【2章-9話】不自然な一言
2回目の実践魔術科の授業の始まり。
メリアは胸を押さえながら、何かを探すように周りをチラチラと見る。
(ま、まさかだけど…、いるわけないよね…?)
メリアが首を振っていると、担当教師のバイランディがとんでもないことを言った。
「最初から何日かぶりの授業だが、これからは仮戦闘や基礎実践も含めて毎日あるからな」
(誰とも話さないならいいんだけど…)
「ところで今日は学年を超えてでの実践だ。今日は違う学年の生徒同士でペアを組んでおいた」
(だっだ、大丈夫。身体操作魔術か心読魔術を使って即終了にしちゃえば話さなくて済む)
メリアの表情は曇っていく。
「ペアは個々で確認してなー」
そう言って名簿が書いてある魔紙を配る。
メリアは、ガタガタと手を震わせながら受け取って名簿を見る。
「えっと…、メリア・ファスリードと、あ、あ」
「良かったよ。ペアが君で」
(無理無理無理無理無理無理無理無理っ)
目の前にいたのはナウアールだった。
更に運悪く最初に戦闘するらしい。
「行こうか」
手を引いてメリアを連れていくも、メリアはとっくに放心状態で気絶していた。
ナウアールは肩を叩いて起こすと、メリアは思わぬ状況に目をパチパチと開閉していた。
(人格が変わってない……?)
メリアが辺りを見渡すと、自分は既に戦闘用の結界の中にいた。
「あ、起きた」
そうナウアールが言うと、結界中にバイランディの声が響いた。
「両者、始め」
メリアは急いで体制を整えた。
『っ、すぐ終わらせて帰りますっ』
そう結界が心の中を代弁した。
――戦闘が終わり、授業が終わる。
メリアはポカンと口を開いたまま、その場に佇んでいた。
それを気にせずに、ナウアールはムズムズとした笑顔で気軽そうにメリアに話しかける。
「やっぱり凄いね。将来は考えてる?」
(…?)
『今のところ特には…』
「へぇ、そっか」
そう呟くと「またね」と言って飛行魔術の詠唱をして、校舎へ戻っていった。
夜、部屋に戻ったメリアは、椅子に腰を掛けて天井を見上げる。
すると、契約石からラリアードが現れて、メリアの隣に控える。
「今日はいかがでしたか?」
『言うほどではないんですけど…、色々気づいたことがあって…』
「そうでしたか。紅茶だけ淹れましたら、契約石に戻るので、何かあったらお声掛けを」
そう言うと、瞬時に準備してあった紅茶を淹れてメリアの前に置くと、足を揃えてお辞儀をすると契約石へ戻っていった。
メリアは紅茶に口をつけて考える。
(ナウアール様の言っていたこと…。結局どういうことか分からない…)
そうして授業を思い出す。
攻防が続く中、ナウアールは何処か分かっているような足取りで攻撃を避ける。
最後に、メリアが攻撃を仕掛ける直前、ナウアールが放った言葉であり、メリアが気にしていた言葉。
「――今度こそ」
(どうしても、関わりが無いようにしか…。―もういいや。)
メリアはそこで考えるのをやめて、ベッドへ潜り込んだ。




