【3章-4話】こっちの方が面白いと思うんですけど(頭に掌を落として)
「ほら、僕が剣を抜くまでもなく、仕事無くなったじゃん?」
エブがリーアナに向かって自慢するように言う。
「別に、私が言ったから無くなったんでしょ?」
「いや、私のお陰でしょ?!」
3人はそう言い合って竜討伐チームの方に向かう。
(結局、私がやったら全部消えちゃったんだけど、精霊も一緒に…。怒られるかな…)
精霊は、言わば自然と同意義。
退治として悪心を取り除き、自然へ還すのは許されているが、存在ごと消すのは刑に処される。
精霊を消しただなんてバレたら、最悪牢獄行き。
アリアはそうならないことを祈って、言い合っている2人を睨んだ。
一方、メリア達はと言うと。
続く、地竜と水竜の討伐に向けて作戦を練っていた。
「今日で西側制覇!とか無いですかねぇ」
「それは滅多に無いと思え」
『あ、あははー』
メリアは苦笑いで話を聞く。
「メリアは、今後、絶対、あの詠唱はするなよ?絶対な?」
物凄い圧で、メリアは押し潰されそうなる。
メリアが首を縦に振るのを確認したオリバスは不意に呟いた。
「それで俺が捕まったんだよ」
(…?)
メリアが固まると、フェアンが肩を揺らして、竜の方を指す。
「そろそろ行った方がいいんじゃないですか?」
「…そうだな。よし、メリア、あれを倒せ」
オリバスが竜全体を指す。
(えぇえ?)
『何でですか?!』
「風の便りで聞いたんだよ。ちょっとやってみてくれるだけでいいから。あの、願うやつ」
(そんな簡単に言っていいことじゃないからぁ)
『え、えと…いやぁ』
指を捏ねて目をチラつかせる。
すると、フェアンがにやけながら言う。
「丁度夕方だし、僕も見たいなー。なんちゃって」
(断れないやつ…)
メリアはそう確信すると、2人に背を向けて杖を取り出し、詠唱を捧げた。
「[この夜に集い現る星々。我の代償の誓いに従い―]」
「……何してるんですか?」
メリアはビクッと跳ねて後ろを振り返る。
「契約精霊か…」
オリバスを横目に、ラリアードは言う。
「契約石を持ってれば、何処であろうとも出れますからね。私」
『良かったぁ』
メリアが胸を撫でると、ラリアードがこちらに向かって近づいてくるのが見えた。
(え、えええええ??)
やがてメリアの直ぐ前まで来ると、無言で掌を落とした。
「こっちの方が、面白いと思うんですけど…。レンディット殿?」
メリアはそこで気を失った。
しばらく経ったあと、メリアは目を覚ます。
目の色はやはり先程とは異なった、ある意味吸い込まれそうなグレーに変わっていた。
その後、人格は、ずっと無口で座っていた。
3人が注目すると、やっとの思いで立ち上がり、呟いた。
「あれを消せばいいのかな…。……魔力少な」
そして無表情のまま杖を取り出して詠唱をした。
声はまるで魂の無く、1人取り残された、孤独な声だった。
「―深淵への誘い、終焉の幕開け―」
終えると、地面に魔法陣が展開される。
その人格が杖を一息に下ろすと、魔法陣は闇の穴と化し、抵抗することもなく竜を引きずり込む。
同時に結界を解除すると、自ら人格操作の詠唱をし、静かに人格を戻した。
いつの間にかラリアードは消えていた。
その間の起こったことを、他の2人は声を出さず、呆然と見ていた。
その後、メリアは人格が戻り、アリア達と合流すると、宿の方へ飛行魔術で飛んでいった。
(身体が重い…)
メリアは魔力がほぼ無いに等しくなった為、アリアと歩いて宿へ向かった。




