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~人の道を外れるは妖~

 力なく項垂(うなだ)れている博一が腰を中心に上半身を回転させて上を向いた瞬間、雄叫(おたけ)びを上げた。

 その声は人のものではなく獣に近く、周囲の空気を震わせていた。

 あまりの気迫(きはく)に瞬鬼は一歩退いてしまう。

 次の瞬間、博一の両腕と両肩にある鎖が浮きあがり瞬鬼に向かってきた。その鎖はまるで生きているかのように逃げる瞬鬼を追いかけていく。

 瞬鬼が鎖を避けると避けられた鎖は地面に突き刺さっていく。

 すべての鎖が地面に突き刺さった瞬間、博一は鎖に引っ張られるように瞬鬼に近づく。

 そして博一を加速させた鎖は地面から抜けたと同時に瞬鬼に狙いを(さだ)める。

 高速で近づく博一と鎖の両方を防ぐことは流石の瞬鬼にも出来ず、ついに博一の右肩から伸びている鎖が瞬鬼の腰に巻き付く。

 鎖は瞬鬼を博一の元へ連れて行こうとする。しかし、自慢の脚力によって逆に博一の方が引き寄せられていた。

 瞬鬼を引き寄せられないと判断したのか鎖は博一の肩から引き抜け、新しく鎖が生えてきた。

 その隙に瞬鬼は主導権を取ろうと仕掛ける。

 しかし博一の行動に瞬鬼の判断が一瞬鈍ってしまう。

 博一は自らの腕を千切(ちぎ)り取り、瞬鬼に向かって投げつけたのだ。

 その腕はすでに体とはつながっていないはずにも関わらず、瞬鬼の顔を掴んだ。

 人間の場合、千切られた腕は体とつながっていない。それは妖であっても同じはずであった。

 しかし、博一の離れた腕は本来骨があるはずの位置に鎖が(かよ)っており、体と腕を繋いでいた。

 瞬鬼の顔を掴んだ博一は鎖を体の中へと勢いよく引き戻す。

 しかし先ほどと同じように、自慢の脚力によって耐えればよいと考えた瞬鬼は足に力を入れる。

 博一は瞬鬼を引き寄せることをあきらめ、瞬鬼のもとに自身を引っ張る。

 瞬鬼は足に力をいれ、さらには顔を掴まれているために博一が何をしているのか見えていなかった。

 相手のもとに自らを引き寄せ放つ一撃......

 

 破城槌(はじょうつい)()

 

 油断をしていた瞬鬼の腹に重い一撃が入り、瞬鬼は倒れ()した。

 瞬鬼は腹を抱え、涙を流しながら嗚咽(おえつ)が止まらない。

 博一は静かに瞬鬼の元に近寄った。近寄られた瞬鬼はおびえながら博一に命乞いをする。


「わ、悪かった!許してくれ!頼むよ!ぅがぁ!」

 

 腹を抱えながらも博一から這うように逃げる瞬鬼であったが、博一は瞬鬼の足を踏み抜くことで逃げられなくした。

 そして瞬鬼の腹に拳を貫通させ、とどめを刺した。

 次の瞬間,固いものと柔らかいものがぐちゃぐちゃに混ざる音が(あた)りに響いた。

 その音は博一から聞こえてきていた。

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