【4章-4話】図書館と階段で
その時、アリアが歌ったのは、音程の激しい歌だった。
(えっと、なんて言おう…)
「…アリアって、鼻歌とかお話を読むのは上手だけど歌は…なんて言うか、下手…だね」
メリアは自分が思ったことを出来るだけマイルドにして言った。
「無理に気遣われると、余計悲しいってぇ。ちなみに、何のお話か分かった?」
アリアが話していたお話について考える。
歌はよく分からなかったが、お話だと何故か聞いたことのあるような違和感がある。
アリアが話したお話の内容はこうだ。
―これは昔昔のお話
山の洞窟に悪い悪い魔術師さんがいました。
魔術師さんは、洞窟を住処として、色々なところでイタズラをしていました。
魔術師さんがしていたイタズラは、数え切れないほど多く、みんな困り果てていました。
でも、その魔術師さんは1度だけいい事をしました。
街に来た火竜の群れを倒したのです。
それについては街の皆も魔術師さんに感謝をしました。
ある日、魔術師さんがまたイタズラをしようとまちに行くと、ある少女に声をかけられました。
「何をしに行くの?」
「皆にイタズラをしに行くんだよ」
魔術師さんは笑いながらそう答えると、すたすたと歩いていきました。
「私も一緒に行っていい?」
そう言われた時、魔術師さんは心の中で喜びました。
そして、少女に自分が知っている魔術や魔法、竜や精霊、幻獣の話をしました。
少女はどんな話でも楽しそうに聞いていたので、魔術師さんはとても嬉しかったのです。
魔術師さんは、話す人がいなかっただけだったのです。
こうして、魔術師さんは少女のお陰で街の人とも仲良くなり、幸せに暮らしましたとさ。
おしまい。―
この中にアリアの…下手な童歌が入る。
メリアが聞き取れたのは、せいぜい「星の歌」や「皆」という単語だった。
(夢で聞いた話に似てる…?)
『で、何で私に話したの?…アリア、…お母さん…?』
「…もう。……ふと思い出したのよ。よく聞いてたお母様の歌付きのお話を。お父様に泊まりの件について聞いたあと、葬儀の連絡があったから…」
『あっ…、ごめん…』
「いいのいいの。ただ単に私が話したかっただけだから。……ほら、そろそろ寝た方がいいよ?」
言われてふと時計を見ると、9時を回っていた。
『…じゃあ、戻るね。また明日』
「また明日」
そう言ってアリアは開けた扉を閉めた。
―レイランド学園の図書館は魔術師育成学園である為、魔術書や魔導書を取り扱っている。
勿論、内蔵されている中でも、小説から資料、歴史書までもある。
内蔵されている書の規模が大きいので、一般でも開放している。
メリアはある書を探す為、図書館に来ていた。
「童話集…は何処かな…」
指で追って、本棚を何度も通って探していると、後ろから声を掛けられた。
「何か探してるの?」
(っ……?!)
声を掛けられたのはメリアとより少し背の高い少女だった。
『ど、童話集を探してて…』
メリアが答えると、少女は手を顎に当てて黙り込むと、直ぐに言った。
「ちょっと待ってね」
『はいっ』
そして少女はメリアが来た方面の逆側に向かって走ったいった。
その間、歩いて自分で探していると、その少女が戻ってきて、手招きをしてメリアを連れていった。
「通り過ぎてたみたい。こっち来てみて」
連れていかれた先は、しっかり童話集が置いてある本棚で、メリアはほっとして少女の方を向く。
少女はメリアに気付くと後ろに腕を組む。
「童話集ね…。あ、私ミレ・キャスバ。高等部1年レイナクラス。図書委員。貴方は?」
『っ、私はメリア・ファスリード…です…。フレイクラスの…』
「そう、よろしく。メリアって呼んでいいかな?私のことはミレって呼んで」
『はいっ。分かりましたっ』
メリアが返事をすると、ミレは微笑んで言葉を返す。
「メリアって、入学のとき生徒代表挨拶したんでしょ?あれ、凄かったよ!」
『あ、ありがとうございます……?』
「感動したぁ。メリアって凄いんだね…」
(やっぱりこの学園は、魔術に関心があるんだな…)
納得していると、ミレは「あっ」と何かを思い出す。
「そう言えば何で童話集なんか探してるの?」
『ちょっと気になる話があって…』
本を探しながら答えると、隣でミレが手伝う。
「それってどんな話?」
『魔術師さんって言う人が出てくる話だったと…』
「それなら…」
ミレは下から2番目の段から1冊の本を抜き取ると、メリアに渡した。
「ここに書いてあると思うんだけど、少し中身見てみて!」
渡されると、メリアは早速開いてパラパラとページを捲っていく。
しばらく捲ると、手を止めて呟いた。
『〈イタズラ好きの魔術師さん〉…』
「あぁ、それね。私もよく聞いてたな…」
(私が夢で聞いたものとは違うけど、アリアから聞いた話と同じ内容だ…)
『この話って、色んな地域とかで、内容が変わったりしない?』
ミレは「うーん」と声を出す。
「結構有名な話だから、変わったりとかはしないかも…。でも親が内容変えて、何か伝えたかったりしたかったんじゃない?」
『そっか…』
メリアが本に目を戻すと、ミレは思い出したかのように手を叩いて言った。
「それ、1回借りてみたら?夏休み入るし」
『じゃあ、そうしようかな…?』
ミレに本を渡すと、貸し出し記録を書いてもらってメリアは本を借りることにした。
その帰り、教室に戻ろうと階段を登っていると、聞き覚えのある声に呼び止められた。
「あら、メリア様」
エイラだった。
『ど、どどうも…』
「大活躍と聞いたのだけれど、如何なされて?」
『いや…、私は何もしてないんですけど、それって誰から聞きました…?』
「ナウアール殿からですけれど……。とても嬉しがっていられたと」
メリアはポカンと口を開いて聞いていた。
すると、下ってくる人達の中で2人、エイラに声を掛けた。
「お、エイラだ」
「あ、ほんとだ」
見ると、見た目が瓜二つの2人の見た目が幼めの青年がいた。
「あら、御機嫌よう。ノディスとロディスじゃない」
「また男を騙しに行くのかなぁ?」
1人が言うと、エイラは微笑んで杖を突く。
「あら、あら。自分から殺されに来たのかしら?」
「おいおい、勘弁しろよ。…で、そっちは?」
気付くと階段を登りきっていて、メリアは驚いた。
1人がメリアの方を見ると、メリアはガタガタと震えて1歩下がる。
「あ、僕知ってる。メリア・ファスリード…とかだった気がする」
(あ、あぁ、帰りたいぃ)
『…何か用があるんですかっ?』
「おお、ホントじゃん。あの結界書法魔術どうやるのか知りたかったんだよね」
『いい、いや、ただ組み合わせれば出来るので…。…では失礼しまっす!』
そう言ってメリアはその場を去った。
「…また夏休み明けたら聞こっと」
「そうだね」
そうして2人もその場を去った。
「あら。私、ひとりになってしまったわ」
そう言ってエイラもその場を去った。




