【2章-8話】秘密の学園探検
1週間ほど経ったある日、メリアは興味で学園の校舎を回っていた。
きっかけはあの出来事。
2日前ほどに、メリアが科学魔術の移動教室に向かうべく、移動しようとしていた。
後ろからアリアが心配そうに追っている。
そしてメリアはある部屋の前で立ち止まる。
(ここが科学魔術の教室…?)
メリアが入ろうとしたのは学園長室。
迷いなく入ろうとしたメリアに、アリアは走りながら言う。
「メリア!そこ違うよ!」
しかし言うのが遅かった。
メリアは学園長室に入ると、学園長と鉢合わせしてしまったのだ。
(あ…)
声を出そうにも出ないので、メリアは一見恐ろしげな顔で硬直した。
「新入生だねぇ。迷っちゃったかな?」
「ま、間違えました!すみません!!」
アリアが代弁するが、メリアは変わらず動かない。
見ていられなかったアリアは、引っ張ってその場を後にした。
(…ご、ごめんなさいっ!)
アリアが後に言っていた話だと、メリアは白目を剥いて、ガチガチに身体が硬直し、物凄い滝汗でそれはそれは凄かったそうだ。
(あの時は危機一発だった…。もう思い出したくもない…)
身体が小さく震わせる。
メリアが次々に陰を移動する姿は、よく目立っていた。
「ここが職員室、学園長室、事務室。…あ、ここから裏口に出られるんだ…。向こう側が教室で…」
地図を見ながら指を指して確認する。
その階が終わると、螺旋階段を上って行っていちいち確認する。それを繰り返した。
「ここが生徒会室…。向こう側が3年生の教室…これで全部かな…?」
夢中に地図を確認する。
「えっと、君、授業始まるよ?大丈夫?」
(!?)
慌てて顔を上げると、よく小説に出てくるような爽やか系青年がいた。
『大丈夫です!あ、あぁ、ありがとうございますっ』
それだけ書くと、メリアは全力で教室に向かって走り出した。
「あの子が噂の…」
そしてハッとすると、その青年は急いで3年の教室に向かっていった。
―昼休み。教室で図書室で何とか借りた小説を読んでいた。
それも魔術系の。
(ここで、地属性の攻撃にすればいいのに…)
そう言ってひとつひとつ文句を言う。
それが孤児院にいた頃に身についてしまった癖だ。
「このクラスに“メリア・ファスリード”はいるかな?」
(……え?)
ピクりと反応する。
するとアリアが大声で言った。
「そこのフード被ってる女の子ですよー」
(なんで言うの?!)
心でツッコミを入れたが、その間にアリアに連れられていく。
放心状態になりながら、メリアはとある場所に連れ去られていった。
「うん。君が“メリア・ファスリード”だね」
(…)
目の前に人がいる、それだけで気絶寸前だった。
『えっと…、私何かしましたかっ…?』
まともに顔も見れずに言う。
少しでも気を抜くと、意識が遠ざかる。
「おい、手伝ってやったんだからさぁ、もうちょっとさぁ、なんか無いわけ?」
「これはまた違う話ですから落ち着いてください…」
少なくとも3人はいるみたいだ。
(今すぐ逃げればここから逃げ出せるそのためにはまず光属性魔術で光を屈折して見えないようにして逃げれば…)
そう考えていたのも束の間、人数の多さに呼吸ができなくなり、とうとう気絶してしまった。
―つまり、人格が入れ替わる。
先に言い合いを終えた人物が、メリアの長めの前髪を左右に避けて言う。
「―入学式の件なんだけど、大丈夫だったかな?」
「大丈夫じゃないかしら?」
目を開けると、メリアの目はグレー色に。
「「えっ?」」
メリアの人格が見た人物は3人。
爽やか系青年、メリアを見下すように見る青年、落ち着いた様子の華奢な少女だ。
だが、1人だけは違って、微笑んで答える。
「人格が変わったんだね。やっぱりそうか」
「あら?メリアってば友達いたのね。教えてくれれば良かったのに」
口元に手を当てて言う人格に、続けて爽やか系青年が言う。
「話し辛いだろうから、まず紹介からするよ。彼はロヴィリア・ルンディス。彼女はサリアル・テナード。そして僕はナウアール・スウェディ。」
「そうなのね。でも、それはメリアに伝えといた方が良いんじゃあないかしら?」
「多重人格なのは分かっているのでね」
朗らかに笑いながら当然のように言う。
「ふふっ」
人格は静かに笑うと、詠唱をした。
「じゃあ今度は本人にお願いね。
“変えさせない”ようにするから。
―人格転換魔術。第17章5節、主返上―」
フッと風か吹くと、人格はメリアに戻ったらしく、メリアは小刻みに震え出す。
そして、すかさずナウアールは倒れないように顎を近寄せる。
「今度は君の口から聞かせてもらうよ。僕、心配したんだからね?」
(…え、あ…。人格…)
『大丈夫でしたっ』
メリアは脱兎の如く走り去っていった。
「久々に会えたのに…」
ナウアールは何処か悲しそうな声で呟いた。
「また今度」
その瞬間、魔術の詠唱が聞こえた。




