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第十九話 いざ、はじめてのダンジョン探索!

 ダンジョン探索──とは簡単に言ったものの、先日までモンスター退治すらしたことがなかった俺にとっては初めての経験だ。

 

 なので、その日はミリネアと一日かけて準備をして、翌日に街を出発することになった。


 まず何より、ダンジョン探索で必要なのは「明かり」だ。


 松明、ランタン、魔導ライト──。


 この世界には多種多様な照明具があるが、俺が選択したのはランタンだった。


 一番安価なのは松明だが燃焼時間が短く、特定のモンスターを探す今回の探索には向いていない。


 逆に最も時間が長いのは魔導ライトだが、魔導具を用いている照明器具なのでべらぼうに高く、ようやく貧乏人から抜け出した俺が買うのは無理だった。


 ふたり分のランタンと燃料に使う油……それと、ダンジョン「溜毒の窯」に出没するモンスターの情報を購入して、翌朝、西の山岳地帯を目指して出発した。


 30分ほど乗り合い馬車に揺られ、到着した小さな街からは徒歩で向かうことになった。


 そして、険しい山に入って森林地帯を歩くこと1時間。

 ようやく目的のダンジョン「溜毒の窯」に到着した。


 崖の側面にぽっかりと空いた入り口からは、少しだけツンとした刺激臭が流れでている。溜毒という名前だし、なにかしらの毒が溜まっているのだろう。


 一応、解毒ポーションは用意してきたけれど、探索には細心の注意をはらわないといけないな。



「……アンピプテラはダンジョンの最奥にいるという話だが、他のモンスターにも注意したほうがいいな」



 ダンジョンの入り口でランタンに火を灯し、ポーチの中の携帯品の確認をしながらミリネアにそう伝える。



「そうですね……私のスキルで周囲探索しながら進みますか?」

「そうしてもらえると助かるが、先にモンスターの情報を共有をしておこう。戦闘が始まってからだと遅いからな」 



 情報によると、このダンジョンでは3種類のモンスターが確認されている。


 まず、遭遇確率が一番高いのがネズミのモンスター「ダンジョンラット」だ。


 ネズミと言ってもイタチほどの大きさがあるダンジョンラットは、硬い岩をも切り裂くという強力な爪による攻撃を得意としている。


 身のこなしも素早く、常に群れで行動しているため注意が必要だ。


 だが、このダンジョンで最も危険なのはダンジョンラットではなく、「アラクネ」という蜘蛛のモンスターだ。


 彼らの個体数は一番少ないが、遭遇したDランク冒険者パーティが一瞬で全滅したなんて話もある。


 その原因になったのが、アラクネの口から放たれる糸だ。


 ヤツらは粘着性のある糸を吐き、獲物の自由を奪った上で鋭い牙と毒で襲いかかるらしい。


 その糸をどうにかしないとまず勝つことは不可能なのだが、弾力性があるため衝撃に強く、逃れるには焼き切るしかないのだとか。



「……ということは火ですね。ランタンを使って燃やしますか?」

「そうだな。いざというときのために、いつでも使えるように油を準備しておくが、先に別のモンスターを探しておきたい」

「別のモンスター?」

「ああ。レッドキャップというモンスターだ」



 そいつがこのダンジョンで確認されている3種類目のモンスターだ。


 レッドキャップは赤い肌をしたゴブリンで、ゴブリンの上位種にあたる。


 普通のゴブリンより知能が高く、自前で装備を作っているらしい。なんでも武器に毒を塗って、攻撃力を高めているとか。


 さらに、彼らは炎系の魔術を使ってくるのだという。



「アラクネに遭遇する前に、レッドキャップから炎系の魔術を奪っておきたい」

「……あっ、なるほど! トーマさんの【不正侵入】スキルで炎の魔術を奪ってアラクネの糸を無効化させるってわけですね!」

「そのとおりだ」



 魔術はスキルと違って、この世界の人間でも扱うことができる技術。


 以前に何度か【解析】スキルで見たことがあるし、【不正侵入】スキルを使えば奪うことができるはず。



「……では、行こうか」

「はいっ」



 腰にランタンを取り付け、いざダンジョンの中に入っていく。


 中に入ってわかったのだが、ここは天然の洞窟というわけではなく、遺跡か何からしい。


 外壁や天井がしっかりと作られているし、ところどころに蝋燭を置く燭台のようなものもある。


 すごく歩きやすいし、いざというときの戦闘もやりやすいかもしれないな。



「……キキッ!」



 なんて思っていたら、物陰から何かが飛び出してきた。


 巨大なネズミ──ダンジョンラットだ。


 初めて見るが……うん。デカくてキモいな。


 剣を抜いた瞬間、周囲からぞろぞろと新たなダンジョンラットが出てくる。


 群れで行動してるっていうのは本当らしい。



「キキキッ!?」



 俺の腰に装着しているランタンの明かりに驚いたのか、ダンジョンラットたちが逃げ惑いはじめた。


 これは好機だ。


 このチャンスを活かして一気に終わらせる。



「ミリネア! 手当たり次第にやるぞ! 目についたヤツから仕留めろ!」

「はいっ!」 



 ミリネアと一緒に群れの中に突っ込んでいく。


 攻撃が当たれば一撃で仕留める自信があったが──その一撃を与えるのが難しかった。 


 ダンジョンラットは、いとも簡単にこちらの攻撃をひらりと避ける。


 想像以上にすばっしっこい。


 混乱している間に仕留めたいのだが、どうにかコイツらの俊敏力を抑える方法はないか。



「……そうだ。あのスキルがあったな」



 先日、ドライアドから奪取した【花粉飛散】を使う。


 周囲の空気が一瞬光ったように見えたがそれ以外に何の変化もない。


 発動に失敗したか? と訝しんだが、周囲のダンジョンラットたちの動きが明らかに鈍くなっているのがわかった。



「トーマさん、これって……」

「ドライアドから奪ったスキルを使った。ネズミどもの俊敏力が下がったはずだ」

「……っ! ナイスです! トーマさん!」



 すぐさま攻撃を再開する。


 動きが鈍くなったダンジョンラットを仕留めるのは容易かった。

 またたく間にダンジョンラットの群れは、魔晶石の束へと代わっていく。


 何かスキルを持っていないか見てみるか。



―――――――――――――――――――

 名称:ダンジョンラットの小魔晶石

 スキル:【軽足】【毒耐性(中)】

 備考:なし

―――――――――――――――――――



 お、なかなか良さげなスキルを持ってるな。



―――――――――――――――――――

 軽足:10秒間、移動速度が10%アップ。消費SP3

 毒耐性(中):毒の効果を半減させる

―――――――――――――――――――



 【軽足】がSPを消費させて発動させるアクティブスキルで、【毒耐性】がパッシブスキルか。


 アンピプテラは毒攻撃を仕掛けてくると聞くし、毒耐性はなかなか使えそうなスキルだな。



《レベルが13にアップしました》



 おまけにレベルも上がったようだ。


 よしよし。スキルも手に入ったし、スタートから好調だ。



「ミリネア、怪我はないか?」

「私は無事です。トーマさんは?」

「俺もだ。多少SPは消費してしまったが、問題はない」



 魔晶石をポーチに入れて先を急ぐことにした。



「探索を続けようか」

「はい。まずはレッドキャップですね。ちょっとスキルを使って調べてみますね」

「ありがとう。頼むよ」



 足を使って探そうかと思ったが、【マッピング】があったんだったな。


 しかし、本当にミリネアのスキルって便利だな。


 冗談抜きで毎回ミリネアとパーティを組みたいくらいだ。




 

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