【3章-1話】アバント領への移動
数日後、水降月の第1日。
朝早くから、メリア達は集まって出発準備をしていた。
「私も行くなんて思わなかったよ…!ありがとうメリア。……何でレジリアがいるの?」
「何でだよー。別にいいだろ?僕もメリアに推薦されたんだからな?なぁ、メリア?」
メリアは戸惑いつつも、素直に思ったことを言った。
『えっと、推薦はしましたけど、本当に来るとは……正直思ってなかったです…』
「ほら、メリアも本気にしてないから。残念でした」
アリアがすかさず煽る。
今のこの状況に、メリアは苦笑するしか無かった。
すると、二人の後ろからひとつの影が現れた。
「お二人共、言葉遣いが荒いですわ。それに、煽り合いも惨めに見えます。メリア様の方がよっぽどまともではなくて?」
エイラの鋭い指摘に、二人は傷ついたのか言葉の行き交いが無くなった。
(……エイラ様、以外と強い?)
メリアはフムフムと考察していると、手を叩く音と同時に拡声魔術で広げた声がした。
「注目。今日から我々はアバント領に1ヶ月程度に滞在し、魔族や竜退治、被害を受けたところへの復興の手伝いをしに行く。―」
話しているのはロヴィリアだった。
特派員代表として指示を出してくれるのだろう。
「今から飛行魔術で移動し、アバント領に行く。そうすると魔力が足りなくなるから、1日休息を入れる。明日から行動開始だ」
(やっぱりみんな魔力量を気にするんだ…)
ロヴィリアが声を張って説明する中、メリアはそんな事ばかり考えていた。
――しばらく経って説明が終わると、後ろにいたナウアールが優しく言う。
「それでは、出発…!」
その瞬間、その場にいる全員が飛行魔術の詠唱を始めた。
「―飛行魔術。―」
そう皆が詠唱をする中、1人だけ違う詠唱が聞こえた。
(…ん)
メリアは1人に目を向けて、遅れて詠唱をした。
――アバント領に向かう途中、メリアは1人ずつフードから見て、メンバーを確認していた。
(資料の方を見ると〈フェアン〉って言う人がいるらしいけど、誰なんだろ…?)
足元で次々と景色が変わる中、メリアは冷静に資料をじっと見て周りを見るを繰り返す。
再び辺りを見ると、横側から静かな声がした。
「僕だよ。〈フェアン・ワリアーデ〉は」
メリアは急いで距離をとって、横を見ると、精霊並に無表情な青年がいた。
『こ、こんにちは……?』
「別にいいけどさ、2年のフェアン・ワリアーデ。よろしく」
『2年生ということは…、この中で1人ですか?』
気が付いたメリアは静かに聞く。
「いや、エイラも2年だけど?」
衝撃の言葉に時が止まる。
(エイラ様って2年生だったんだ…)
「まぁ見た目が幼いからね」
フェアンが言うと、頭上を突風が通りすぎたような感覚がした。
「天に昇る覚悟は出来て?」
「いやいや、まだダメだって」
どちらも動揺を一切しないので、メリアは凄いものを見るような目でやり取りを見ていた。
――そんなこんなで、メリア達はアバント領に着いた。
流石は北側の領。夏なのに涼しい。
自然も断然に広大で、鳥々の囀りと木々が揺れる音が心地いい。
だが、楽しむ間もなくロヴィリアが指示を出す。
「今日はもう宿で休息とする。明日からに備えるように」
ロヴィリアが言い終えると、メリアは伸びをしてアリアと共に宿に入る。
領の中心部にある宿とはいえ、学園の寮ほどに豪華だった。
アリアとメリアは部屋が同じになった為、一緒に扉を開ける。
「ベッド、すっごくフワッフワ!それに、景色良くない!?見て、メリア!」
そう言ってはしゃぐアリア。
対して、メリアは静かに返事をすると控えめに荷物整理をする。
(魔術書とか無いかな…?せめて小説とか…)
そう考えて、坦々と整理の速さを速めた。
整理を一通り終えたメリアは、ベッドに寝転んでいるアリアに向けてひと声かける。
『……夕飯食べに行くよ?』
(明日から退治…。気合い入れてかなきゃ…)
メリアはアリアを連れて明日への備えとして、食事に気合いを入れた。




