第六日
今回の話は短めです。
「ジーナ。ブラッドリーまでに泊まる街は?三日かかると聞いたのだけれど……」
(流石ね。ディートヘルムは魔術と同時に産業も豊かであるから馬車も居心地が良いわね。)
「『ミカルユ』と『ダンテ』という街です。ミカルユは比較的暖かいですが、ダンテは寒いため、体調を崩されるかもしれません。」
魔素は寒い場所に集まりやすいため、標高1000xdを超えると魔素は格段に増える。
1〜10で表現するならば北以外の辺境は3、王都は5。そして、北の辺境地は7。つまり、アレッシアの国民が北の辺境地へ行くと九割は魔力酔いや、魔力の暴走を起こしかねないのだ。しかし、ディートヘルムは三割ほどしかその症状は出ない。
「大丈夫よ。でも、リカの魔力量でこの国では一級魔術師に相当するのだから貴女達こそ気をつけてね。」
「はい。」
♢♢♢
「馬の休憩を致します。二時間後に出発致しますのでご自由にお過ごしください。」
「わかったわ。」
「お嬢様、どうされますか?」
「ピクニックしない?」
「街に行きますか?」
「ええ。」
♢♢♢
「出発致します。」
「風が気持ちよかったわね。ジーナ。あの飲み物はアレッシアには無かったけど何て言うのかしら?ミルクを入れた紅茶に似ていたけれど…」
「あの飲み物は『チャイ』という飲み物らしいです。紅茶にミルクと砂糖を大量に入れた物で飲み過ぎると生活習慣病発症のきっかけともなるので気をつけてくださいね。」
「わかったわ。」
♢♢♢
「ミカルユに着きました。今夜はこの宿に泊まってください。貸切ですのでお好きにどうぞ。あとの説明は宿側の者達から聞いてください。」
「わかったわ。」
♢♢♢
「此処がブラッドリーです。長旅ご苦労様でした。では、ごきげんよう。」
「ごきg………ジーナ。もしかして、私嫌われてる?」
「言いたくないのですが。」
「嫌われているのね。」
「とりあえず中に入りましょう。」
「そうね。」
♢♢♢
「ジーナ。ソニア。私は建築家を呼んで改築するように言ったわよね。どうしてこんなにオンボロなのかしら?」
蔦が絡まり、屋敷のおおよその形はわかるが、壁が見えない。つまり、ドアすら何処にあるかわからない。
「……あの噂のせいかと思います。」
「噂?」
(噂?もしかして婚約破棄のこと?)
「はい。あの王太子が……お嬢様のことを『下級貴族と平民を見下す傲慢な令嬢』という噂を流しました。」
「……」
(ウフフ…)
「お、お嬢様?」
「上等よ。その噂を私の力で良い評判に変える。協力してね?」
「「勿論でございます。」」
xdとは単位のことで、「クディ」と読みます。
1000m=1000xd