【5章-4話】うげっ
メリア達は、街道の様々な露店を廻って、祭を楽しんでいた。
(ここ、本当に色んなものが売ってて楽しいな…)
先程までに廻った店は、飲み屋や菓子屋、飲食屋などの食べ物系だったり、雑貨屋やアクセサリー屋などだったりで、種類が豊富だった。
「メリアぁ、次ぃ行きたいところぉとかあるぅ?」
アリアが口いっぱいに、露店で買った、木の実を蒸かした菓子を入れて、メリアに声を掛ける。
『と、特には無い…よ?』
(大丈夫なのかなぁ……?)
苦笑していると、こちらに向かって走ってくる音がした。
徐々に音が大きくなる。
「メリアー!アリアー!」
レジリアだった。
その声を聞いたアリアは、木の実を食べる手を止めて、嫌そうに目を細める。
『こ、こんにちは…』
「やっほ。君達は2人で来たんだ…。あ、アリア、木の実食べてるー」
レジリアは、間にいるメリアを跨いでアリアの方を見る。
「うげっ」
アリアが小さく声に出すと、レジリアは何かに気がつくと、ニヤけながら言った。
「そんなに口に詰めちゃってぇ。丁度、アリアちゃぁんの大、大、大好きな人が来てるよぉ。じゃっ、僕はこれで〜」
「あんのぉ、煽り馬鹿がっ。あ〜、もうやだわぁ。レジリア。もう来なくていいからね〜」
レジリアが去ると、アリアは呆れたように返す。
メリアはその会話を聞いていただけだが、やはり仲が悪いことだけは分かった。
(……て言うか、アリアの大、大、大好きな人、とか言う人、誰なんだろ…?)
『アリア。大、大、大好きな人って、誰の―』
「うげっ」
早くも本日2回目の「うげっ」が発された。
アリアの目線の先を見ると、大人の男性2人がアリアに向かって手を振っているのが見えた。
「お〜い、ア〜リア〜、絶対気付いてるだろー」
「おい、アリア。返事しろ」
街道によく響く声で呼ばれているが、アリアはレジリアの時の何倍ものの、嫌な表情で耳打ちをする。
「メリア。何も言わなくていいから、前を向いて、ただ歩いてて。分かった?」
『あ、うん。分かった…?』
呼ぶ声が大きくなりつつあるが、アリアは無表情でひたすら歩いている。
「おいアリア。こっち来い」
その声が聞こえると、隣にいた筈のアリアの姿が見当たらなくなる。
「メリアー。こっちー」
アリアの呼ぶ声がして、メリアはその方向―路地裏に入っていった。
「アリア、元気にしてたか?」
「飯、食ってるか?仲良くやってるか?父さんの話は聞いてるか?」
「あぁ、もううっさい!」
2人の男性に囲まれたアリアが言うと、その囲んでいた男性がこちらを向いて冷静に話し出す。
「すまない。久々に会えた妹と話したくて、つい邪魔をしてしまった。無礼を許して貰えないだろうか」
『い、い、いえいえっ…。それより…御三方は、兄妹?何ですね…?』
メリアが控えめに尋ねると、スラッとした体型の、少々怖そうな男性が答える。
「あぁ、そうだ。君がメリア・ファスリードという者なのだな?」
『はいっ…!』
反射的に答えると、アリアの兄妹の1人が頭を下げて噛み締めながら言う。
「こんな変人な妹と仲良くしてもらっていること、感謝するっ。俺はカディ、そいつはシレアン。名前は覚えなくていいのでっ…」
(皆、アリアが変人って分かってるんだ…)
『い、い、え、あ、い、え、いえいえ…!』
「…メリアぁ」
呼ばれて振り向くと、アリアがじっと自分を睨んでいてたので、メリアは自分から話すことはしなかった。
「…おっと、大切な青春の一時を奪ってしまった…。どうか楽しい祭にしてくれっ!じゃあまたっ」
(あ、あはは…)
素早くその場を離れる2人を、メリアは苦笑いで見送るしか無かった。
夕日が完全に沈み、夜になると段々人の行き交いが激しくなってきた。
夜には舞などの披露の後、最後の演出で祭の幕を閉じる。
披露は王城の前で行われる。
この時間からは、披露を見るため、王城は人が増えるだろう。
しかし、メリア達は興味が無かったので、変わらず露店を廻っていた。
そのお陰で、手には持ちきれないほどの沢山の紙袋があった。
「どうせなら、開けたところで見たいよね…。私のお勧めの場所、あるんだけど行く?」
『じゃあ、頼んでも良いですか?』
「勿論!じゃあ今から行っちゃおー!」
アリアが踏み出したのは裏路地。
そこから走って、柵を通り越して丘の上に上る。
…素手で。
メリアも飛行魔術で上っていって景色を見ると、その光景に息を飲んだ。
『綺麗…』
「うげっ」
アリアの3回目…以下省略。
「お嬢様。言葉遣いとマナーがなってないですよ」
アリアの屋敷にいた使用人の1人だ。
「私はお嬢様の一応護衛なので。お辞儀の行動をずっと見ていました」
『へぇ……?』
メリアはその場を見ていたが、アリアは言葉を返さない。
ようやく口を開いたかと思うと、ムスッと呟いた。
「…久しぶりなんだもの。友達と行くの」
それを聞くと、使用人は微笑んだ。
その瞬間、音が鳴った。
使用人は音に気付くと、手に魔法陣を展開し、周囲に氷のナイフを生み出す。
メリアは魔力探知の詠唱をする。
(上からっ…!)
「―蔓魔術、第17章、荊棘の槍―」
「え、え?」
アリアは理由も分からない様子で2人を見る。
「私もやるからって!」
「―追跡、闇魔術、第22章、闇霧、幻影。―」
アリアが詠唱を終えると、3人の死角に何人かが地面に足をつく音がした。
「僕達は何もしないよ」
そして、結界で攻撃を破壊した。




