建物の上に上がると、視覚強化の詠唱をする。
屋根の周りを見ると、魔導具が3つ対照に置かれていた。
「うーん、この魔導具は結界保護の為のもの…。これが原因じゃあ無いのね」
そう言うと、胸元の契約石が震える。
震えが治まると、隣にラリアードが現れる。
「メリア様では無いのですね。どちら様でしょうか」
メリアの人格は口元を何処からか出した扇子で覆いながら微笑む。
「この子が、メリアちゃんの契約したラリアードっていう子なのねぇ。私はレア。少しお願いしたいのだけど…、―魔法で言う〈魔力検知網羅〉っていうのお願いしてもよろしいかしら?」
何処か稚ない笑顔を扇子で隠し、ラリアードに訊ねた。
―目を覚ますと、天井のシャンデリアで自分がいるのは図書館の中だと分かった。
魔力吸収は治まって、もう発動していない。
「メリア様、ご機嫌はいかがでしょうか」
(っ……!?人格はっ?!)
いつの間に出てきたラリアードがメリアの身体をあちこち触りながら訊ねる。
『だ、大丈夫です大丈夫ですっ!』
「はい、良いならいいです」
ラリアードは無表情で言うと、メリアの隣を指して言う。
「こちらの方は?」
『友達…。別に悪い人じゃないですっ』
「そうですか。では私は戻りますのでロヴィリア様とよろしくお願いします。では」
(やっぱり考えちゃうな…、将来のこと。……ん?ロヴィリア様?)
メリアがふと考えると瞬時に察した。
見なくても分かる。ロヴィリアの怒り顔が直ぐ後ろにあることが。
「メリア・ファスリード。お前は別の人格の時も、気が変な方向に向いてるみたいだな?」
『すみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんんんっっ…!』
メリアは全力で土下座をした。
「お前は自分の今やるべき事だけ考えろっ!何回も何回も言わせるなぁっ!」
この声は、メリアの人生で聞いた中で1番耳が壊れそうな位怒鳴られた声、トップに認定された。
「うるさっ、ここ図書館だよ?」
怒鳴り声で起きたミレの冷たい声に、ロヴィリアは直ぐに黙った。
メリアの心を切り付けたロヴィリアの注意(怒鳴り盤)は、ミレの憎悪に満ちた声に負けたのだった。
(自分の今やるべき事…)
その後、ロヴィリアは司書にこぴっどく叱られたのだった。
星が瞬く空の下、メリア達の帰り道、飛行魔術で帰るミレに小さく手を振ると、ロヴィリアが同じ方面に歩いて来るのが見えた。
(な、なんかしてないか、き、き聞こうかな…)
メリアは訊ねたいことがあったので、ロヴィリアの隣を歩く。
『…ろ、ロヴィリア様は、こ、ここちらの方面にご自宅が?』
「あぁ、そうだ」
司書に叱られた後だったので、少し元気が無い。
学園での冷酷で怖い雰囲気、そして言い方、喋り方が抑えられているので、メリアは内心安心した。
『…ろ、ロヴィリア様は、どど、どうして私達ののところに?』
そんな聞き方は、心では安心していても、動揺は隠せられていない。
「調べ物があったから図書館に来たが、魔力吸収の反応がして、原因に探りを入れる為に、その場に向かった。
…だが、お前の別人格に何故かミレと言うお前の友を宜しくだかなんだか言われたから、見ていたんだ。
で、当の本人は戻ってくるなり床で寝るし…」
(なんかしてたぁぁぁ)
衝撃でメリアの顔は絶望感で満たされる。
「人格か契約精霊にまた聞いてみろ。何かあればラクアレールにでも言えば調査が入るだろ。……俺はこっちだからまたな。…いや、会いたくない。せいぜい大人しくしてろ」
ロヴィリアは左方向を指差して告げると、そのまま左方向に歩いていった。
(あ、行っちゃった。…幻獣神祭のこと聞きたかったのにぃぃ、忘れてたっ!?……あーあ)
メリアは右方向を曲がり、自分の新居に向かって歩いた。




