【5章-5話】恐怖の再会
(呼んでない呼んでない呼んでない呼んでない)
メリアは心で叫んでいた。
何故なら、お呼びでない人達が現れたからだ。
「ここから見ると、綺麗に見えるのですね?」
『は、はいっ…。そうですっ』
「じゃあここで皆見ようか」
「やっほ」
メリア達のところに現れたのは、エイラ、ナウアール、ノディス、ロディスだった。
皆テーマの赤色、黄色、緑色、水色の服を着ている。
アリアに目を向けると、アリアは使用人の方に次第に下がっていく。
あっという間に秘密の場所に人が増えると、アリアは苦しそうに呟いた。
「私の秘密の場所なのにぃ…」
メリアは苦笑いでその場を眺めていたが、再び王城の城下を見ると、圧倒的な美しさに思わず微笑む。
街道にはテーマの赤色、黄色、緑色、水色の色だけが広がり、露店や街灯の光がより美しさを引き立てている。
(アリアって、物知りだな…)
アリアを見つめていると、エイラがふと声に出す。
「アリアはよくこんな良い場所見つけますね」
「もう、後から来た人が何言ってるの?!」
(あ、人増えちゃったから木の実でも買ってこようかな)
強く言い返すアリアに少々引き気味になりつつ、皆に向かって言う。
『私、何か買ってきます…』
そう言って丘を下りる。
路地裏をしばらく歩いていると、途中で誰かが呟いた。
「メリア……?」
足を止めると、そこには少年と少女がいた。
メリアはその顔に見覚え、いや、記憶に焼き付けていたので、はっきり覚えていた。
生涯忘れることは無い。
孤児院の1つ下のメリアと仲の良かった2人。
―そう。仲の“良かった”
チィルドとサーディ。
2人を見ていると、顔が昔のように窃笑しているように見えてくる。
見下す顔や疎外するように見る目。見つめれば見つめる程思い出す。
『あっ、あっあ…』
結界書法魔術で、言いたいことが丸写しされる。
「メリア、久しぶり。最近はどう?」
相手の声を感じることも虚しく、「はぁっ、はっ」と過呼吸になる。
恐怖で涙が目を覆う。
(あれ、どうしてだろ…。視界が―)
そのままメリアはバランスを崩し、地面に向かって倒れる。
バタンと音が鳴ると、空から誰かが降りてくる。
「―チッ」
舌打ちが聞こえると、そこで意識を失った。
5年ほど前。メリアが10つの年の時。
3人は、小さい頃から遊ぶ程仲が良く、毎日共に遊んでいた。
この時はまだ、メリアも多少は話せた。
「メリア!今日は何する?」
「…何しようか。サーディはどうする?」
「チィが決めたのなら何でもいいよ!…でも今日は皆で魔術師さんごっこしよー!」
そう言って3人で遊ぶのが当たり前だった。
だがこれは11つの頃までの話。
きっかけはあの発言。
「メリアって、人格がめっちゃあるんでしょ?!ちょっと見せて見せて!」
「少しね…」
本心は嫌だった。
でも、2人の為ならと、覚えたての人格転換魔術を使って人格を替えた。
しかし、その判断が全てを狂わした。
その後、人格暴走を起こしたメリアは、孤児院の3分の1程を崩壊させた。
気が戻った頃には、唯一の2人の信頼を失った。
(心で少し期待してたかもな…。私を心から認めてくれる人が出来るなんて)
そこからメリアは声を出せなくなった。
(1人でいたい…。)
―それからメリアは何も話さず、ただ解放を待った。
「……ア、メリア!」
目を開くと、心配した表情のアリアの顔があった。
(あっ…)
周りを見ると、メリアは仰向けに寝かされていて、周りでアリア達が囲んでいた。
直ぐに飛び起きると、隅まで辺りを確認する。
(2人は…、いない)
「大丈夫だよ。2人には戻ってもらったから。…はい」
ナウアールが飲み物の入ったカップを手渡す。
『あ、ありがとう、…ございます…』
受け取ると、大事なことを思い出す。
『お祭りの披露は…?』
「大丈夫。まだ始まらないよ。メリアが気絶していた時間も短いし」
聞きながらカップに口をつける。
(…あっ、つっ)
入っていたのは出来たてのコーヒー。
目を閉じると、アリアが何かに気付いて指を差す。
「あ、始まりそう!」
「じゃあ皆で見ようか」
7人は王城の城下に目を向けた。
―披露が終わると、数分の休憩が入る。
これは、次に行われる花火の準備が行われる為だ。
魔術と組み合わせた花火で、扱いが難しい。
殆どのメンバーが買い足しに行くと、その場にはノディスとロディスとメリアが残った。
渡された飲み物を飲んでいると、1人がこちらに向かって言う。
「お前、勝手に気絶すんじゃねぇよ。連れ出されて大変だったんだからな?」
『ご、ごめんなさい…ノディス様…』
「嫌だね。…でも借りを返してくれるんだったら、許してもいいぜ…。って、えっ?」
ノディスが話すのを辞める。
(えっ?)
訳が分からず、メリアはノディスを見つめる。
「お前、何で見分けつくんだ?」
『いや、全然違うじゃないですか』
間を置くと、ロディスがメリアに近寄る。
「…へぇ。なんで分かるのか教えて貰っていいか?」
『…確かに、見た目はほぼ同じです。でも違うところがあります。前にエイラ様に呼ばれてた時、目線で分かっていたので、顔、体格、声色、癖を記憶していました。それで分かりました。』
『ノディス様は声色が高め。ロディス様は低め。癖はノディス様は髪を弄る回数が多く、ロディス様はあとから話すことが多いです』
ひとつひとつ指摘されつつ、ロディスは呟いた。
「逆に怖っ」
「でも相応の実力があって、話しているからね」
ナウアールが後ろから顔を出すと、ロディスは「ひえっ」と言って反応する。
「相応の実力があれば、そういうことを言うのは当たり前だと思うんだけれど?」
冷たくロディスに言った。
相応の実力があれば、何だってしても文句は無い。
ナウアールはいつもそう思っていた。
そう思い始めたのは、1人の少女に惹かれてからだろうか。
幼い頃、施設で出会った少女の笑顔が忘れられない。
人と違う僕のことを笑ってくれたあの少女。
その少女といれれば、どんなに楽しいことか。
僕は、施設を出るまで思っていた。
施設を出る直前、僕は心に誓った。
その少女を救う為なら、僕はいつだって君の味方であり、祈り、願い続ける。
周り全員が敵だとしても。
―それが、間違っていたとしても。
心に秘めて、ナウアールは自持ちの時計を確認する。
「もうすぐ始まるよ。皆を集めないと」




