表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

企画参加作品

窓辺に座る女

作者: keikato

 コンビニでバイトしての帰り。

 オレは自宅のアパートに向かって、ダラダラと続く長い坂道を歩いて上っていた。

 秋の太陽は西の空にわずかに陽を残し、向こうに見える山陰にもうすぐ消えようとしている。

 オレの住むアパートが見えてきた。

 それは昭和に建てられたという木造二階建で、各戸六畳二間という古いものだった。一階の玄関からは誰もが出入り自由、セキュリティなんてしゃれたものは微塵もない。

 ただそのぶん家賃は格安で、オレのような勤労学生には身分相応な住処だった。

――うん?

 二階の端にあるオレの部屋の窓が開いている。

 窓は普段からめったに開けることがない。そして今朝、窓を開けた覚えもない。

 部屋の鍵はオレが持っているだけで、それにあんなオンボロアパート。まさか盗っ人が侵入したということはないだろう。

――何で?

 どういうことかと目を凝らすと、窓辺の向こうで何かしら白いものが動いた。

 白いものは姿を現し、窓辺に座った。

 それは着物姿の若い女性のように見えた。

――誰なんだ?

 オレは女性にはまったく縁がなく、恋人どころか友人と呼べる者もいない。

 さらには姉も妹もいない。

 窓辺に座る人物にまったく見当がつかなかった。

 それに部屋の鍵はかけてある。

 どうやって部屋に入ったのかもわからない。


 オレは速足でアパートに帰った。

 だが、その途中。

 女の姿はいつかしら窓辺から消えていた。

 部屋の中へと移動したのだろう。

 アパートに着くと、オレは玄関を通り抜け、階段を一気に駆け上がり、部屋までの廊下を急いだ。

 部屋のドアノブを引く。

 が、動かない。

 鍵がかかった状態だった。

 オレはポケットから鍵を取り出し、ドアを開けて部屋へと上がった。

 帰り道から見たとおり窓は開いている。

 だが、どこにも女の姿はなかった。

――オレの見まちがいだったのだろうか?

 と、思ったときである。

 開けたばかりのドアの方から女の声がした。

「お邪魔したわね」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] おお! これは……。 ラスト、ゾッとしますね。 (@_@;)
[一言] 拝読しました。 これはドッキリです。 うわあと叫び出したくなりますね。 彼女、「お邪魔したわね」と言ってるから、もう来ないつもりなのかな? 美しい方なら、ちょっと残念ですね(笑)
[良い点] ヒェ! 誰もいない筈の部屋で後ろから声をかけられたら、主人公でなくても心臓が胸から飛び出しそうになりますよ。 [一言] オイ! 主人公、幽霊だろうとなんだろうと女だぞ女。 逃…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ