【2章-3話】破壊
初めに、メリアは杖を生み出し、手に取る。
流石の人間アレルギー陰キャのメリアでも、戦闘となれば話は変わる。
(まず最初はっ)
「―星魔術、第35章、流星の衝突。―」
杖の先に魔法陣が描かれる。
メリアは素早くクレスに向けると、光線が湧いてクレス目掛けて飛び出す。
(おっと)
クレスは余裕な表情で避ける。
光線は地面に叩きつけられ、飛散する。
結界の外で他の生徒の視線が一気にクレスに向かう。
クレスは攻撃に構いもせず、大声で詠唱をする。
「―火魔術、第11章、火炎の見潰し。―」
掌をメリアに向けると、魔法陣の先に皆同じ形の炎が3つほど現れ、メリアに一斉に向かう。
メリアはそれを予知していたかのようにさっきから始めていた、詠唱を始める。
「―飛行魔術。―」
メリアは飛行しながら、あちこちに行って炎の攻撃を避ける。
しかし、この魔術は追跡効果の付与がされている為、普通はどうやっても逃げられない。
次々に炎の攻撃がメリアに向かう。
メリアは速度を上げて炎から離れる。
ある程度離れたところで、メリアは後方を向く。
杖を炎に向けると、詠唱をした。
「―結界魔術。第8式。―」
結界が炎を囲み、圧縮したように消えていく。
(これでクレスに攻撃ができるかな…)
メリアが再びクレスの方を向くと、一瞬のうちに目の前にクレスが現れた。目の奥がはっきり見える。
獲物を捕えようとしている目だ。
クレスはもう少しで詠唱を終えそうだ。
「…っ!」
メリアはクレスの詠唱に被りつつも、必死に早口で詠唱を始める。
「―結界魔術…!第24式!―」
結界魔術の詠唱は攻撃魔術より圧倒的に短い。
メリアは先に詠唱を終えると、目の前に結界を展開する。
(…っ!)
不安げな顔でクレスを見る。
「―日魔術。第62節、日の沈み。―」
クレスが詠唱を終えると、掌に魔法陣が描かれるが、そのままの状態で飛行魔術の詠唱をし、メリアを見つめる。
クレスは魔法陣をメリアに向けて、真顔のまま言う。
「―まだ終わらせねぇかんな?」
そして、その場は明るい光に包まれる。
結界に絶え間なく、攻撃が降り注ぐ。
(この魔術っ…何だか…)
攻撃を跳ね飛ばし、また距離をとる。
メリアは口元を震わせながら詠唱を始める。
「―雷魔術っ、第ぃ、21章、雷の怒りっ―」
杖を天に向ける。
すると、天から無数の魔法陣が浮かび、個々から雷が落ちる。その速さは異様に速い。
苦戦しつつ、クレスは結界魔術の詠唱をして防ぐ。
「―星魔術、第50章、天聖の星の閃光線。―」
「チッ…」
結界魔術の詠唱をして、またメリアに押される。
星の光が結界に激しく当たって弾ける。
クレスは一通り弾くと、詠唱をした。
「―炎魔術、第93章、蘇りの紅炎。―」
地に近付くメリアの足元に魔法陣が展開し、炎が発生する。
「え、あ、えぇ」
再びメリアが上に飛ぶと、魔力残量を確認する。
(残り5分の3位ってところかな…。この後どうしよう…最小限に抑えてクレス様の残量見て…)
頭の中で他人の魔力残量を視ることが出来る魔術、魔力視の詠唱と術式を辿る。
(魔力視魔術…何だっけ?)
最近習ったばかりで、メリアの頭に直ぐ思い出せない。
その間に、クレスは詠唱をする。
「―蔓魔術、第5章、蔓の縄。―」
(え、待って…)
「お返しだぞ?」
メリアが前に放った蔓の3倍近く太い蔓を、メリアに伸ばす。
(え、え、え?)
目を丸くしながら右往左往する。
「―風魔術、第14章、斬風巻風。―」
追い討ちで攻撃されると、メリアはやっと魔力視の詠唱を思い出す。
(えっと…)
「―魔力視魔術。―」
一瞬だけ、クレスの魔力残量が見える。
(1020の内の765…?!4分の3じゃ…?!)
検算してみよう。
1020÷4=255、255×3=765。合っている。
(ということは1回の魔力使用回数は7回だから…)
「32.99999999…ということ?!」
全然違う。33.57142857142857142…だ。
検算しなくても分かる。
どうしたらそうなるのかがよく分からないが、さて置いてメリアは詠唱をする。
「―風魔術、第69章、曲風の風神への捧ぐ嵐。―」
風魔術を風魔術で力を削ぐ。
時折、クレスに向かう攻撃を、クレスは慣れた手捌きで坦々と避ける。
その顔は呆れ顔だった。
「こんなもんか…」
そう言って溜息をつく。
(…)
そこでメリアの感情が弾けた。
「―は?」
人格は代わっていないようだが、それ以上に威圧感がとてつもなく強くなる。
クレスは口端を上げてメリアを見る。
―興味の目で。
途端、辺りが暗転したかと思うと、目の前には杖をクレスに向けたメリアと、個々に分かれたルビーレッド、ホリゾンブルーなど、基本魔術14種の魔法陣があった。
それぞれに追跡、強化式が徹底に施されている。
(やっべ)
クレスは口端を戻す。
仮に、14属性同時攻撃されたとして、なんて事ない。
問題なのは、その攻撃だ。
その攻撃は大魔術に匹敵する12属性5段魔術のうちの3段目。
即ち、終わりなのだ。
メリアを見ると、目に光がない。
部屋には魔術に魔力が注がれている音だけ聞こえる。
クレスに詠唱させる隙さえ与えない。
「―破壊。」
切りつけるようにそう呟くと、クレスに向けて大魔術が降り注いだ。
「やっぱやべぇな…」
それだけ言い残し、クレスは為す術なく飲み込まれて行った。
メリアの目が輝いたような気がした。




