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星が瞬く夜に、願いを捧げます。  作者: 夜花みあな
第1章「魔術師学園入学編」
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【1章-3話】オタクさん

 ―――入学式を無事に終えたメリアは、担任や他の生徒と共に教室へ向かっていた。

メリアは相も変わらず猫背でフードを被っている。

話によると、どうやらクラスは2クラスに分けられているようで、メリアはフレイとレイナに分かれている内の、フレイクラスらしい。

(この学年、色んな意味で凄いのが多いわね…)

メリアの担任になったのは女性教師、エウィル・ランディ。

彼女はこの学園の治癒魔術担当教師であり、学園の中で比べれば、随分若い方だ。

エウィルは、生徒用入口から入って直ぐにある螺旋階段を、使って4階へ上った。

エウィルには見慣れた景色、歩き慣れた校舎。

エウィルは特に何も思わず、生徒を引き連れて教室へ向かった。


(やっぱり綺麗だな…、あんまり見たことないような構造だし…)

縮こまりながら、メリアは廊下のあちこちを見渡す。

どこを見てもシンプルな作りだが、普段見ないような装飾で、窓の形もメリアの故郷の建物とは程遠かった。

例えで言うと、メリアが見慣れた窓の形は四角形が多かったが、この学園は上部が丸みを帯びていたり、縁が大きいので、開放感がある。

隅々まで見ているうちに、担任のエウィルは、登った先の左手に曲がって直ぐの教室に入っていった。

どうやら、ここが教室らしい。

続けてメリアが扉を開けると、エウィルは大声で指示を出した。

「今日は好きなところに座っておいて下さい」

メリアは教室の窓側の隅の方の席に座り、身体を丸くしていた。

(どうせ、誰も隣に座らないんだな…)

心でそう思っていると、隣から椅子を引く音がした。

(っ…?!)

反射で、思わず机に蹲る。

すると、隣から優しい声がした。

「ねぇ」

メリアが隣を見ると、長い髪を結った、上品かつにこやかな笑みを浮かべた少女がいた。

(どうせ罵詈雑言言われるんだろな…)

軽く震えながら、その少女に顔を向ける。

「私、アリア・ラクアレーン。よろしく」

アリアは変わらず笑顔で言う。

(か、返さないとっ…)

メリアは震えた声で詠唱をする。

「―結界書法魔術。っ―」

すると入学式と同様に結界が舞い、結界に文字が書かれる。

『私は、メリア・ファスリードですっ。よろしくお願いしますっ…』

「よろしくね…!」

すると、アリアは悲しげな顔で言った。

「うっ…敬語なんてやめよう…!」

(???)

メリアは内心驚いた。

自分にこんなに話しかけてくれる人がいたことに。

『無理です無理です無理です無理です』

そう書くと、アリアは直ぐに反応した。

「えぇ…、まぁいいや」

『…あ、すみま……せん』

指を弄り、更に縮こまる。

けれど、気にせずアリアは手を合わせて早口で話し始めた。

「まぁいいけど私はタメで話すね入学式の生徒代表挨拶の時の魔術凄かったよ見た事ないから何処の魔術書に書いてあるのかと思ってたんだけど絶対見た事ないから凄いなて思ったんだけど今度教えてくれないかなでもその前に聞きたいんだけど自分で魔術作ってどうしたらこんなに詠唱が短くなるのか教えて欲しいんだけどこの後私の寮の部屋に来て一緒に語り合いたいんだけどその前に…」

(だけどが多い…)

そこにツッコミを入れるのは驚きだが、アリアは魔術オタクだったのだ。

メリアはアリアがどんどん話している間に、メリアは震える手を制御しながら結界にメリアは素早く書く。

『先生からの話があるので、そろそろ…』

メリアはなんとも言えない顔で、結界をアリアに見せつける。

「あぁ、そうだった!ありがと!」

そう言うと、アリアは前を向いた。

初日から怒られないといいな、と心配していたメリアだったが、エウィルにはギリギリで見られなかったので無事だった。

それから、教室での最初のホームルームが始まった。


―――ホームルーム終了後、メリアを含め、クラスメイト全員の机には大量の魔術書や魔紙を使ったノート、問題集や購入物の書類が積み上げられていた。

メリアは学園指定の鞄にそれらを次々と入れる。

(こんなに多いなんてぇ、聞いてないよぉ…。やっぱり帰りたい…)

そう思いつつ詰めていくと、段々と鞄の隙間が無くなっていく。

やがて完全に隙間が無くなると、メリアは手を止める。

隣で準備をしていたアリアは、そんなメリアを見て言う。

「やっぱり多いよね…。どうしよ…、……そうだ!風魔術で運んで行かない?」

『そうですね…』

メリアが答えると、アリアは微笑みを浮かべて、掌を山積みになった本類に向ける。

「―風魔術。第40章、風送り。―」

アリアが先に詠唱をして風を操る。

その後に、メリアは深呼吸をして詠唱をした。

「―風魔術。第40章、風送り。―」

詠唱を終えると、魔術書諸々は浮き上がった。

「詠唱する声は綺麗なんだけどな―」

アリアは独り言をポツリと呟いた。

メリアには聞こえなかったようで、反応は無かった。


そして、2人は教室を後にした。

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