【2章-6話】嫌っ...!
その日の空は、どこを見ても真っ青の快晴だった。
メリアは頭を抱えながら、いつものように震えつつ、教室の窓から空を見上げる。
次の授業は恐れ多い実践魔術科だからだ。
メリアは両手を握って胸の辺りに当てる。
(この世から実践魔術科を無くして下さいお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いします)
心で連呼する度、段々と身体が大きく震えていく。
すると、何処からか駆ける音が聞こえてくる。
「メリアー」
振り向くと、そこにはアリアがこちらに向かって走ってきていた。
「もう5分前だからさー、行こーよー」
メリアの手を握って上下に振る。
(行きたくない...)
メリアは机に蹲る。
アリアは怒り顔で腕を引っ張り、教室の外へ出そうとする。
メリアは為す術も無くスルスルと引きずり出されて行った。
(なんで…)
メリアの顔は半泣き状態だった。
メリアが入ったクラスは校舎の裏側の森で授業を行うらしい。
ビクビクと小刻みに震えながら木と木の蔭を渡り歩く。
もう少しで開けた場所に出る、というところまで来たとき、肩に何かの感触が伝わる。
「メ・リ・ア!」
泣き出しながら振り返ると、そこには変人ことレジリア・エンヴィーンがいた。
(れっ、レジリア様っ?!嫌っ、嫌だっ)
どうやら、メリアはラリアードが、レジリアが変人と言っていたことを気にしているらしい。
メリアは口を小さくパクパクして固まる。
レジリアはメリアを見ると何かを察し、言った。
「今日も魔術楽しみにしてるからね〜」
そういうと、メリアより先に、早足で向かっていった。
(え?)
思わず人格操作魔術の詠唱をする。
「―人格操作魔術、停止。―」
メリアはレジリアが通り過ぎていくのを見ながら、その場に崩れ落ちた。
「早くしろー」
そうバイランディが呼ぶ。
(無理です)
うわーんと泣き叫ぶ声が森中に響いた。
空中に浮かぶ感覚。それにメリアは悟る。
(あっ、とうとう私も死んだんだ...)
メリアは徐々に目を開く。
「起きまして?」
声を出したのは長い明るい茶髪を伸ばした、お淑やかそうな少女だった。
『えっと...』
「申し遅れました。私、エイラ・フェリンドールと申します。今から私達の対戦が始まりますけれど、お身体のお調子はよろしくって?」
『大丈夫です...』
(〘エイラ・フェリンドール〙...何処かで聞いた事あるような...あっ...!)
昨日の発表された実践魔術科のクラス発表。
メリアの下に書いてあったのがエイラだ。
(フェリンドール…、あ、ソント領の…侯爵令嬢?だっけ…)
『よ、よろしくお願いします…』
「えぇ、こちらこそ」
エイラは、ローブの下のスカートの裾を持ってお辞儀をする。
「本日の対戦、楽しみにしております。手加減は無用ですので、なんなりと叩き込んでくださいませ」
『いや…、先輩は舐めてはいけない気がするんですが…』
「……。あぁ、暇潰しがてら世間話でもしましょう。…メリア様。最近のこういう噂、耳にしません?」
メリアが苦笑いで言うと、エイラは無言の間の後、世間話を始める。
「――リバン王国との仲が危うくなってきている、とか」
『リバン王国と…?』
「そうです。以前から不仲なのは存じ上げておりましたが、最近にかけて酷くなりましたというか…」
「…それで、私思いまして」
エイラが話してくれる中、メリアは頭の中の違和感を探し出していた。
(何か忘れてるような...)
メリアはふと下を向く。
瞬間、とんでもない事実が見えた。
同時にエイラが「そう言えば…」と追い打ちをかける。
「物体浮遊魔術を使っておりますけれど、如何致しまして?」
――そうだ。私、浮いてるんだ。
状況に気が付いたメリアは、天を仰ぐ。
その後、エイラは気がついたかのように言った。
メリアは急いで解除の詠唱をする。
(言うのは早く言って欲しいです…)




